― つくば駅前が県内最高、守谷・水戸・古河・勝田でも上昇 ―
令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として公表され、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額として示されます。
国税庁は、相続税等の申告の便宜及び課税の公平を図る観点から、毎年、全国の民有地について、土地等の評価額の基準となる路線価及び評価倍率を定めて公開しています。令和8年分の路線価等は、令和8年7月1日に国税庁ホームページで公開されました。
また、路線価等は、毎年1月1日を評価時点として、1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められます。
令和8年分の茨城県の路線価を見ると、県内最高路線価は、つくば市吾妻1丁目の「つくば駅前広場線」で、1㎡当たり40万円となりました。前年の36万円から上昇し、対前年変動率は11.1%の上昇です。
茨城県内では、つくば駅前、守谷駅前、水戸駅前、古河駅前、勝田駅前など、交通利便性や都市機能の集積がある主要駅前で上昇が見られました。一方で、日立、筑西、神栖では税務署別最高路線価が横ばいとなっており、県内でも地域差が見られます。
茨城県は、つくばエクスプレス沿線の住宅需要、つくば市の研究学園都市としての拠点性、守谷市の都心通勤圏としての住宅需要、水戸市の県都中心性、古河市の県西部拠点性、ひたちなか市・日立市の産業都市としての性格、神栖市の臨海工業地帯など、多様な地域性を持つ県です。
令和8年分の相続税路線価は、こうした茨城県内の地域ごとの需要の違いを反映した結果といえます。
1 県内最高路線価はつくば駅前広場線
令和8年分の茨城県内で最も路線価が高かったのは、土浦税務署管内のつくば市吾妻1丁目「つくば駅前広場線」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり40万円で、前年の36万円から上昇しました。対前年変動率は11.1%の上昇です。
つくば市は、研究学園都市として発展してきた茨城県南部の中心都市です。大学、研究機関、企業、行政機関、商業施設、住宅地が集積しており、茨城県内でも高い成長性を有する地域です。
つくば駅は、つくばエクスプレスの始発駅であり、東京都心方面へのアクセスを有しています。駅周辺には、商業施設、オフィス、ホテル、マンション、公共施設などが集まり、県内でも都市機能の集積度が高い地域です。
つくば駅前広場線の路線価が県内最高となったことは、つくば市の拠点性、研究・業務機能、駅前商業地としての集積、マンション需要、都心アクセスの評価が反映されたものと考えられます。
2 つくば駅前の上昇が示すもの
つくば駅前の路線価上昇は、単に駅に近いというだけではありません。
つくば市は、研究機関や大学が集積する地域であり、研究者、学生、企業関係者、公務員、子育て世帯など、多様な需要者層を持っています。
また、つくばエクスプレスにより秋葉原方面へのアクセスが可能であり、東京都心への通勤・通学需要も一定程度見られます。
駅前では、商業施設、マンション、ホテル、オフィスなどの土地利用が見られ、住宅地需要と商業地需要が重なりやすい地域です。
特に駅周辺の土地は供給が限られており、利便性の高い場所に対する需要が路線価に反映されやすいと考えられます。
つくば駅前の上昇は、茨城県内でも、人口流入、都市機能、研究学園都市としてのブランド、鉄道利便性が組み合わさる地域の強さを示しているといえます。
3 守谷駅西口ロータリーも大きく上昇
竜ケ崎税務署管内の最高路線価は、守谷市中央1丁目の「守谷駅西口ロータリー」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり25万円で、前年の23万円から上昇しました。対前年変動率は8.7%の上昇です。
守谷市は、つくばエクスプレスと関東鉄道常総線が交わる交通結節点です。つくばエクスプレスの開通以降、東京都心への通勤利便性が向上し、住宅地としての評価が高まってきました。
守谷駅周辺には、商業施設、マンション、戸建住宅地、生活利便施設が集まり、茨城県南部の住宅都市として強い需要があります。
守谷駅西口ロータリーの上昇は、都心通勤圏としての住宅需要、駅前商業地としての利便性、人口集積、つくばエクスプレス沿線の成長性が反映されたものと考えられます。
つくば市と守谷市は、茨城県内でも東京方面への鉄道利便性が高く、相続税路線価の上昇が目立ちやすい地域といえます。
4 水戸駅北口ロータリーは県都中心部として上昇
水戸税務署管内の最高路線価は、水戸市宮町1丁目の「水戸駅北口ロータリー」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり22万5,000円で、前年の22万円から上昇しました。対前年変動率は2.3%の上昇です。
水戸市は、茨城県の県庁所在地であり、行政、業務、商業、教育、医療、文化機能が集積する都市です。
水戸駅周辺は、JR常磐線、水郡線、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線が利用できる交通拠点であり、県内各地から人が集まる中心市街地です。
駅周辺には、商業施設、ホテル、オフィス、飲食店、金融機関、公共施設、マンションなどが立地しています。
水戸駅北口ロータリーの路線価上昇は、県都中心部としての拠点性、駅前商業地としての集客力、業務機能、駅近居住需要などが反映されたものと考えられます。
ただし、水戸市内では、駅前・中心商業地、郊外ロードサイド商業地、住宅地、行政・業務地区などで市場性が異なります。相続税評価や売買を検討する場合には、路線価だけでなく、個別の立地条件を確認することが重要です。
5 古河駅前も上昇
古河税務署管内の最高路線価は、古河市本町1丁目の「県道古河停車場線」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり11万5,000円で、前年の11万円から上昇しました。対前年変動率は4.5%の上昇です。
古河市は、茨城県西部に位置し、埼玉県・栃木県にも近い地域です。JR宇都宮線により、首都圏方面へのアクセスを有しており、県西部の生活・交通拠点としての性格があります。
古河駅周辺には、商業施設、飲食店、公共施設、住宅地が集まり、地域の中心商業地としての役割を持っています。
古河駅前の路線価上昇は、駅前商業地としての利便性、首都圏方面への鉄道アクセス、地域中心地としての需要が反映されたものと考えられます。
古河市は、茨城県内でありながら、埼玉県・栃木県との結びつきも強い地域であり、県西部の不動産市場を見るうえで重要な都市です。
6 勝田駅東口ロータリーも上昇
太田税務署管内の最高路線価は、ひたちなか市勝田中央の「勝田駅東口ロータリー」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり9万円で、前年の8万8,000円から上昇しました。対前年変動率は2.3%の上昇です。
ひたちなか市は、水戸市に隣接し、商業、住宅、工業、港湾、観光の要素を持つ都市です。
勝田駅周辺は、JR常磐線とひたちなか海浜鉄道が利用できる交通拠点であり、駅前には商業施設、飲食店、ホテル、事務所、住宅などが見られます。
また、ひたちなか市には工業団地や港湾関連の需要もあり、雇用を背景とした住宅需要や商業需要が見込まれます。
勝田駅東口ロータリーの上昇は、水戸都市圏の一部としての生活利便性、産業都市としての雇用、駅前商業地としての需要が反映されたものと考えられます。
7 日立・筑西・神栖は横ばい
一方で、令和8年分の茨城県税務署別最高路線価では、横ばいとなった地点もあります。
日立税務署管内の最高路線価は、日立市幸町1丁目の「平和通り」で、1㎡当たり6万7,000円、前年と同額でした。
下館税務署管内の最高路線価は、筑西市丙の「県道下館停車場線」で、1㎡当たり5万2,000円、前年と同額でした。
潮来税務署管内の最高路線価は、神栖市神栖1丁目の「国道124号線」で、1㎡当たり3万9,000円、前年と同額でした。
これらの地域では、大きな下落は見られない一方で、つくば、守谷、水戸、古河のような上昇までは見られませんでした。
日立市は、工業都市としての歴史があり、企業城下町的な性格を持つ地域です。中心市街地では一定の商業・生活需要がありますが、人口動向や産業構造の変化も価格形成に影響します。
筑西市は、県西地域の生活拠点であり、下館駅周辺を中心とする商業地需要があります。ただし、東京近接のつくば・守谷ほどの強い上昇要因は限定的です。
神栖市は、鹿島臨海工業地帯を背景とする産業都市です。国道124号線沿いには商業・事業用需要がありますが、最高路線価としては横ばいとなりました。
横ばいという結果は、地域内需要に支えられて価格を維持している一方で、強い上昇要因までは見られにくい状況を示していると考えられます。
8 つくば・守谷など県南地域の強さ
令和8年分の茨城県路線価で最も目立つのは、つくば市・守谷市を中心とする県南地域の強さです。
つくば駅前広場線は11.1%上昇し、守谷駅西口ロータリーは8.7%上昇しました。
これらの地域に共通するのは、つくばエクスプレス沿線であること、東京都心方面へのアクセスを有すること、駅前の都市機能が整っていること、住宅需要が強いことです。
つくば市は、研究学園都市としての拠点性があり、守谷市は都心通勤圏としての住宅地需要が強い地域です。
東京都内や千葉県北西部、埼玉県南部の住宅価格が高水準で推移する中で、茨城県南部のつくばエクスプレス沿線は、相対的な価格面の魅力もあります。
このため、駅前商業地やマンション適地、利便性の高い住宅地では、路線価が上昇しやすい状況にあります。
9 水戸・ひたちなかは県都圏としての需要
水戸市とひたちなか市は、茨城県中部の中心的な都市圏を形成しています。
水戸駅北口ロータリーは、令和8年分で1㎡当たり22万5,000円、勝田駅東口ロータリーは1㎡当たり9万円となり、いずれも前年から上昇しました。
水戸市は県庁所在地として、行政、業務、商業、教育、医療の中心性を有しています。
ひたちなか市は、水戸市に隣接し、商業施設、工業団地、港湾、住宅地、観光施設を有する都市です。
この地域では、つくば・守谷ほどの急激な上昇ではないものの、県都圏としての生活需要、雇用、商業需要が路線価を支えていると考えられます。
相続税評価や不動産売却を考える際には、水戸駅周辺か、郊外住宅地か、幹線道路沿いか、工業系地域かによって、価格形成要因が大きく異なります。
10 鹿島・神栖エリアでは工業地・事業用地需要も重要
茨城県の不動産市場を見るうえでは、鹿島・神栖エリアの工業・事業用地需要も重要です。
神栖市は、鹿島臨海工業地帯を背景とする産業都市であり、工場、倉庫、物流施設、関連事業所などの需要があります。
令和8年分の潮来税務署管内最高路線価は、神栖市神栖1丁目の「国道124号線」で、1㎡当たり3万9,000円、前年と同額でした。
路線価としては横ばいですが、神栖市内では、住宅地、幹線道路沿いの商業地、工業地、臨海部の事業用地などで市場性が異なります。
工業地・事業用地では、道路アクセス、大型車両の進入可能性、用途地域、操業環境、周辺住環境との関係、港湾・工場群との距離などが価格形成に影響します。
相続財産に工業地や事業用地が含まれる場合には、路線価だけでなく、事業用地としての市場価値、賃貸可能性、売却可能性を個別に確認することが重要です。
11 茨城県内では地域差が明確
令和8年分の茨城県路線価から見える大きな特徴は、地域差です。
つくば市、守谷市では、つくばエクスプレス沿線の住宅需要、駅前商業地としての利便性、都心アクセス、人口流入などを背景に高い上昇率が見られます。
水戸市、ひたちなか市では、県都圏としての行政・業務・生活需要、産業・雇用を背景とした比較的安定した需要が見られます。
古河市では、県西地域の交通拠点性や首都圏方面へのアクセスが路線価を支えています。
一方で、日立市、筑西市、神栖市では、税務署別最高路線価は横ばいとなりました。
つまり、茨城県の不動産市場は、つくば・守谷のような成長型の県南地域、水戸・ひたちなかの県都圏、古河を中心とする県西地域、日立・神栖の産業都市、筑西などの地方生活圏が混在する市場といえます。
12 路線価上昇は相続税にも影響する
路線価は、相続税や贈与税の土地評価に使われます。
そのため、路線価が上昇すると、同じ土地を所有していても、相続税評価額が上がる可能性があります。
たとえば、つくば市吾妻1丁目のつくば駅前広場線では、路線価が前年の36万円/㎡から40万円/㎡に上昇しました。
仮に、同通り沿いに100㎡の土地を所有していると単純計算した場合、評価額のイメージは次のようになります。
前年:36万円 × 100㎡ = 3,600万円
令和8年:40万円 × 100㎡ = 4,000万円
この場合、単純計算では土地の評価額が400万円上昇することになります。
また、守谷市中央1丁目の守谷駅西口ロータリーでは、路線価が前年の23万円/㎡から25万円/㎡に上昇しました。
仮に、同地点周辺に200㎡の土地を所有している場合、評価額のイメージは次のようになります。
前年:23万円 × 200㎡ = 4,600万円
令和8年:25万円 × 200㎡ = 5,000万円
この場合、単純計算では土地の評価額が400万円上昇することになります。
実際には、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正、二方路線影響加算、借地権割合、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例などにより評価額は変わります。しかし、路線価の上昇は相続税評価額に直接影響する重要な要素です。
つくば駅周辺、守谷駅周辺、水戸駅周辺、古河駅周辺、勝田駅周辺など、近年需要が見られる地域に土地を所有している方は、最新の路線価を確認しておくことが大切です。
13 横ばい地域でも相続対策は必要
一方で、日立市、筑西市、神栖市のように、税務署別最高路線価が横ばいとなった地域もあります。
路線価が横ばいであれば、相続税評価額が急激に上がる可能性は低いかもしれません。しかし、相続対策が不要になるわけではありません。
地方都市や郊外部では、相続税評価額よりも「その不動産を将来どうするか」が問題になることがあります。
たとえば、利用予定のない実家、空き家、農地、山林、古い店舗兼住宅、老朽化した賃貸物件、境界が未確定の土地、接道条件が悪い土地などは、相続後に処分や管理で困ることがあります。
相続税評価額が高くなくても、実際には売却しにくい、解体費がかかる、固定資産税や管理費が続く、遠方の相続人が管理できない、共有になって処分できない、といった問題が発生することがあります。
そのため、路線価が上昇している地域だけでなく、横ばい地域でも、不動産の現状を確認し、売却、賃貸、解体、活用、共有回避などを早めに検討することが重要です。
14 相続対策では評価額と市場価値の両方を見る
相続税の計算では路線価が重要です。
しかし、不動産の実際の価値を考える場合には、路線価だけでは不十分です。
同じ路線価の土地であっても、形状が良い土地と悪い土地、道路付けが良い土地と悪い土地、建築しやすい土地と造成費がかかる土地では、市場での評価は異なります。
商業地では、歩行者通行量、駅からの距離、店舗としての視認性、駐車場の有無、テナント需要、収益性、再開発の可能性などが価格に影響します。
住宅地では、駅距離、学校、スーパー、病院、公共交通、道路幅員、周辺環境、災害リスクなどが重要です。
工業地や物流地では、高速道路インターチェンジへのアクセス、大型車両の進入可能性、用途地域、周辺住環境との関係、敷地規模、操業環境などが価格に影響します。
農地や山林では、固定資産税評価額、倍率評価、農地転用可能性、接道、地勢、管理状況、売却可能性なども確認する必要があります。
つまり、相続対策では、相続税評価額だけではなく、その不動産が実際に売れるのか、誰が使うのか、維持管理費はいくらかかるのか、相続人が共有して問題にならないか、といった実務的な視点も重要です。
15 まとめ
令和8年分の相続税路線価では、茨城県内の主要駅前で上昇が見られました。
県内最高路線価は、つくば市吾妻1丁目の「つくば駅前広場線」で、1㎡当たり40万円、前年比11.1%の上昇でした。つくば駅周辺は、研究学園都市としての拠点性、つくばエクスプレスによる交通利便性、商業施設・マンション・業務施設の集積を背景に、県内で最も高い路線価となりました。
守谷市中央1丁目の「守谷駅西口ロータリー」は1㎡当たり25万円、前年比8.7%の上昇となりました。守谷駅周辺は、つくばエクスプレス沿線の都心通勤圏として、住宅需要と駅前商業地需要が強い地域です。
水戸市宮町1丁目の「水戸駅北口ロータリー」は1㎡当たり22万5,000円、前年比2.3%の上昇、古河市本町1丁目の「県道古河停車場線」は1㎡当たり11万5,000円、前年比4.5%の上昇、ひたちなか市勝田中央の「勝田駅東口ロータリー」は1㎡当たり9万円、前年比2.3%の上昇となりました。
一方で、日立市幸町1丁目の「平和通り」は1㎡当たり6万7,000円、筑西市丙の「県道下館停車場線」は1㎡当たり5万2,000円、神栖市神栖1丁目の「国道124号線」は1㎡当たり3万9,000円で、いずれも前年と同額でした。
この結果から、茨城県内では、つくば・守谷など県南地域の上昇が目立つ一方、水戸・古河・ひたちなかでは緩やかな上昇、日立・筑西・神栖では横ばいとなり、地域差が明確になっていることが分かります。
路線価は、相続税や贈与税の評価に使われる重要な指標ですが、実際の売買価格そのものではありません。不動産の価値は、路線価だけでなく、立地、道路付け、形状、地勢、建物状態、収益性、再開発動向、住宅需要、工業需要、災害リスク、売却可能性などを総合的に見て判断する必要があります。
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― 千葉駅前・船橋・柏・市川など主要駅前で上昇、県内でも地域差が鮮明に ―
令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として公表され、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額として示されます。
一般的に、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に設定されます。そのため、実際の売買価格そのものではありませんが、相続税・贈与税の評価、資産承継、相続対策、不動産の概況把握において重要な指標になります。
令和8年分の千葉県の路線価を見ると、千葉市、船橋市、柏市、市川市、松戸市、浦安市、流山市など、東京都心への交通利便性が高い地域や、県内主要駅前商業地で上昇が目立ちます。
一方で、県東部、房総地域、九十九里沿岸部などでは、人口減少や需要者層の限定性を背景に、横ばい又は弱含みの地域も見られます。
千葉県は、東京近接の住宅地、県都千葉市の中心商業地、湾岸部の工業・物流エリア、成田空港周辺、房総・九十九里の観光地など、多様な地域性を持つ県です。令和8年分の相続税路線価は、こうした千葉県内の地域差をよく表しているといえます。
1 千葉県の路線価は主要駅前で上昇傾向
令和8年分の千葉県の相続税路線価では、主要駅前商業地を中心に上昇傾向が見られます。
特に、千葉駅前、船橋駅前、柏駅前、市川駅・本八幡駅周辺、松戸駅周辺、浦安・新浦安周辺、流山おおたかの森周辺などでは、交通利便性、商業集積、住宅需要、マンション需要を背景に、路線価が上昇しやすい状況にあります。
千葉県は、東京都に隣接し、総武線、京葉線、常磐線、東西線、京成本線、つくばエクスプレス、東武アーバンパークラインなど、都心方面への鉄道網が発達しています。
そのため、東京都内の住宅価格が高水準で推移する中で、千葉県内の駅近住宅地やマンション適地にも需要が広がっています。
また、人口増加が見られる地域では、住宅需要だけでなく、駅前商業地やロードサイド店舗、生活利便施設への需要も強まりやすくなります。
令和8年分の千葉県路線価は、東京近接性と駅前利便性を有する地域の強さが表れた結果といえます。
2 県内最高路線価は千葉駅周辺の中心商業地
千葉県内で特に高い路線価を示す地域として、千葉市中央区の千葉駅周辺が挙げられます。
千葉駅周辺は、千葉県の県都中心部であり、JR各線、京成線、千葉都市モノレールなどが集まる交通結節点です。
駅周辺には、百貨店、商業施設、飲食店、ホテル、オフィス、金融機関、行政機関、マンションなどが集積しており、県内でも代表的な中心商業地です。
千葉駅周辺の路線価は、駅前商業地としての集客力、県都としての業務機能、交通利便性、駅近マンション需要などを背景に、高い水準を維持していると考えられます。
また、千葉駅周辺では、駅ビルや周辺商業施設の更新、再開発、マンション供給なども見られ、中心市街地としての再評価が進んでいます。
千葉駅前の路線価動向は、千葉県全体の不動産市場を見るうえで重要な指標の一つです。
3 船橋駅周辺は商業・交通利便性が強い
船橋市は、千葉県内でも人口規模が大きく、住宅地・商業地の両面で需要が強い都市です。
船橋駅周辺は、JR総武線、東武アーバンパークライン、京成本線が利用でき、東京都心方面、千葉市方面、柏方面へのアクセスに優れています。
駅周辺には、百貨店、商業施設、飲食店、オフィス、金融機関、マンションなどが集積しており、千葉県内でも有数の商業地となっています。
船橋駅周辺の路線価は、駅利用者の多さ、商業施設の集積、東京都心への通勤利便性、周辺住宅地の人口規模を背景に、高い水準となりやすい地域です。
また、船橋市内には、西船橋、津田沼寄りのエリア、南船橋、湾岸部の物流・商業エリアなど、多様な地域性があります。
そのため、船橋市の不動産を見る場合には、船橋駅前商業地、西船橋駅周辺、住宅地、湾岸部、ロードサイド商業地など、地域ごとの市場性を分けて確認する必要があります。
4 市川・浦安は東京都心への近接性が強み
市川市と浦安市は、東京都に隣接又は近接する千葉県内でも価格水準の高い地域です。
市川市は、JR総武線、京成本線、東京メトロ東西線、都営新宿線などを利用でき、東京都心へのアクセスが非常に良い地域です。
市川駅、本八幡駅、行徳・妙典方面などでは、都心通勤層の住宅需要が強く、駅前商業地やマンション適地としての評価も高くなりやすい傾向があります。
浦安市は、東京湾岸に位置し、東京メトロ東西線やJR京葉線による都心アクセスに優れています。浦安、新浦安、舞浜周辺には、住宅地、マンション、商業施設、ホテル、レジャー施設などが集積しています。
特に新浦安周辺は、計画的な街並み、湾岸部の住宅地、商業施設、教育施設、公園などが整備され、住宅地として高い人気を有しています。
市川市・浦安市の路線価は、東京都心への近接性、鉄道利便性、住宅地としてのブランド力、マンション需要を背景に、千葉県内でも高い水準を示しやすい地域といえます。
5 柏・松戸は常磐線沿線の拠点性が強い
柏市と松戸市は、千葉県北西部の主要都市です。
松戸市は、JR常磐線、新京成線、北総線などを利用でき、東京都心へのアクセスが良い地域です。松戸駅周辺には、商業施設、飲食店、マンション、公共施設が集まり、東京近接の住宅都市としての需要があります。
柏市は、常磐線沿線の拠点都市であり、柏駅周辺には大型商業施設、飲食店、オフィス、ホテル、教育施設、マンションなどが集積しています。
柏駅周辺は、千葉県北西部だけでなく、茨城県南部や東葛地域からも人を集める広域商業地です。
柏・松戸の路線価は、常磐線沿線の交通利便性、駅前商業地としての集積、都心通勤圏としての住宅需要を背景に、堅調に推移していると考えられます。
一方で、同じ市内でも、駅前商業地、駅徒歩圏住宅地、バス便住宅地、古い団地周辺、幹線道路沿いの商業地では、市場性が大きく異なります。
6 流山おおたかの森周辺は住宅需要が強い
流山市は、近年、千葉県内でも特に住宅需要の強い地域の一つです。
つくばエクスプレスの開通以降、流山おおたかの森駅周辺を中心に、マンション、戸建住宅、商業施設、教育施設、公園、生活利便施設が整備され、子育て世帯を中心に人口流入が進んできました。
流山おおたかの森駅周辺は、東京都心へのアクセスと郊外住宅地としての住環境を両立できる地域です。
住宅地としての人気が高まると、周辺の商業地、生活利便施設、ロードサイド店舗、医療・教育施設への需要も強まり、路線価にも影響しやすくなります。
流山市の路線価上昇は、単なる都心近接性だけでなく、街並みの新しさ、子育て環境、商業施設の充実、駅前の利便性などが複合的に作用した結果といえます。
7 千葉市美浜区・幕張新都心は湾岸部の拠点
千葉市美浜区は、幕張新都心、海浜幕張、検見川浜、稲毛海岸、新港などを抱える湾岸部の拠点です。
幕張新都心には、オフィス、商業施設、ホテル、展示場、イベント施設、住宅地、教育施設などが集積しています。海浜幕張駅周辺は、千葉県内でも都市的な景観を有する業務・商業・住宅の複合エリアです。
また、新港などの湾岸部には、物流施設、倉庫、工場、配送施設などが見られます。
千葉市美浜区の路線価は、幕張新都心の業務・商業需要、湾岸部の物流・工業需要、住宅地としての需要が重なる地域として注目されます。
特に湾岸部では、首都圏向け物流拠点としての需要が見られる一方、液状化、高潮、津波、洪水などの災害リスクも確認が必要です。
8 成田市・空港周辺の動向
千葉県の不動産市場を見るうえでは、成田市や成田空港周辺の動向も重要です。
成田市は、成田国際空港を有する国際的な交通拠点です。空港関連産業、ホテル、物流、倉庫、航空貨物、観光、商業施設などの需要があります。
成田駅周辺や成田山新勝寺周辺では、観光需要や地域商業需要が見られます。また、空港周辺では、物流施設、工業用地、ホテル、従業員向け住宅などの需要も発生します。
インバウンド需要や航空需要の回復は、成田市周辺の商業地・宿泊施設・事業用地に影響します。
ただし、空港周辺では、騒音、用途地域、農地、物流車両動線、開発規制、道路アクセスなどの個別条件が価格形成に大きく影響します。
そのため、成田市周辺の不動産を評価する際には、空港との距離、幹線道路へのアクセス、土地利用規制、観光需要、物流需要を総合的に見る必要があります。
9 房総・九十九里地域では地域差が大きい
千葉県東部や南部、房総半島、九十九里沿岸部では、東京近接の県北西部とは異なる市場性があります。
銚子市、九十九里町、白子町、長生村、長南町、御宿町などでは、人口減少や需要者層の限定性により、路線価が弱含む地域もあります。
一方で、海に近い立地、観光地、別荘地、二地域居住、移住需要、サーフィン・レジャー需要などにより、個別に需要が見られる不動産もあります。
たとえば、海に近い住宅地や別荘地、観光施設に近い土地、幹線道路沿いの店舗用地などは、地域内で相対的に評価される場合があります。
ただし、房総・九十九里地域では、津波、高潮、洪水、液状化、塩害、建物維持管理費、売却期間、需要者層の限定性などを慎重に確認する必要があります。
路線価が低いから安全というわけでもなく、路線価が上昇していないから相続対策が不要というわけでもありません。
10 千葉県内の地域差
令和8年分の千葉県路線価から見える大きな特徴は、地域差です。
千葉市中心部、船橋、市川、浦安、松戸、柏、流山など、東京都心への交通利便性が高い地域では、住宅需要、マンション需要、駅前商業需要が強く、路線価も堅調に推移しやすい傾向があります。
一方で、県東部、房総半島、九十九里沿岸部、山間部や農村部では、人口減少、商業需要の弱まり、需要者層の限定性により、路線価が横ばい又は弱含む地域もあります。
また、千葉県では、湾岸部の物流・工業需要や成田空港周辺の空港関連需要も重要です。
つまり、千葉県の不動産市場は、東京近接住宅地、県都中心商業地、湾岸物流エリア、空港関連エリア、房総・九十九里の観光・居住エリアが混在する市場といえます。
11 路線価上昇は相続税にも影響する
路線価は、相続税や贈与税の土地評価に使われます。
そのため、路線価が上昇すると、同じ土地を所有していても、相続税評価額が上がる可能性があります。
たとえば、千葉市中心部や船橋駅前のように、駅前商業地として高い価格水準の地域では、少しの路線価上昇でも評価額に大きな影響が出ることがあります。
仮に、1㎡当たり200万円の路線価が付された地域に100㎡の土地を所有している場合、単純計算では次のようになります。
200万円 × 100㎡ = 2億円
仮に、路線価が5%上昇して1㎡当たり210万円になった場合は、次のようになります。
210万円 × 100㎡ = 2億1,000万円
この場合、単純計算では土地の評価額が1,000万円上昇することになります。
また、住宅地であっても、東京近接の駅徒歩圏やマンション適地では、路線価上昇が相続税評価額に影響します。
実際には、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正、二方路線影響加算、借地権割合、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例などにより評価額は変わりますが、路線価の上昇は相続税評価額に直接影響する重要な要素です。
千葉市、船橋市、市川市、浦安市、松戸市、柏市、流山市など、近年需要が強い地域に土地を所有している方は、最新の路線価を確認しておくことが大切です。
12 横ばい・下落地域でも相続対策は必要
一方で、県東部、房総地域、九十九里沿岸部など、路線価が横ばい又は弱含む地域もあります。
路線価が横ばい又は下落している地域では、相続税評価額が急激に上がる可能性は低いかもしれません。しかし、相続対策が不要になるわけではありません。
地方部や郊外部では、相続税評価額よりも「その不動産を将来どうするか」が問題になることがあります。
たとえば、利用予定のない実家、空き家、農地、山林、古い店舗兼住宅、老朽化した賃貸物件、境界が未確定の土地、接道条件が悪い土地などは、相続後に処分や管理で困ることがあります。
相続税評価額が高くなくても、実際には売却しにくい、解体費がかかる、固定資産税や管理費が続く、遠方の相続人が管理できない、共有になって処分できない、といった問題が発生することがあります。
そのため、路線価が上昇している地域だけでなく、横ばい・下落地域でも、不動産の現状を確認し、売却、賃貸、解体、活用、共有回避などを早めに検討することが重要です。
13 相続対策では評価額と市場価値の両方を見る
相続税の計算では路線価が重要です。
しかし、不動産の実際の価値を考える場合には、路線価だけでは不十分です。
同じ路線価の土地であっても、形状が良い土地と悪い土地、道路付けが良い土地と悪い土地、建築しやすい土地と造成費がかかる土地では、市場での評価は異なります。
商業地では、歩行者通行量、駅からの距離、店舗としての視認性、駐車場の有無、テナント需要、収益性、再開発の可能性などが価格に影響します。
住宅地では、駅距離、学校、スーパー、病院、公共交通、道路幅員、周辺環境、災害リスクなどが重要です。
工業地や物流地では、高速道路インターチェンジへのアクセス、大型車両の進入可能性、用途地域、周辺住環境との関係、敷地規模、操業環境などが価格に影響します。
観光地や海岸部では、海への距離、眺望、観光需要、別荘需要、津波・高潮・液状化リスク、塩害、建物管理費なども確認する必要があります。
つまり、相続対策では、相続税評価額だけではなく、その不動産が実際に売れるのか、誰が使うのか、維持管理費はいくらかかるのか、相続人が共有して問題にならないか、といった実務的な視点も重要です。
14 令和8年分路線価から見る千葉県不動産市場
令和8年分の相続税路線価から見える千葉県不動産市場の特徴は、大きく三つあります。
第一に、東京近接エリアの強さです。船橋、市川、浦安、松戸、柏、流山など、東京都心への交通利便性が高い地域では、住宅需要や駅前商業需要が強く、路線価が堅調に推移しやすい状況にあります。
第二に、千葉市中心部や湾岸エリアの存在感です。千葉駅周辺は県都中心部として商業・業務機能が集積しており、幕張新都心や千葉市美浜区の湾岸部では、業務・商業・物流・住宅の複合需要が見られます。
第三に、県内の地域差です。千葉県全体としては東京圏に属する地域の強さが目立つ一方で、県東部、房総半島、九十九里沿岸部などでは、人口減少や需要者層の限定性を背景に、横ばい又は弱含みの地域もあります。
つまり、千葉県の不動産市場は、東京圏の住宅需要、県都千葉市の中心性、湾岸・内陸物流需要、成田空港関連需要、房総・九十九里地域の観光・地方圏需要が混在する市場といえます。
15 まとめ
令和8年分の相続税路線価では、千葉県内の主要駅前商業地や東京近接エリアで堅調な動きが見られました。
千葉市中心部、船橋市、市川市、浦安市、松戸市、柏市、流山市などでは、東京都心への交通利便性、駅前商業地としての集積、マンション需要、人口流入、生活利便性などを背景に、路線価が上昇しやすい状況にあります。
特に、千葉駅周辺は県都中心部として、船橋駅周辺は県内有数の商業・交通拠点として、市川市・浦安市は東京近接の住宅地として、柏市・松戸市は常磐線沿線の拠点都市として、それぞれ強みを有しています。
また、流山おおたかの森周辺では、つくばエクスプレス沿線の住宅需要、子育て世帯の流入、駅前商業施設の充実などが、路線価に影響していると考えられます。
一方で、県東部、房総半島、九十九里沿岸部などでは、人口減少、需要者層の限定性、商業需要の弱まりなどから、横ばい又は弱含みの地域もあります。
この結果から、千葉県内では、東京近接の主要駅前や湾岸・物流エリアでは堅調な一方、県東部・南部では地域差が大きくなっていることが分かります。
路線価は、相続税や贈与税の評価に使われる重要な指標ですが、実際の売買価格そのものではありません。不動産の価値は、路線価だけでなく、立地、道路付け、形状、地勢、建物状態、収益性、再開発動向、住宅需要、物流需要、観光需要、災害リスク、売却可能性などを総合的に見て判断する必要があります。
あおぎり不動産鑑定では、千葉県・東京都・埼玉県・群馬県・長野県・山梨県・新潟県・富山県・石川県・福井県をはじめとする不動産について、相続税評価、売買、相続、担保評価、投資判断、物件調査等に関するご相談に対応しています。
令和8年分路線価の公表をきっかけに、ご所有不動産の相続税評価や市場価値を確認したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
あおぎり不動産鑑定
― 銀座中央通りが全国最高、渋谷・新宿・表参道・浅草などで上昇が鮮明に ―
令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として公表され、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額として示されます。
一般的に、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に設定されます。そのため、実際の売買価格そのものではありませんが、相続税・贈与税の評価、資産承継、相続対策、不動産の概況把握において重要な指標になります。
令和8年分の東京都の路線価を見ると、銀座、渋谷、新宿、有楽町、表参道、日本橋、新橋、池袋、上野、秋葉原など、都心部の主要商業地で高い価格水準が続いています。
また、浅草、北千住、中野、赤羽、錦糸町、日暮里、高円寺、武蔵小山などでは、高い上昇率も見られました。観光需要、インバウンド、駅前再開発、マンション需要、商業集積などが、東京都内の路線価を押し上げていると考えられます。
一方で、東京都内でも、都心部、城東、城北、城西、多摩地域では価格水準や上昇率に差があります。令和8年分の東京都路線価は、都心部の圧倒的な価格水準と、周辺部・再開発地域・観光地への上昇の広がりを示す結果であったといえます。
1 全国最高路線価は銀座中央通り
令和8年分の相続税路線価で、全国最高となったのは、東京都中央区銀座5丁目の「銀座中央通り」です。
令和8年分の路線価は、1㎡当たり5,336万円となりました。前年の4,808万円から上昇し、変動率は11.0%の上昇です。
銀座は、日本を代表する商業地です。百貨店、高級ブランド店、飲食店、ホテル、オフィス、劇場、ギャラリーなどが集積し、国内外から多くの来街者を集めています。
特に銀座中央通りは、銀座の中でも象徴的なメインストリートであり、商業地としてのブランド力、集客力、希少性が非常に高い地域です。
インバウンド需要の回復、高級品需要、飲食・物販需要、ホテル需要、都心商業地への投資需要などが、銀座の路線価上昇を支えていると考えられます。
銀座中央通りの路線価が全国最高を維持していることは、東京都心部の商業地としての強さを象徴するものです。
2 銀座の上昇が示すもの
銀座中央通りの上昇は、単に都心にあるからというだけではありません。
銀座は、商業地としての知名度、ブランド力、回遊性、店舗集積、交通利便性が非常に高い地域です。東京メトロ銀座駅、東銀座駅、有楽町駅、新橋駅などにも近く、複数の駅から来街者を取り込むことができます。
また、銀座は国内客だけでなく、訪日外国人観光客の消費動向にも影響を受けやすい地域です。インバウンド需要が回復すると、高級ブランド店、免税需要、飲食店、ホテル、観光関連店舗の収益期待が高まりやすくなります。
路線価は相続税評価の基準ですが、その背景には、こうした商業地としての収益性や投資需要が反映されています。
銀座の路線価上昇は、東京都心部の商業地が、観光、買い物、飲食、業務、投資の複合的な需要に支えられていることを示しているといえます。
3 渋谷駅周辺も高い価格水準
価額順で銀座中央通りに次ぐ高い水準となっているのが、渋谷区宇田川町の「渋谷駅側通り」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり3,640万円で、前年の3,440万円から上昇しました。変動率は5.8%の上昇です。
渋谷は、若者文化、ファッション、IT企業、オフィス、商業施設、飲食店、ホテル、ライブ・イベント施設などが集積する、東京都内でも非常に集客力の高い商業地です。
渋谷駅周辺では、大規模な再開発が続いており、駅周辺の歩行者動線、オフィス、商業施設、ホテル、住宅、公共空間が更新されています。
渋谷駅側通りの高い路線価は、再開発による都市機能の向上、商業地としての集客力、オフィス需要、観光・来街者需要、投資需要が重なった結果と考えられます。
4 新宿通りも引き続き高水準
新宿区新宿3丁目の「新宿通り」も、東京都内で非常に高い路線価を示しています。
令和8年分の路線価は、新宿税務署管内で1㎡当たり3,424万円、四谷税務署管内で1㎡当たり3,136万円となっています。
新宿は、世界有数の乗降客数を有する新宿駅を中心に、百貨店、専門店、飲食店、オフィス、ホテル、映画館、劇場、歓楽街、行政機能などが集積する巨大商業地です。
新宿3丁目周辺は、伊勢丹新宿店をはじめとする商業施設が集まり、買い物客、観光客、通勤・通学者など、幅広い来街者を取り込むエリアです。
新宿通りの路線価は、商業地としての圧倒的な集客力、鉄道利便性、店舗需要、オフィス需要、インバウンド需要を反映していると考えられます。
5 有楽町・表参道・日本橋・新橋も高価格帯
千代田区有楽町2丁目の「晴海通り」は、令和8年分の路線価が1㎡当たり2,752万円となりました。
有楽町は、銀座、丸の内、日比谷に近接し、商業、業務、劇場、飲食、ホテルなどの需要が重なる地域です。銀座中央通りほどの最高価格帯ではないものの、都心商業地として非常に高い価格水準を示しています。
港区北青山3丁目の「表参道」は、1㎡当たり2,208万円となりました。表参道は、高級ブランド店、ファッション、カフェ、オフィス、住宅が混在する人気の高い商業地であり、青山・原宿・渋谷方面との連続性もあります。
中央区八重洲1丁目の「外堀通り」は、1㎡当たり1,968万円となりました。東京駅八重洲口に近く、オフィス、商業、再開発、ホテル需要が重なるエリアです。
港区新橋2丁目の「新橋西口駅前広場通り」は、1㎡当たり1,616万円となりました。新橋は、オフィスワーカー向けの飲食需要、交通利便性、銀座・汐留・虎ノ門方面との近接性を有する地域です。
これらの地点は、いずれも東京都心部の商業・業務・観光需要が重なる高価格帯の路線です。
6 池袋・上野・秋葉原も高い水準
豊島区東池袋1丁目の「グリーン大通り」は、令和8年分の路線価が1㎡当たり1,535万円となりました。池袋は、副都心として商業施設、オフィス、大学、劇場、飲食店、マンション需要が集まる地域です。
台東区上野4丁目の「中央通り」は、1㎡当たり1,112万円となりました。上野は、上野駅、アメ横、上野公園、博物館・美術館、飲食店、ホテルが集積する商業・観光地です。インバウンド需要の影響も受けやすい地域です。
千代田区外神田4丁目の「中央通り」は、1㎡当たり1,104万円となりました。秋葉原は、電気街、サブカルチャー、観光、オフィス、ホテル、飲食需要が重なる地域です。
これらの地点は、銀座、渋谷、新宿ほどの価格水準ではないものの、東京都内の主要商業地として高い路線価を示しています。
7 上昇率では浅草・北千住・中野が目立つ
令和8年分の東京都内の路線価では、価格水準だけでなく、上昇率にも注目する必要があります。
上昇率が特に高かった地点の一つが、台東区浅草1丁目の「雷門通り」です。令和8年分の路線価は1㎡当たり737万円で、前年の578万円から27.5%上昇しました。
浅草は、浅草寺、雷門、仲見世通り、隅田川、東京スカイツリー方面への観光動線などを有する、東京を代表する観光地です。インバウンド観光客の増加により、飲食店、物販店、ホテル、観光関連施設の需要が強まっていると考えられます。
足立区千住3丁目の「北千住駅西口駅前広場通り」は、1㎡当たり872万円で、24.2%の上昇となりました。
北千住は、JR常磐線、東京メトロ千代田線・日比谷線、東武スカイツリーライン、つくばエクスプレスなどが利用できる交通結節点です。駅前商業地としての集積に加え、大学、マンション、飲食店、生活利便施設が集まり、都心近接の拠点として評価が高まっています。
中野区中野5丁目の「中野駅北口駅前広場前」は、1㎡当たり840万円で、22.4%の上昇となりました。
中野駅周辺では、大規模な駅前再開発、商業施設、大学、オフィス、マンション需要が重なっており、将来の街の変化への期待が路線価に反映されていると考えられます。
8 城東・城北エリアにも上昇が広がる
令和8年分の東京都路線価では、都心3区や副都心だけでなく、城東・城北エリアにも上昇が広がっています。
北区赤羽1丁目の「赤羽駅東口広場通り」は、1㎡当たり490万円で、21.6%の上昇となりました。
墨田区江東橋3丁目の「錦糸町駅南口ロータリー」は、1㎡当たり398万円で、20.6%の上昇です。
荒川区西日暮里2丁目の「日暮里駅東口広場通り」は、1㎡当たり368万円で、20.3%の上昇となりました。
江戸川区南小岩7丁目の「小岩駅南口ロータリー」は、1㎡当たり213万円で、17.0%の上昇です。
これらの地域は、都心部ほどの最高価格帯ではありませんが、駅前再開発、交通利便性、マンション需要、生活利便性、都心との価格差などを背景に、上昇率が高くなっています。
特に、都心部の価格が高騰する中で、相対的に取得可能性のある城東・城北の駅前商業地や住宅地に需要が広がっていることがうかがえます。
9 多摩地域では吉祥寺・立川・調布が高い
多摩地域では、武蔵野市吉祥寺本町1丁目の「サンロード」が1㎡当たり718万円となり、多摩地域の中でも高い路線価を示しています。
吉祥寺は、中央線沿線を代表する人気商業地・住宅地です。駅前商業施設、飲食店、井の頭公園、住宅地としてのブランド力があり、広域から買い物客や居住需要を集めています。
立川市曙町2丁目の「立川駅北口駅前広場前」は、1㎡当たり664万円となりました。立川は、多摩地域の業務・商業・行政・交通の拠点都市であり、駅周辺には大型商業施設、オフィス、ホテル、行政機関、医療機関などが集積しています。
調布市小島町1丁目の「調布駅北口駅前広場」は、1㎡当たり281万円で、15.2%の上昇となりました。調布駅周辺では、駅前整備、商業施設、マンション需要、京王線による新宿方面へのアクセスが価格を支えています。
多摩地域は、都心部と比べると価格水準は低いものの、中央線・京王線など主要鉄道沿線の駅前商業地では、堅調な路線価が見られます。
10 東京都内の地域差
東京都の路線価は、全体として上昇傾向が強いものの、地域差もあります。
銀座、渋谷、新宿、有楽町、表参道、日本橋、新橋、池袋、上野、秋葉原など、都心部・副都心の主要商業地では、極めて高い価格水準となっています。
一方で、浅草、北千住、中野、赤羽、錦糸町、日暮里、小岩、武蔵小山、高円寺などでは、価格水準そのものは都心最高価格帯には及ばないものの、上昇率が高くなっています。
さらに、多摩地域では、吉祥寺、立川、調布、町田、八王子などの駅前商業地が地域の中心となっています。
つまり、東京都の路線価は、都心部の高価格帯だけでなく、観光地、再開発地域、交通結節点、駅前商業地、マンション需要の強い地域にも上昇が広がっているといえます。
11 路線価上昇は相続税にも影響する
路線価は、相続税や贈与税の土地評価に使われます。
そのため、路線価が上昇すると、同じ土地を所有していても、相続税評価額が上がる可能性があります。
たとえば、中央区銀座5丁目の銀座中央通りでは、路線価が前年の4,808万円/㎡から5,336万円/㎡に上昇しました。
仮に、同通り沿いに50㎡の土地を所有していると単純計算した場合、評価額のイメージは次のようになります。
前年:4,808万円 × 50㎡ = 24億400万円
令和8年:5,336万円 × 50㎡ = 26億6,800万円
この場合、単純計算では土地の評価額が2億6,400万円上昇することになります。
また、台東区浅草1丁目の雷門通りでは、路線価が前年の578万円/㎡から737万円/㎡に上昇しました。
仮に、同通り沿いに100㎡の土地を所有していると単純計算した場合、評価額のイメージは次のようになります。
前年:578万円 × 100㎡ = 5億7,800万円
令和8年:737万円 × 100㎡ = 7億3,700万円
この場合、単純計算では土地の評価額が1億5,900万円上昇することになります。
実際には、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正、二方路線影響加算、借地権割合、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例などにより評価額は変わりますが、路線価の上昇は相続税評価額に直接影響する重要な要素です。
銀座、渋谷、新宿、表参道、日本橋、浅草、北千住、中野、池袋、上野、秋葉原など、近年上昇傾向の強い地域に土地を所有している方は、最新の路線価を確認しておくことが大切です。
12 上昇地域でも市場価値との違いに注意
路線価は、相続税や贈与税の評価に使われる重要な指標ですが、実際の売買価格そのものではありません。
東京都内では、同じ町内であっても、幹線道路沿いか裏通りか、駅から近いか遠いか、容積率が高いか低いか、再開発区域に入っているかどうか、建物が収益物件か自用建物かによって、市場価値は大きく異なります。
商業地では、歩行者通行量、店舗としての視認性、テナント需要、賃料水準、空室率、建物の老朽化、再開発可能性などが価格に影響します。
住宅地では、駅距離、住環境、学校、スーパー、病院、道路幅員、災害リスク、建物の状態などが重要です。
また、都心部では、借地権、底地、共有、区分所有、老朽ビル、再建築の可否、容積率の消化状況など、権利関係や建築条件が価格に大きく影響することもあります。
そのため、路線価が上昇しているからといって、すべての不動産が同じように高く売れるわけではありません。個別不動産の条件を確認することが重要です。
13 相続対策では評価額と市場価値の両方を見る
相続税の計算では路線価が重要です。
しかし、不動産の実際の価値を考える場合には、路線価だけでは不十分です。
相続対策では、相続税評価額を確認するだけでなく、その不動産が実際に売却できるのか、賃貸収益はいくらか、維持管理費はいくらかかるのか、共有になって問題が生じないか、納税資金を確保できるかを検討する必要があります。
特に東京都内では、土地の評価額が高額になりやすく、相続税の納税資金が問題になることがあります。
都心部の商業地や駅前の収益不動産では、評価額は高い一方で、賃借人、借地権、共有関係、建物老朽化、立退き、再開発協議などの問題がある場合もあります。
また、住宅地であっても、古くから所有している土地の評価額が高くなり、相続人が納税や遺産分割で困ることがあります。
したがって、東京都内に不動産を所有している場合には、路線価の確認とあわせて、市場価値、売却可能性、賃貸収益、管理負担、相続人間の分けやすさを早めに確認しておくことが大切です。
14 令和8年分路線価から見る東京都不動産市場
令和8年分の相続税路線価から見える東京都不動産市場の特徴は、大きく三つあります。
第一に、都心部の主要商業地の価格水準が非常に高いことです。銀座中央通り、渋谷駅側通り、新宿通り、有楽町の晴海通り、表参道、日本橋外堀通り、新橋西口駅前広場通りなどは、全国的に見ても高い路線価を示しています。
第二に、観光地・再開発地域・交通結節点で上昇率が高いことです。浅草、北千住、中野、赤羽、錦糸町、日暮里、小岩、武蔵小山、高円寺などでは、インバウンド、駅前再開発、マンション需要、生活利便性、都心との価格差などを背景に高い上昇率が見られます。
第三に、多摩地域でも主要駅前は堅調であることです。吉祥寺、立川、調布、町田、八王子などの駅前商業地では、地域の商業・業務・住宅需要を背景に一定の価格水準を維持しています。
つまり、東京都の不動産市場は、銀座、渋谷、新宿のような都心最高価格帯だけでなく、観光地、再開発エリア、城東・城北の駅前商業地、多摩地域の拠点駅にも上昇の動きが広がっている市場といえます。
15 まとめ
令和8年分の相続税路線価では、東京都内の主要商業地で高い価格水準と上昇が見られました。
全国最高路線価は、中央区銀座5丁目の「銀座中央通り」で、1㎡当たり5,336万円、前年比11.0%の上昇でした。銀座は、日本を代表する商業地であり、高級ブランド店、百貨店、飲食店、ホテル、オフィスなどが集積し、国内外からの来街者を集めています。
渋谷区宇田川町の「渋谷駅側通り」は1㎡当たり3,640万円、新宿区新宿3丁目の「新宿通り」は1㎡当たり3,424万円、千代田区有楽町2丁目の「晴海通り」は1㎡当たり2,752万円となりました。
また、港区北青山3丁目の「表参道」は1㎡当たり2,208万円、中央区八重洲1丁目の「外堀通り」は1㎡当たり1,968万円、港区新橋2丁目の「新橋西口駅前広場通り」は1㎡当たり1,616万円となっています。
上昇率では、台東区浅草1丁目の「雷門通り」が27.5%上昇、足立区千住3丁目の「北千住駅西口駅前広場通り」が24.2%上昇、中野区中野5丁目の「中野駅北口駅前広場前」が22.4%上昇となり、観光地、交通結節点、再開発地域の強さが目立ちました。
この結果から、東京都内では、都心部の最高価格帯商業地が引き続き高い水準を維持する一方、浅草、北千住、中野、赤羽、錦糸町、日暮里、小岩などにも上昇が広がっていることが分かります。
路線価は、相続税や贈与税の評価に使われる重要な指標ですが、実際の売買価格そのものではありません。不動産の価値は、路線価だけでなく、立地、道路付け、形状、地勢、建物状態、収益性、再開発動向、観光需要、災害リスク、売却可能性などを総合的に見て判断する必要があります。
あおぎり不動産鑑定では、東京都・埼玉県・群馬県・長野県・山梨県・新潟県・富山県・石川県・福井県をはじめとする不動産について、相続税評価、売買、相続、担保評価、投資判断、物件調査等に関するご相談に対応しています。
令和8年分路線価の公表をきっかけに、ご所有不動産の相続税評価や市場価値を確認したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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― 大宮・浦和・川口など県南主要駅前の上昇が鮮明に ―
令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として公表され、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額として示されます。
一般的に、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に設定されます。そのため、実際の売買価格そのものではありませんが、相続税・贈与税の評価、資産承継、相続対策、不動産の概況把握において重要な指標になります。
令和8年分の埼玉県の路線価を見ると、大宮、浦和、川口、西川口、川越、所沢、志木、南越谷など、県南部・県央部の主要駅前商業地で上昇が目立ちます。
一方で、春日部、熊谷、東松山、本庄、秩父、行田などでは、税務署別最高路線価が横ばいとなっており、埼玉県内でも地域差が見られる結果となりました。
埼玉県は、東京都心への通勤圏としての住宅需要、主要駅前の商業・業務需要、再開発期待、工業・物流需要などが重なる県です。令和8年分の相続税路線価は、こうした埼玉県の地域構造をよく表しているといえます。
1 県内最高路線価は大宮駅西口駅前ロータリー
令和8年分の埼玉県内で最も路線価が高かったのは、さいたま市大宮区桜木町2丁目の「大宮駅西口駅前ロータリー」です。
路線価は1㎡当たり666万円で、前年の592万円から上昇しました。対前年変動率は12.5%の上昇です。
大宮駅は、埼玉県内最大級の交通結節点です。東北新幹線、上越新幹線、北陸新幹線、JR京浜東北線、宇都宮線、高崎線、埼京線、川越線、東武アーバンパークライン、ニューシャトルなど、多数の路線が集まっています。
東京方面だけでなく、東北、上信越、北陸方面への広域交通拠点でもあり、埼玉県内外から人の流れが集中するエリアです。
大宮駅周辺には、百貨店、商業施設、オフィス、ホテル、飲食店、金融機関、予備校、マンションなどが集積しています。西口・東口ともに再開発や都市機能更新の動きがあり、商業地としての希少性と将来性が価格に反映されていると考えられます。
大宮駅西口駅前ロータリーの路線価が大きく上昇したことは、埼玉県内における大宮駅周辺の拠点性の強さを示すものです。
2 浦和駅西口も大きく上昇
浦和税務署管内の最高路線価は、さいたま市浦和区高砂1丁目の「浦和駅西口駅前ロータリー」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり287万円で、前年の256万円から上昇しました。対前年変動率は12.1%の上昇です。
浦和は、埼玉県庁、さいたま市役所、裁判所、金融機関、教育施設、商業施設などが集まる行政・文教・商業の中心地です。
大宮が広域交通と商業の拠点であるのに対し、浦和は行政機能、文教性、住宅地としての人気を兼ね備えた地域といえます。
浦和駅周辺では、駅前商業地としての需要に加え、駅近マンション需要も強く、住宅地としてのブランド力も価格を支える要因となっています。
浦和駅西口駅前ロータリーの上昇は、単なる商業地需要だけでなく、行政・文教機能、駅近居住需要、再開発期待が重なった結果といえます。
3 川口・西川口は東京都心近接性が強み
川口税務署管内の最高路線価は、川口市栄町3丁目の「駅前産業道路」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり249万円で、前年の222万円から上昇しました。対前年変動率は12.2%の上昇です。
西川口税務署管内の最高路線価は、川口市川口1丁目の「川口駅東口駅前ロータリー」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり235万円で、前年の210万円から上昇しました。対前年変動率は11.9%の上昇です。
川口市は、東京都に隣接する埼玉県南部の主要都市です。JR京浜東北線により東京都心へのアクセスが良く、東京の住宅価格上昇を背景に、都心近接の住宅地・マンション立地としての需要が強い地域です。
川口駅周辺は、商業施設、飲食店、マンション、公共施設などが集まり、駅前商業地としての集積もあります。
川口・西川口の路線価上昇は、東京都心への近接性、駅前商業地としての利便性、マンション需要、人口集積を背景としたものと考えられます。
4 川越・所沢も上昇
川越税務署管内の最高路線価は、川越市脇田町の「川越駅東口駅前広場」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり127万円で、前年の121万円から上昇しました。対前年変動率は5.0%の上昇です。
川越市は、「小江戸」と呼ばれる歴史的な街並みを有する観光都市です。蔵造りの町並み、時の鐘、菓子屋横丁、喜多院など、県内外から観光客を集める資源があります。
一方で、川越駅周辺は、東武東上線、JR川越線、西武新宿線などの交通利便性を有し、商業施設、飲食店、オフィス、マンションが集まる都市的な駅前商業地でもあります。
また、所沢税務署管内の最高路線価は、所沢市日吉町の「所沢プロペ通り」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり116万円で、前年の110万円から上昇しました。対前年変動率は5.5%の上昇です。
所沢市は、西武池袋線・西武新宿線の交通結節点であり、池袋・新宿方面へのアクセスが良い住宅都市です。所沢駅周辺では商業施設の更新、駅前開発、マンション供給などが進み、駅前商業地としての評価が高まっています。
川越駅東口駅前広場や所沢プロペ通りの上昇は、観光需要、商業需要、住宅需要、交通利便性が重なった結果といえます。
5 志木駅南口・南越谷駅南口も上昇
朝霞税務署管内の最高路線価は、新座市東北2丁目の「志木駅南口ロータリー」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり72万円で、前年の69万円から上昇しました。対前年変動率は4.3%の上昇です。
志木駅は、東武東上線の主要駅であり、池袋方面へのアクセスに優れています。新座市、志木市、朝霞市周辺の住宅需要を支える駅であり、駅前には商業施設、飲食店、マンションなどが集積しています。
越谷税務署管内の最高路線価は、越谷市南越谷1丁目の「南越谷駅南口ロータリー」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり57万円で、前年の53万円から上昇しました。対前年変動率は7.5%の上昇です。
南越谷駅・新越谷駅周辺は、JR武蔵野線と東武スカイツリーラインが交差する交通結節点です。越谷市内だけでなく、県東部の広域的な商業・通勤・通学需要を取り込む駅前商業地です。
志木駅南口、南越谷駅南口の上昇は、いずれも東京都心方面へのアクセス、乗換利便性、駅前商業地としての集積、マンション需要が背景にあると考えられます。
6 上尾駅西口は緩やかに上昇
上尾税務署管内の最高路線価は、上尾市谷津2丁目の「上尾駅西口駅前ロータリー」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり44万円で、前年の43万円から上昇しました。対前年変動率は2.3%の上昇です。
上尾市は、さいたま市の北側に位置し、JR高崎線により大宮・浦和・東京方面へのアクセスが可能な住宅都市です。
上尾駅周辺には、商業施設、公共施設、飲食店、マンション、住宅地が集積しており、地域の中心商業地としての役割を持っています。
大宮、浦和、川口ほどの急激な上昇ではありませんが、都心方面への通勤圏としての住宅需要、駅前商業地としての利便性を背景に、緩やかな上昇が見られます。
7 春日部・熊谷・東松山・本庄・秩父・行田は横ばい
一方で、令和8年分の税務署別最高路線価では、横ばいとなった地点も多くあります。
春日部税務署管内の最高路線価は、春日部市中央1丁目の「春日部駅西口駅前広場」で、1㎡当たり36万円、前年と同額でした。
熊谷税務署管内の最高路線価は、熊谷市筑波3丁目の「熊谷駅前広場」で、1㎡当たり25万円、前年と同額でした。
東松山税務署管内の最高路線価は、東松山市箭弓町1丁目の「市道23号線」で、1㎡当たり15万円、前年と同額でした。
本庄税務署管内の最高路線価は、本庄市早稲田の杜1丁目の「本庄早稲田駅北口広場」で、1㎡当たり11万5,000円、前年と同額でした。
秩父税務署管内の最高路線価は、秩父市中町の「主要地方道秩父上名栗線」で、1㎡当たり8万2,000円、前年と同額でした。
行田税務署管内の最高路線価は、行田市壱里山町の「県道行田停車場線」で、1㎡当たり6万4,000円、前年と同額でした。
これらの地域では、大きな下落は見られない一方で、県南部の主要駅前ほどの強い上昇も見られません。
春日部、熊谷、東松山、本庄、秩父、行田はいずれも地域の中心性を有する都市ですが、東京都心への近接性、再開発期待、マンション需要、駅前商業地としての収益性という点では、大宮・浦和・川口などと差があります。
横ばいという結果は、地域内の一定の需要に支えられて価格を維持している一方、強い上昇要因までは見られにくい状況を示していると考えられます。
8 県南主要駅前の強さ
令和8年分の埼玉県路線価で最も目立つのは、県南主要駅前の強さです。
大宮駅西口駅前ロータリーは12.5%上昇、浦和駅西口駅前ロータリーは12.1%上昇、川口市栄町3丁目の駅前産業道路は12.2%上昇、川口駅東口駅前ロータリーは11.9%上昇となりました。
これらの地点に共通するのは、東京都心へのアクセスの良さ、駅前商業地としての集積、マンション需要、再開発期待です。
特に埼玉県南部では、東京都内の住宅価格が高騰する中で、都心通勤圏としての住宅需要が強まっています。駅近のマンションや利便性の高い住宅地は選ばれやすく、その需要は周辺商業地の価格にも波及します。
また、駅前商業地は土地の供給が限られているため、需要が強まると価格に反映されやすい傾向があります。
県南主要駅前の上昇は、埼玉県が単なる東京のベッドタウンではなく、商業・業務・居住機能を併せ持つ都市圏として評価されていることを示しています。
9 県北・県西部では横ばい地点が多い
一方で、県北部や県西部では、税務署別最高路線価が横ばいとなる地点が目立ちます。
熊谷、東松山、本庄、秩父、行田などでは、地域の中心駅前や中心商業地であっても、令和8年分の最高路線価は前年と同額でした。
これらの地域は、地域内の商業・行政・生活拠点として一定の需要を有しています。しかし、東京都心への通勤利便性、駅前再開発の勢い、マンション需要、商業収益性という点では、県南部の主要駅前ほど強くありません。
また、地方都市型の中心商業地では、郊外型商業施設、ロードサイド店舗、自動車利用の増加、人口減少、高齢化などの影響を受けやすくなります。
そのため、県北・県西部の不動産を見る場合には、単に「駅前だから高い」と判断するのではなく、商業集積、歩行者通行量、駐車場の有無、周辺人口、道路アクセス、空き店舗の状況などを個別に確認する必要があります。
10 路線価上昇は相続税にも影響する
路線価は、相続税や贈与税の土地評価に使われます。
そのため、路線価が上昇すると、同じ土地を所有していても、相続税評価額が上がる可能性があります。
たとえば、大宮駅西口駅前ロータリーでは、路線価が前年の592万円/㎡から666万円/㎡に上昇しました。
仮に、同地点周辺に100㎡の土地を所有していると単純計算した場合、評価額のイメージは次のようになります。
前年:592万円 × 100㎡ = 5億9,200万円
令和8年:666万円 × 100㎡ = 6億6,600万円
この場合、単純計算では土地の評価額が7,400万円上昇することになります。
また、浦和駅西口駅前ロータリーでは、路線価が256万円/㎡から287万円/㎡に上昇しました。
仮に、同地点周辺に100㎡の土地を所有していると単純計算した場合、評価額のイメージは次のようになります。
前年:256万円 × 100㎡ = 2億5,600万円
令和8年:287万円 × 100㎡ = 2億8,700万円
この場合、単純計算では土地の評価額が3,100万円上昇することになります。
実際には、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正、二方路線影響加算、借地権割合、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例などにより評価額は変わりますが、路線価の上昇は相続税評価額に直接影響する重要な要素です。
大宮、浦和、川口、川越、所沢、南越谷など、近年上昇傾向の強い地域に土地を所有している方は、最新の路線価を確認しておくことが大切です。
11 横ばい地域でも相続対策は必要
一方で、春日部、熊谷、東松山、本庄、秩父、行田のように、最高路線価が横ばいとなった地域もあります。
路線価が横ばいであれば、相続税評価額が急激に上がる可能性は低いかもしれません。しかし、相続対策が不要になるわけではありません。
地方都市や郊外部では、相続税評価額よりも「その不動産を将来どうするか」が問題になることがあります。
たとえば、古い店舗兼住宅、空き家、利用予定のない土地、老朽化した賃貸物件、境界が未確定の土地、接道条件が悪い土地などは、相続後に処分や管理で困ることがあります。
相続税評価額が高くなくても、実際には売却しにくい、解体費がかかる、固定資産税の負担が続く、相続人が遠方に住んでいて管理できない、といった問題が発生することがあります。
そのため、路線価が上昇している地域だけでなく、横ばい地域でも、不動産の現状を確認し、売却、賃貸、解体、活用、共有回避などを早めに検討することが重要です。
12 相続対策では評価額と市場価値の両方を見る
相続税の計算では路線価が重要です。
しかし、不動産の実際の価値を考える場合には、路線価だけでは不十分です。
たとえば、同じ路線価の土地であっても、形状が良い土地と悪い土地、道路付けが良い土地と悪い土地、建築しやすい土地と造成費がかかる土地では、市場での評価は異なります。
商業地では、歩行者通行量、駅からの距離、店舗としての視認性、駐車場の有無、テナント需要、収益性、再開発の可能性などが価格に影響します。
住宅地では、駅距離、学校、スーパー、病院、公共交通、道路幅員、周辺環境、災害リスクなどが重要です。
工業地や物流地では、高速道路インターチェンジへのアクセス、大型車両の進入可能性、用途地域、周辺住環境との関係、敷地規模、操業環境などが価格に影響します。
つまり、相続対策では、相続税評価額だけではなく、その不動産が実際に売れるのか、誰が使うのか、維持管理費はいくらかかるのか、相続人が共有して問題にならないか、といった実務的な視点も重要です。
13 まとめ
令和8年分の相続税路線価では、埼玉県内の主要駅前商業地で大きな上昇が見られました。
県内最高路線価は、さいたま市大宮区桜木町2丁目の「大宮駅西口駅前ロータリー」で、1㎡当たり666万円、前年比12.5%の上昇でした。大宮駅は新幹線を含む多数の路線が集まる広域交通結節点であり、商業・業務・宿泊・居住需要が重なる県内有数の中心地です。
浦和駅西口駅前ロータリーは1㎡当たり287万円、前年比12.1%の上昇、川口市栄町3丁目の駅前産業道路は1㎡当たり249万円、前年比12.2%の上昇、川口駅東口駅前ロータリーは1㎡当たり235万円、前年比11.9%の上昇となりました。
川越駅東口駅前広場は1㎡当たり127万円、所沢プロペ通りは1㎡当たり116万円、志木駅南口ロータリーは1㎡当たり72万円、南越谷駅南口ロータリーは1㎡当たり57万円となり、いずれも上昇しています。
一方で、春日部駅西口駅前広場、熊谷駅前広場、東松山市箭弓町1丁目の市道23号線、本庄早稲田駅北口広場、秩父市中町の主要地方道秩父上名栗線、行田市壱里山町の県道行田停車場線は横ばいとなりました。
この結果から、埼玉県内では、大宮、浦和、川口など県南主要駅前の上昇が鮮明である一方、県北・県西部の中心地では横ばい地点も多く、地域差が大きくなっていることが分かります。
路線価は、相続税や贈与税の評価に使われる重要な指標ですが、実際の売買価格そのものではありません。不動産の価値は、路線価だけでなく、立地、道路付け、形状、地勢、建物状態、収益性、再開発動向、住宅需要、物流需要、災害リスク、売却可能性などを総合的に見て判断する必要があります。
あおぎり不動産鑑定では、埼玉県・群馬県・長野県・山梨県・新潟県・富山県・石川県・福井県をはじめとする不動産について、相続税評価、売買、相続、担保評価、投資判断、物件調査等に関するご相談に対応しています。
令和8年分路線価の公表をきっかけに、ご所有不動産の相続税評価や市場価値を確認したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
あおぎり不動産鑑定
― 34年ぶりの上昇転換、高崎・前橋・太田・草津に強さ ―
令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として公表され、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額として示されます。
一般的に、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に設定されます。そのため、実際の売買価格そのものではありませんが、相続税・贈与税の評価、資産承継、相続対策、不動産の概況把握において重要な指標になります。
令和8年分の群馬県の相続税路線価を見ると、県全体としては長く続いた下落基調から上昇に転じたとされ、地価の改善傾向がうかがえる結果となりました。
特に、高崎市、前橋市、太田市、草津町などでは、交通利便性、中心市街地の再評価、産業集積、観光需要などを背景に上昇が見られます。一方で、伊勢崎市、藤岡市などでは下落となっており、群馬県内でも地域差が明確に表れています。
1 群馬県の路線価は34年ぶりに上昇転換
令和8年分の群馬県内の相続税路線価は、平均変動率がプラスに転じたとされています。
群馬県では、長らく路線価の下落傾向が続いていました。しかし、令和8年分では、高崎市、前橋市、太田市、草津町などの上昇が県平均を押し上げ、34年ぶりの上昇転換となりました。
もっとも、群馬県全域が一律に上昇しているわけではありません。
県内の税務署別最高路線価を見ると、高崎、前橋、館林管内、草津町を含む中之条管内では上昇が見られます。一方で、伊勢崎市や藤岡市では下落し、沼田市、富岡市、桐生市では横ばいとなっています。
つまり、令和8年分の群馬県路線価は、「県全体としては上昇に転じたが、上昇している地域とそうでない地域との差が大きい」という結果であったといえます。
2 県内最高路線価は高崎駅周辺
群馬県内で最も路線価が高かったのは、高崎市八島町の「市道高崎駅・連雀町線」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり47万円で、前年の46万円から上昇しました。変動率は2.2%の上昇です。
高崎駅周辺は、群馬県内で最も広域交通利便性の高いエリアの一つです。上越新幹線、北陸新幹線、高崎線、上越線、信越本線、両毛線、吾妻線、八高線、上信電鉄などが集まる交通結節点であり、県内外からの人の流れが集中します。
駅周辺には、商業施設、ホテル、オフィス、飲食店、マンション、金融機関、行政・文化施設などが集積しており、群馬県内でも都市機能の集積度が高い地域です。
高崎市は、県庁所在地ではありませんが、交通拠点性や商業集積の面では群馬県内で非常に強い存在感を持っています。
高崎駅周辺の路線価が県内最高となっていることは、群馬県の不動産市場において、県庁所在地である前橋市だけでなく、広域交通拠点である高崎市の評価が高いことを示しています。
3 高崎駅前の上昇が示すもの
高崎駅前の上昇は、単に駅に近いというだけではありません。
高崎駅は、新幹線停車駅として首都圏、北陸、新潟方面へのアクセスが良く、県内各地への移動の拠点にもなっています。ビジネス、通勤、通学、観光、買い物など、複数の需要が重なる場所です。
また、駅周辺では、商業施設やホテル、マンション開発などの動きもあり、駅前居住や駅近商業地としての需要も見られます。
地方都市では、駅前商業地が郊外型商業施設との競合により弱含むこともあります。しかし、高崎駅周辺については、鉄道交通の結節性が非常に高く、広域から人を集める力があります。
そのため、高崎駅周辺の路線価は、群馬県内の中心商業地の中でも高い水準を維持していると考えられます。
4 前橋市本町通りは7.4%上昇
前橋税務署管内の最高路線価は、前橋市本町2丁目の「本町通り」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり14万5,000円で、前年の13万5,000円から上昇しました。変動率は7.4%の上昇です。
前橋市は、群馬県の県庁所在地であり、行政、業務、医療、教育、文化機能が集積する都市です。県庁、市役所、裁判所、金融機関、医療機関、学校などが集まる県政の中心地です。
一方で、長年、中心市街地の空洞化や郊外型商業施設への顧客流出が課題となってきました。
しかし近年は、前橋市中心部で再開発、民間投資、まちなか居住、公共空間の再整備、飲食店や若い事業者の出店などが見られ、中心市街地の再評価が進んでいます。
前橋市本町通りの上昇は、中心部の再生期待、行政・業務機能の集積、まちなか居住需要などが反映されたものと考えられます。
5 太田駅南口も上昇
館林税務署管内の最高路線価は、太田市飯田町の「太田駅南口駅前広場」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり13万円で、前年の12万5,000円から上昇しました。変動率は4.0%の上昇です。
太田市は、群馬県東部を代表する工業都市です。特に自動車関連産業を中心とする製造業の集積が厚く、企業活動、雇用、住宅需要、商業需要を支えています。
太田駅周辺は、東武鉄道の交通結節点であり、駅前には商業施設、飲食店、ホテル、事務所、住宅などが見られます。
太田市の不動産市場は、工業都市としての雇用・所得環境に支えられている面があります。製造業の集積がある地域では、従業員の住宅需要、企業関連の事業用地需要、ロードサイド商業需要が発生しやすくなります。
太田駅南口の上昇は、駅前の利便性に加えて、太田市全体の産業基盤の強さが反映されたものといえます。
6 草津町湯畑前は13.6%上昇
令和8年分の群馬県路線価で、特に注目されるのが草津町です。
中之条税務署管内の最高路線価は、吾妻郡草津町大字草津の「湯畑前」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり12万5,000円で、前年の11万円から上昇しました。変動率は13.6%の上昇です。
草津温泉は、全国的に有名な温泉地であり、日本を代表する観光地の一つです。湯畑は草津温泉の中心的な観光資源であり、旅館、ホテル、飲食店、土産物店、日帰り入浴施設などが集積しています。
近年は、国内観光客に加え、インバウンド需要も回復・拡大しており、草津温泉の観光地としてのブランド力は非常に高いものがあります。
湯畑前の路線価上昇は、観光客の回遊性、宿泊需要、飲食・物販需要、温泉地としての希少性が反映されたものと考えられます。
長野県の白馬村や野沢温泉村、山梨県の富士河口湖町と同じように、群馬県でも観光地・リゾート地の路線価上昇が目立つ結果となりました。
7 草津温泉の不動産市場の特徴
草津温泉の不動産市場は、一般的な地方都市の住宅地・商業地とは異なる特徴があります。
まず、観光地としてのブランド力が非常に強いことです。草津温泉は、全国的な知名度を有し、年間を通じて観光客を集める力があります。
次に、湯畑周辺の希少性です。観光客が集中する中心部では、店舗、旅館、飲食店、物販店としての需要が高く、土地の供給も限られます。
さらに、宿泊施設や飲食店の収益性への期待も価格形成に影響します。観光客が増えれば、宿泊、食事、土産物、日帰り入浴などの消費が増え、商業地としての評価が高まりやすくなります。
一方で、観光地特有のリスクもあります。観光需要の変動、人手不足、施設の老朽化、修繕費、温泉設備、冬季の除雪、景観や建築規制などを確認する必要があります。
路線価が上昇している地域では、相続税評価額の上昇だけでなく、実際の収益性、維持管理費、将来の売却可能性も含めて判断することが大切です。
8 伊勢崎市本町は下落
伊勢崎税務署管内の最高路線価は、伊勢崎市本町の「本町通り」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり4万8,000円で、前年の4万9,000円から下落しました。変動率は2.0%の下落です。
伊勢崎市は、群馬県南部に位置し、前橋市、高崎市、太田市などとともに県内の主要都市圏を形成しています。工業、住宅、ロードサイド商業の集積があり、人口規模も大きい都市です。
一方で、旧来型の中心商業地では、郊外型店舗、幹線道路沿いの大型店、車利用を前提とした商業施設との競合が強くなりやすい傾向があります。
伊勢崎市本町通りの下落は、都市全体の需要が弱いというよりも、中心商業地としての競争環境や店舗需要の変化が反映されたものと考えられます。
地方都市では、駅前・中心商店街よりも、駐車場を備えたロードサイド型店舗や郊外商業地の方が選好されることがあります。この点は、伊勢崎市に限らず多くの地方都市で共通する課題です。
9 藤岡市中央通りも下落
藤岡税務署管内の最高路線価は、藤岡市藤岡の「中央通り」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり3万7,000円で、前年の3万8,000円から下落しました。変動率は2.6%の下落です。
藤岡市は、群馬県南西部に位置し、上信越自動車道、関越自動車道、国道17号、国道254号などの交通網との関係が深い地域です。高速道路のインターチェンジ周辺や幹線道路沿いでは、物流、工業、ロードサイド商業の需要が見られる場合があります。
一方で、中心市街地の旧来型商業地では、人口減少、商業需要の変化、車社会の進展、郊外店舗への顧客流出などにより、地価が弱含むことがあります。
藤岡市中央通りの下落は、中心商業地の需要が限定的であることを示していると考えられます。
ただし、藤岡市全体を一律に弱いと見るべきではありません。交通利便性の高い工業地、物流適地、幹線道路沿いの事業用地などでは、個別に需要が見られる可能性があります。
10 沼田・富岡・桐生は横ばい
沼田税務署管内の最高路線価は、沼田市下之町の「本町通り」で、1㎡当たり4万7,000円、前年と同額でした。
富岡税務署管内の最高路線価は、富岡市富岡の「宮本町通り」で、1㎡当たり3万7,000円、前年と同額でした。
桐生税務署管内の最高路線価は、桐生市巴町2丁目の「市道10206号線」で、1㎡当たり3万5,000円、前年と同額でした。
これらの地域では、大きな上昇は見られないものの、下落もしていません。
沼田市は、県北部の中心都市として、尾瀬、片品、水上方面への観光動線や地域生活圏の拠点性を有しています。
富岡市は、世界遺産である富岡製糸場を有する観光都市であり、歴史的な街並みや観光需要があります。
桐生市は、織物産業で知られる歴史ある都市であり、古い街並み、文化資源、桐生駅周辺の市街地を有しています。
ただし、これらの都市では、人口減少、中心市街地の商業需要の弱まり、建物老朽化、空き店舗・空き家の増加などの課題もあります。
横ばいという結果は、地域の拠点性や観光資源により下支えされている一方で、強い上昇までは見られにくい状況を示していると考えられます。
11 群馬県内では地域差が明確
令和8年分の群馬県路線価で大きな特徴は、地域差が明確になっていることです。
高崎駅周辺、前橋市中心部、太田駅周辺、草津温泉湯畑前などでは上昇が見られます。
これらの地域には、それぞれ明確な価格形成要因があります。
高崎は、新幹線停車駅を含む広域交通結節点です。
前橋は、県庁所在地として行政・業務機能が集積しています。
太田は、製造業・雇用を背景とする工業都市です。
草津は、全国的な温泉観光地です。
つまり、交通、行政、産業、観光といった明確な需要のある地域では、路線価が上昇しています。
一方で、伊勢崎市や藤岡市の旧来型中心商業地では下落が見られます。沼田、富岡、桐生も横ばいにとどまっています。
県全体の平均が上昇に転じたとしても、すべての地域が同じように上昇しているわけではありません。
群馬県の不動産市場を見る場合には、高崎駅周辺、前橋中心部、太田市、草津温泉、伊勢崎市、藤岡市、沼田市、富岡市、桐生市など、地域ごとの需要の中身を確認する必要があります。
12 路線価上昇は相続税にも影響する
路線価は、相続税や贈与税の土地評価に使われます。
そのため、路線価が上昇すると、同じ土地を所有していても、相続税評価額が上がる可能性があります。
たとえば、高崎市八島町の市道高崎駅・連雀町線では、路線価が前年の46万円/㎡から47万円/㎡に上昇しました。
仮に、同通り沿いに100㎡の土地を所有していると単純計算した場合、評価額のイメージは次のようになります。
前年:46万円 × 100㎡ = 4,600万円
令和8年:47万円 × 100㎡ = 4,700万円
この場合、単純計算では土地の評価額が100万円上昇することになります。
また、草津町大字草津の湯畑前では、路線価が11万円/㎡から12万5,000円/㎡に上昇しました。
仮に、同地点周辺に200㎡の土地を所有していると単純計算した場合、評価額のイメージは次のようになります。
前年:11万円 × 200㎡ = 2,200万円
令和8年:12万5,000円 × 200㎡ = 2,500万円
この場合、単純計算では土地の評価額が300万円上昇することになります。
実際には、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正、二方路線影響加算、借地権割合、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例などにより評価額は変わりますが、路線価の上昇は相続税評価額に直接影響する重要な要素です。
高崎駅周辺、前橋市中心部、太田駅周辺、草津温泉周辺などに土地を所有している方は、最新の路線価を確認しておくことが大切です。
13 下落地域でも相続対策は必要
一方で、伊勢崎市や藤岡市のように路線価が下落している地域では、相続税評価額が下がる可能性があります。
しかし、路線価が下がったから相続対策が不要になるわけではありません。
むしろ、地方都市の中心部では、相続税評価額よりも「その不動産を将来どうするか」が問題になる場合があります。
たとえば、中心商店街の古い店舗兼住宅、郊外の空き家、利用予定のない土地、老朽化した賃貸物件、境界が未確定の土地などは、相続後に処分や管理で困ることがあります。
相続税評価額が低くても、実際には売却しにくい、解体費がかかる、固定資産税の負担が続く、相続人が遠方に住んでいて管理できない、といった問題が発生することがあります。
そのため、路線価が上昇している地域だけでなく、横ばい・下落地域でも、不動産の現状を確認し、売却、賃貸、解体、活用、共有回避などを早めに検討することが重要です。
14 相続対策では評価額と市場価値の両方を見る
相続税の計算では路線価が重要です。
しかし、不動産の実際の価値を考える場合には、路線価だけでは不十分です。
たとえば、同じ路線価の土地であっても、形状が良い土地と悪い土地、道路付けが良い土地と悪い土地、建築しやすい土地と造成費がかかる土地では、市場での評価は異なります。
商業地では、歩行者通行量、車の交通量、店舗としての視認性、駐車場の有無、テナント需要、収益性などが価格に影響します。
住宅地では、学校、スーパー、病院、公共交通、道路幅員、災害リスク、周辺環境などが重要です。
工業地では、高速道路インターチェンジへのアクセス、工業団地の集積、物流利便性、操業環境、大型車両の通行可能性などが価格に影響します。
観光地では、観光客の回遊性、宿泊需要、温泉街としてのブランド力、施設の老朽化、景観、冬季対応、人手不足なども確認する必要があります。
つまり、相続対策では、相続税評価額だけではなく、その不動産が実際に売れるのか、誰が使うのか、維持管理費はいくらかかるのか、相続人が共有して問題にならないか、といった実務的な視点も重要です。
15 まとめ
令和8年分の相続税路線価では、群馬県の路線価は長年の下落基調から上昇に転じたとされ、改善傾向が見られる結果となりました。
県内最高路線価は、高崎市八島町の「市道高崎駅・連雀町線」で、1㎡当たり47万円、前年比2.2%の上昇でした。高崎駅周辺は、新幹線を含む広域交通結節点であり、商業、業務、宿泊、居住の需要が重なる群馬県内有数の中心地です。
前橋市本町2丁目の「本町通り」は1㎡当たり14万5,000円、前年比7.4%の上昇となりました。県庁所在地としての行政・業務機能、中心市街地再生への期待が反映されたものと考えられます。
太田市飯田町の「太田駅南口駅前広場」は1㎡当たり13万円、前年比4.0%の上昇となりました。太田市は製造業の集積が厚く、工業都市としての雇用・住宅・商業需要が価格を支えています。
また、草津町大字草津の「湯畑前」は1㎡当たり12万5,000円、前年比13.6%の上昇となりました。草津温泉の観光地としてのブランド力、宿泊・飲食・物販需要、インバウンド需要が路線価上昇の背景にあると考えられます。
一方で、伊勢崎市本町の「本町通り」は1㎡当たり4万8,000円、前年比2.0%の下落、藤岡市藤岡の「中央通り」は1㎡当たり3万7,000円、前年比2.6%の下落となりました。
沼田市下之町の「本町通り」は1㎡当たり4万7,000円、富岡市富岡の「宮本町通り」は1㎡当たり3万7,000円、桐生市巴町2丁目の「市道10206号線」は1㎡当たり3万5,000円で、いずれも前年と同額でした。
この結果から、群馬県内では、高崎、前橋、太田、草津のように交通利便性、行政・業務機能、産業集積、観光需要を有する地域では上昇が見られる一方、旧来型中心商業地などでは下落も見られ、地域差が大きくなっていることが分かります。
路線価は、相続税や贈与税の評価に使われる重要な指標ですが、実際の売買価格そのものではありません。不動産の価値は、路線価だけでなく、立地、道路付け、形状、地勢、建物状態、収益性、観光需要、工業需要、災害リスク、売却可能性などを総合的に見て判断する必要があります。
あおぎり不動産鑑定では、群馬県・長野県・山梨県・新潟県・富山県・石川県・福井県をはじめとする不動産について、相続税評価、売買、相続、担保評価、投資判断、物件調査等に関するご相談に対応しています。
令和8年分路線価の公表をきっかけに、ご所有不動産の相続税評価や市場価値を確認したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
あおぎり不動産鑑定
― 県全体では下落が続く一方、甲府駅前・富士河口湖町で上昇 ―
令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として公表され、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額として示されます。
一般的に、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に設定されます。そのため、実際の売買価格そのものではありませんが、相続税・贈与税の評価、資産承継、相続対策、不動産の概況把握において重要な指標になります。
令和8年分の山梨県の路線価を見ると、県全体としては下落傾向が続いている一方で、甲府駅前や富士河口湖町など、一部の地域では上昇が見られます。
特に、県内最高路線価である甲府市丸の内1丁目の「JR甲府駅前通り」は、1㎡当たり27万円となり、前年より上昇しました。また、大月税務署管内では、最高路線価の地点が大月駅周辺から富士河口湖町船津の「御坂みち」に変わった点が注目されます。
山梨県の不動産市場は、県全体としては人口減少や地方都市の商業地需要の弱さを背景に、なお弱含む地域が多い一方で、甲府駅前、富士河口湖町、富士五湖地域、甲府都市圏の生活利便性の高い住宅地、工業地周辺などでは、個別に強い動きが見られる市場といえます。
1 山梨県全体では下落が続く
令和8年分の山梨県内標準宅地の平均変動率は、前年比0.3%のマイナスとなり、34年連続の下落となりました。
全国的には、都市部や観光地を中心に路線価の上昇が見られます。しかし、山梨県全体として見ると、人口減少、中心市街地の商業需要の弱まり、郊外型店舗への顧客流出、山間部や需要の限定的な地域の多さなどから、なお下落基調が続いています。
もっとも、県内全域が一律に弱いわけではありません。甲府市中心部、富士河口湖町、富士吉田市、昭和町、甲斐市、中央市など、交通利便性、観光需要、住宅需要、工業需要のある地域では、上昇又は横ばいの動きも見られます。
つまり、令和8年分の山梨県路線価は、「県全体では下落が続くが、甲府駅前や富士五湖地域などでは上昇が見られる」という、地域差のある結果であったといえます。
2 県内最高路線価は甲府駅前通り
山梨県内で最も路線価が高かったのは、甲府市丸の内1丁目の「JR甲府駅前通り」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり27万円で、前年より5,000円上昇しました。変動率は1.9%の上昇で、2年連続の上昇です。
甲府駅前は、山梨県の県庁所在地である甲府市の中心部に位置し、JR中央本線、JR身延線、バス交通が集まる県内最大級の交通結節点です。
駅周辺には、商業施設、ホテル、オフィス、飲食店、行政機関、金融機関、マンションなどが集積しており、県内でも最も都市機能が集中するエリアの一つです。
また、甲府市は山梨県の行政・業務・商業の中心地であり、周辺市町村からの通勤・通学・買い物需要もあります。
県全体では下落が続く中で、甲府駅前が上昇している点は、山梨県内でも中心部とその他地域との差が出ていることを示しています。
3 甲府駅前の上昇が示すもの
甲府駅前の路線価上昇は、単に駅に近いからというだけではありません。
地方都市では、駅前商業地が郊外型商業施設との競合により弱含むこともあります。しかし、甲府駅周辺は、県庁所在地の中心駅として、行政、業務、商業、宿泊、居住の需要が重なっています。
近年は、中心市街地への居住ニーズも一定程度見られます。高齢者世帯、単身者、共働き世帯などにとって、駅、病院、商業施設、行政機関に近い場所は利便性が高く、マンション需要にもつながります。
また、甲府駅は東京方面とのアクセス拠点でもあり、中央本線を利用した広域的な移動の起点となります。
甲府駅前通りの上昇は、山梨県全体の下落基調の中でも、都市機能が集積する中心部では一定の需要が維持されていることを示していると考えられます。
4 富士河口湖町船津の御坂みちが上昇
令和8年分の路線価で特に注目されるのが、富士河口湖町船津の「御坂みち」です。
大月税務署管内の最高路線価は、これまで大月市大月1丁目の「大月駅南口ロータリー」でしたが、令和8年分では富士河口湖町船津の「御坂みち」に変わりました。
同地点の路線価は1㎡当たり7万9,000円で、前年より上昇しました。変動率は5.3%の上昇です。
富士河口湖町は、富士山、河口湖、富士五湖観光、宿泊施設、飲食店、観光商業施設、別荘、二地域居住など、多様な需要を有する地域です。
特に近年は、インバウンド観光客の増加、富士山観光の人気、宿泊施設需要、観光商業需要、別荘・移住需要などを背景に、富士河口湖町周辺の不動産需要は強まっています。
御坂みちは、河口湖方面への主要な動線の一つであり、観光客や地域住民の交通量、商業施設へのアクセス、ロードサイド型の土地利用などが価格に影響していると考えられます。
大月署管内の最高路線価が大月駅前から富士河口湖町に移ったことは、山梨県内においても、観光地・リゾート地の存在感が高まっていることを示す象徴的な動きといえます。
5 富士五湖地域は観光需要が価格を支える
富士河口湖町を中心とする富士五湖地域は、山梨県内でも特殊性の強い不動産市場です。
一般的な地方都市では、人口減少や中心市街地の需要低下が地価下落の要因となります。しかし、富士五湖地域では、地域住民の需要だけでなく、観光客、インバウンド、宿泊事業者、別荘需要、二地域居住、投資需要など、県外・国外からの需要が不動産市場に影響します。
富士山や湖の眺望、観光施設への距離、幹線道路へのアクセス、ホテル・旅館・民泊の需要、飲食店・物販店の成立可能性などが、土地の価格形成に影響します。
同じ富士河口湖町内でも、河口湖駅周辺、湖畔、幹線道路沿い、別荘地、住宅地、農地周辺では、市場性が大きく異なります。
路線価が上昇している地域では、相続税評価額の上昇だけでなく、実際の売買価格や収益性、観光需要の変化も確認する必要があります。
6 石和温泉・富士川町は横ばい
山梨税務署管内の最高路線価は、笛吹市石和町駅前の「県道石和温泉停車場線」で、1㎡当たり6万3,000円となりました。前年と同額で、横ばいです。
石和温泉は、山梨県を代表する温泉地の一つです。旅館、ホテル、飲食店、観光施設、ワイナリー、果樹園観光などと結びついた地域性を有しています。
一方で、温泉旅館街としての需要は、観光客の動向、宿泊施設の更新状況、団体旅行から個人旅行への変化、インバウンド対応、施設の老朽化などに左右されます。
石和町駅前の路線価が横ばいであったことは、温泉地・観光地として一定の需要を維持している一方で、富士河口湖町のような強い上昇までは見られない状況を示していると考えられます。
また、鰍沢税務署管内の最高路線価は、富士川町青柳町の「町道青柳横通り線」で、1㎡当たり3万1,000円となり、こちらも前年と同額で横ばいです。
富士川町は、山梨県西部に位置し、甲府盆地南西部の生活圏に属する地域です。富士川、国道52号、中部横断自動車道などとの関係があり、峡南地域の拠点性を有しています。
青柳町周辺は、地域内の商業・生活利便施設が集まるエリアであり、周辺住民の日常生活需要を支える場所といえます。
ただし、甲府市中心部や富士河口湖町と比べると、外部からの投資需要や観光商業需要は限定的です。そのため、横ばいという結果は、地域内需要に支えられて価格を維持しているものの、強い上昇要因までは見られにくい状況を示していると考えられます。
7 甲府都市圏周辺の住宅地需要
山梨県の相続税路線価を見るうえでは、甲府市中心部だけでなく、昭和町、甲斐市、中央市など、甲府都市圏周辺の住宅需要も重要です。
昭和町は、甲府市に隣接し、商業施設、医療施設、工業団地、住宅地が集積する生活利便性の高い地域です。甲府市中心部へのアクセスも良く、住宅地としての需要が比較的安定しています。
甲斐市や中央市も、甲府都市圏の住宅地として一定の需要があります。幹線道路へのアクセス、商業施設、学校、病院、職場への通勤利便性などが価格形成に影響します。
山梨県全体としては下落基調が続いていても、甲府都市圏の中で生活利便性の高い地域では、相続税路線価や実勢価格において相対的に底堅い動きが見られる場合があります。
8 リニア中央新幹線への期待
山梨県の不動産市場を考えるうえでは、リニア中央新幹線の影響も無視できません。
リニア中央新幹線では、甲府市大津町付近に山梨県駅の設置が予定されています。開業時期や周辺整備の具体的な進捗には注意が必要ですが、長期的には甲府都市圏南部や中央市、昭和町、甲府市大津町周辺の土地利用に影響を与える可能性があります。
新駅が整備される地域では、駅前広場、道路、商業施設、業務施設、駐車場、住宅地、物流・工業系土地利用などの変化が生じることがあります。
ただし、リニア効果はすべての地域で同じように表れるわけではありません。駅の位置、周辺道路、都市計画、企業立地、住宅需要、商業施設の集積、交通結節性によって、不動産価格への影響は大きく異なります。
そのため、山梨県内の不動産を見る場合には、リニアへの期待だけでなく、具体的な都市計画、道路整備、土地利用規制、民間投資の動向を確認することが大切です。
9 路線価上昇は相続税にも影響する
路線価は、相続税や贈与税の土地評価に使われます。
そのため、路線価が上昇すると、同じ土地を所有していても、相続税評価額が上がる可能性があります。
たとえば、甲府市丸の内1丁目のJR甲府駅前通りでは、路線価が前年の26万5,000円/㎡から27万円/㎡に上昇しました。
仮に、同通り沿いに100㎡の土地を所有していると単純計算した場合、評価額のイメージは次のようになります。
前年:26万5,000円 × 100㎡ = 2,650万円
令和8年:27万円 × 100㎡ = 2,700万円
この場合、単純計算では土地の評価額が50万円上昇することになります。
また、富士河口湖町船津の御坂みちでは、路線価が7万9,000円/㎡となっています。仮に200㎡の土地を所有している場合、単純計算では次のようになります。
7万9,000円 × 200㎡ = 1,580万円
実際には、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正、二方路線影響加算、借地権割合、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例などにより評価額は変わりますが、路線価の上昇は相続税評価額に直接影響する重要な要素です。
甲府駅前、富士河口湖町、富士吉田市、昭和町、甲斐市、中央市など、近年需要が見られる地域に土地を所有している方は、最新の路線価を確認しておくことが大切です。
10 下落地域でも相続対策は必要
一方で、山梨県全体としては路線価の平均変動率が下落しています。
路線価が下落している地域では、相続税評価額が下がる可能性があります。しかし、路線価が下がったから相続対策が不要になるわけではありません。
むしろ、地方都市や山間部では、相続税評価額よりも「その不動産を将来どうするか」が問題になる場合があります。
たとえば、利用予定のない実家、空き家、農地、山林、古い店舗兼住宅、境界が未確定の土地、接道条件が悪い土地などは、相続後に処分や管理で困ることがあります。
相続税評価額が低くても、実際には売却しにくい、解体費がかかる、固定資産税や管理費が続く、遠方の相続人が管理できない、共有になって処分できない、といった問題が発生することがあります。
そのため、路線価が上昇している地域だけでなく、横ばい・下落地域でも、不動産の現状を確認し、売却、賃貸、解体、活用、共有回避などを早めに検討することが重要です。
11 相続対策では評価額と市場価値の両方を見る
相続税の計算では路線価が重要です。
しかし、不動産の実際の価値を考える場合には、路線価だけでは不十分です。
たとえば、同じ路線価の土地であっても、形状が良い土地と悪い土地、道路付けが良い土地と悪い土地、建築しやすい土地と造成費がかかる土地では、市場での評価は異なります。
商業地では、歩行者通行量、車の交通量、店舗としての視認性、駐車場の有無、テナント需要、収益性などが価格に影響します。
住宅地では、学校、スーパー、病院、公共交通、道路幅員、災害リスク、周辺環境などが重要です。
観光地では、富士山や湖の眺望、観光施設への距離、宿泊需要、インバウンド、別荘需要、民泊需要、道路アクセス、駐車場、景観規制などが価格に影響します。
つまり、相続対策では、相続税評価額だけではなく、その不動産が実際に売れるのか、誰が使うのか、維持管理費はいくらかかるのか、相続人が共有して問題にならないか、といった実務的な視点も重要です。
12 まとめ
令和8年分の相続税路線価では、山梨県内標準宅地の平均変動率が前年比0.3%のマイナスとなり、34年連続で下落しました。
県全体としては下落が続いているものの、県内最高路線価である甲府市丸の内1丁目の「JR甲府駅前通り」は、1㎡当たり27万円となり、前年比1.9%上昇しました。2年連続の上昇であり、県都中心部としての拠点性、駅前の商業・業務・居住需要が価格を支えていると考えられます。
また、大月税務署管内では、最高路線価が大月市大月1丁目の「大月駅南口ロータリー」から、富士河口湖町船津の「御坂みち」に変わりました。同地点は1㎡当たり7万9,000円、前年比5.3%の上昇となっており、富士河口湖町を中心とする観光・宿泊・別荘需要の強さが表れています。
山梨税務署管内の笛吹市石和町駅前「県道石和温泉停車場線」は1㎡当たり6万3,000円で横ばい、鰍沢税務署管内の富士川町青柳町「町道青柳横通り線」は1㎡当たり3万1,000円で横ばいとなりました。
この結果から、山梨県内では、県全体としては下落が続く一方で、甲府駅前や富士河口湖町のように上昇する地域もあり、地域差が大きくなっていることが分かります。
路線価は、相続税や贈与税の評価に使われる重要な指標ですが、実際の売買価格そのものではありません。不動産の価値は、路線価だけでなく、立地、道路付け、形状、地勢、建物状態、収益性、観光需要、災害リスク、売却可能性などを総合的に見て判断する必要があります。
あおぎり不動産鑑定では、山梨県・長野県・新潟県・富山県・石川県・福井県をはじめとする不動産について、相続税評価、売買、相続、担保評価、投資判断、物件調査等に関するご相談に対応しています。
令和8年分路線価の公表をきっかけに、ご所有不動産の相続税評価や市場価値を確認したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
あおぎり不動産鑑定
― 富山県は富山駅前が上昇、中心部と周辺地域の差が見える結果に ―
令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として公表され、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額として示されます。
一般的に、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に設定されます。そのため、実際の売買価格そのものではありませんが、相続税・贈与税の評価、資産承継、相続対策、不動産の概況把握において重要な指標になります。
令和8年分の富山県の路線価を見ると、県内最高路線価である富山市桜町1丁目の「駅前広場通り」が上昇した一方、高岡市や砺波市の最高路線価は横ばい、魚津市では下落となりました。
富山県全体としては、富山市中心部や富山駅周辺の上昇傾向が見られる一方で、県内全域が一律に上昇しているわけではなく、地域ごとの差が表れた結果といえます。
1 県内最高路線価は富山駅前広場通り
令和8年分の富山県内で最も路線価が高かったのは、富山市桜町1丁目の「駅前広場通り」です。
路線価は1㎡当たり57万円で、前年の54万円から上昇しました。対前年変動率は5.6%の上昇です。
富山駅前は、北陸新幹線、あいの風とやま鉄道、JR高山本線、富山地方鉄道、市内電車、バス交通などが集まる富山県最大の交通結節点です。駅周辺には、ホテル、商業施設、飲食店、オフィス、マンション、行政・文化施設などが集積しています。
また、富山市はコンパクトシティ政策や公共交通を軸としたまちづくりで知られており、中心市街地や公共交通沿線への居住・都市機能の集約が進められてきました。
富山駅前広場通りの上昇は、北陸新幹線による広域交通利便性、駅前再整備、ホテル・商業需要、マンション需要、中心市街地への都市機能集積が反映されたものと考えられます。
2 富山駅前の上昇が示すもの
富山駅前の路線価上昇は、単に「駅に近いから高い」というだけではありません。
地方都市では、中心市街地の空洞化や郊外大型店への顧客流出が問題となることもあります。しかし、富山駅周辺については、県内最大の交通結節点としての機能に加え、商業、宿泊、業務、居住の需要が重なっています。
特に近年は、駅前や中心部におけるマンション需要も地価を支える要因となっています。高齢者世帯、共働き世帯、単身者、県外からの転入者などにとって、駅近で生活利便性の高い場所は選ばれやすい傾向があります。
また、富山駅周辺は、観光客やビジネス客の玄関口でもあります。立山黒部アルペンルート、富岩運河環水公園、ガラス美術館、富山湾の食文化など、観光資源へのアクセス拠点としても機能しています。
このように、富山駅前は、交通利便性、商業性、宿泊需要、居住需要が重なった地域であり、富山県内でも相対的に強い不動産需要が認められるエリアといえます。
3 高岡市京田は横ばい
高岡税務署管内の最高路線価は、高岡市京田の「市道南部105号」で、1㎡当たり8万円となりました。前年と同額で、変動率は0.0%です。
高岡市は、富山県西部の中心都市であり、歴史・文化・産業の集積を有する地域です。国宝瑞龍寺、高岡大仏、山町筋、金屋町などの歴史的資源があり、鋳物や銅器などの伝統産業でも知られています。
また、新高岡駅には北陸新幹線が停車し、高岡駅周辺や新高岡駅周辺では、商業施設、住宅地、ロードサイド店舗などが見られます。
ただし、富山駅前のような強い上昇までは見られず、令和8年分では横ばいとなりました。
高岡市は、県西部の拠点都市として一定の需要を有している一方、人口減少や中心市街地の商業需要の変化、郊外型店舗との競合などもあり、不動産市場は一様に強いとはいえません。
横ばいという結果は、地域の拠点性を維持しながらも、地価を大きく押し上げるほどの強い材料までは見られにくい状況を示していると考えられます。
4 魚津市釈迦堂は下落
魚津税務署管内の最高路線価は、魚津市釈迦堂1丁目の「駅前通り」で、1㎡当たり5万8,000円となりました。前年の5万9,000円から下落し、変動率はマイナス1.7%です。
魚津市は、富山県東部の中心的な都市の一つであり、魚津駅周辺には商業施設、飲食店、ホテル、住宅地などが見られます。また、魚津港、蜃気楼、魚津水族館、海の駅蜃気楼など、海や観光に関する地域資源も有しています。
一方で、地方都市の駅前商業地では、人口減少、車社会の進展、郊外型店舗への顧客流出、空き店舗の発生などにより、地価が弱含むことがあります。
魚津駅前通りの下落は、駅前という立地の優位性がありながらも、商業地としての需要が十分に強くはないこと、また周辺地域の人口動態や商業環境の変化が影響していると考えられます。
魚津市の不動産を見る場合には、駅前か郊外か、住宅地か商業地か、幹線道路沿いか、観光需要を取り込めるかによって、市場性が大きく異なります。
5 砺波市三島町は横ばい
砺波税務署管内の最高路線価は、砺波市三島町の「国道156号」で、1㎡当たり4万9,000円となりました。前年と同額で、変動率は0.0%です。
砺波市は、富山県西部に位置し、散居村の景観、チューリップ、庄川、農業地帯としての性格を有する地域です。一方で、国道156号や北陸自動車道砺波インターチェンジなどの交通利便性を背景に、ロードサイド型商業施設や住宅地も形成されています。
砺波市三島町の国道156号沿いは、自動車交通を前提とした商業地・生活利便型の土地利用が見られる地域です。
令和8年分では横ばいとなりましたが、これは、富山駅前のような都市中心部の強い上昇とは異なり、地域内需要や幹線道路沿いの一定の商業需要に支えられながら、価格が安定している状態と見ることができます。
砺波市のような地方都市では、駅前商業地だけでなく、幹線道路沿いのロードサイド店舗、住宅団地、生活利便施設の集積状況が地価に影響します。
6 富山市とその他地域の差
令和8年分の富山県路線価で最も分かりやすい特徴は、富山市中心部とその他地域との差です。
富山駅前広場通りは5.6%上昇しており、県内でも特に強い動きを示しています。これは、富山駅周辺が交通、商業、宿泊、業務、居住の機能を集積する県都中心部であることが大きな要因です。
一方で、高岡市、砺波市は横ばい、魚津市は下落となっており、県内の地方都市では上昇が広く波及しているとはいえません。
つまり、富山県の不動産市場は、富山市中心部を中心に堅調な動きが見られる一方で、県西部・県東部の地方都市では横ばい又は下落が見られるという、地域差のある市場といえます。
この傾向は、長野県、石川県、福井県、新潟県でも見られる「中心部・観光地・交通結節点は強く、人口減少地域や旧来型中心商業地は弱い」という構図と共通しています。
7 令和8年地価公示から見る富山県の地域性
相続税路線価は、地価公示価格等を基に設定されます。そのため、路線価を見る際には、地価公示の動向も参考になります。
令和8年地価公示では、富山県全体の全用途平均は0.3%の上昇、住宅地は0.2%の上昇、商業地は0.3%の上昇、工業地は2.2%の上昇となっています。
特に富山市では、全用途平均が1.4%上昇しており、県平均を上回っています。富山市中心部や生活利便性の高い住宅地、幹線道路沿いの商業地、工業・物流需要のある地域などで、一定の需要が見られると考えられます。
一方、高岡市は全用途平均で0.8%の下落となっており、県内でも地域差があることが分かります。
また、工業地については、県平均で2.2%の上昇となっています。富山県は製造業の集積が厚く、医薬品、化学、金属、機械、電子部品、アルミ関連産業などが立地しており、工業地・物流用地の需要が地価を支える要因になっていると考えられます。
8 富山市中心部の強さ
富山市中心部の強さは、北陸新幹線だけで説明できるものではありません。
富山市は、早くから公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりに取り組んできました。市内電車、ライトレール、バスなどの公共交通網を活かし、中心市街地や公共交通沿線への居住誘導、都市機能の集約を進めてきたことが特徴です。
こうした都市政策は、不動産市場にも一定の影響を与えます。
中心部に人が集まりやすくなれば、商業施設、飲食店、医療施設、マンション、ホテルなどの需要が生まれます。反対に、郊外や旧町村部では、人口減少や高齢化によって需要が弱くなる地域もあります。
富山市桜町1丁目の駅前広場通りの路線価上昇は、こうした都市機能の集積と中心部への需要が反映されたものと考えられます。
9 観光資源と不動産市場
富山県は、観光資源にも恵まれています。
立山黒部アルペンルート、黒部峡谷、宇奈月温泉、五箇山合掌造り集落、雨晴海岸、富岩運河環水公園、富山湾の寿司・海産物など、県内外から人を呼び込む資源があります。
観光需要は、ホテル、飲食店、土産物店、観光施設、二次交通、駅前商業地などに影響します。特に富山駅周辺は、観光客にとって県内各地への玄関口となるため、宿泊・飲食・交通利便性に関連する需要が生まれやすい地域です。
もっとも、観光資源があるからといって、すべての地域の地価が上昇するわけではありません。
観光地としての知名度、交通アクセス、宿泊需要、施設の集積、民間投資、人口動態などがそろって初めて、不動産価格に強く反映されます。
富山県の不動産を見る場合には、観光資源の有無だけでなく、それが実際に土地需要や収益性に結びついているかを確認する必要があります。
10 路線価上昇は相続税にも影響する
路線価は、相続税や贈与税の土地評価に使われます。
そのため、路線価が上昇すると、同じ土地を所有していても、相続税評価額が上がる可能性があります。
たとえば、富山市桜町1丁目の駅前広場通りでは、路線価が前年の54万円/㎡から57万円/㎡に上昇しました。
仮に、同通り沿いに100㎡の土地を所有していると単純計算した場合、評価額のイメージは次のようになります。
前年:54万円 × 100㎡ = 5,400万円
令和8年:57万円 × 100㎡ = 5,700万円
この場合、単純計算では土地の評価額が300万円上昇することになります。
実際には、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正、二方路線影響加算、借地権割合、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例などにより評価額は変わりますが、路線価の上昇は相続税評価額に直接影響する重要な要素です。
特に富山駅周辺、中心市街地、幹線道路沿いの商業地、マンション需要の強い地域に土地を所有している方は、最新の路線価を確認しておくことが大切です。
11 横ばい・下落地域でも相続対策は必要
一方で、高岡市や砺波市のように横ばいの地域、魚津市のように下落している地域では、相続税評価額が大きく上がりにくい場合もあります。
しかし、路線価が横ばい又は下落しているから相続対策が不要になるわけではありません。
むしろ、地方都市では、相続税評価額よりも「その不動産を将来どうするか」が問題になることがあります。
たとえば、中心商店街の古い店舗兼住宅、郊外の空き家、利用予定のない農地、境界が未確定の土地、老朽化した賃貸物件などは、相続後に処分や管理で困ることがあります。
相続税評価額が低くても、実際には売却しにくい、解体費がかかる、固定資産税の負担が続く、相続人が遠方に住んでいて管理できない、といった問題が発生することがあります。
そのため、路線価の上昇地域だけでなく、横ばい・下落地域でも、不動産の現状を確認し、売却、賃貸、解体、活用、共有回避などを早めに検討することが重要です。
12 相続対策では「評価額」と「市場価値」の両方を見る
相続税の計算では路線価が重要です。
しかし、不動産の実際の価値を考える場合には、路線価だけでは不十分です。
たとえば、同じ路線価の土地であっても、形状が良い土地と悪い土地、道路付けが良い土地と悪い土地、建築しやすい土地と造成費がかかる土地では、市場での評価は異なります。
商業地では、歩行者通行量、車の交通量、店舗としての視認性、駐車場の有無、テナント需要、収益性などが価格に影響します。
住宅地では、学校、スーパー、病院、公共交通、道路幅員、除雪、災害リスク、周辺環境などが重要です。
富山県では、雪への対応、道路除雪、車利用のしやすさ、公共交通との距離、中心市街地へのアクセス、工業団地や事業所への通勤利便性なども、不動産の市場性に影響します。
つまり、相続対策では、相続税評価額だけではなく、その不動産が実際に売れるのか、誰が使うのか、維持管理費はいくらかかるのか、相続人が共有して問題にならないか、といった実務的な視点も重要です。
13 令和8年分路線価から見る富山県不動産市場
令和8年分の相続税路線価から見える富山県不動産市場の特徴は、大きく三つあります。
第一に、富山駅前の強さです。富山市桜町1丁目の駅前広場通りは、1㎡当たり57万円となり、前年比5.6%上昇しました。交通結節点としての機能、駅前再整備、商業・宿泊・マンション需要が価格を支えていると考えられます。
第二に、県内の地域差です。高岡市京田の市道南部105号、砺波市三島町の国道156号は横ばいとなった一方、魚津市釈迦堂1丁目の駅前通りは下落しました。富山市中心部の上昇が目立つ一方で、その他の地方都市では横ばい又は下落も見られます。
第三に、工業地・物流地の底堅さです。令和8年地価公示では、富山県の工業地は上昇しており、製造業・物流需要が不動産市場を下支えしている面があります。富山県は製造業の集積が厚く、住宅地や商業地だけでなく、工業地の動きも確認する必要があります。
つまり、富山県の不動産市場は、富山駅前を中心とする都市機能集積地では上昇が見られる一方、県内の地方都市では横ばい・下落もあり、用途や地域によって明暗が分かれる市場といえます。
14 まとめ
令和8年分の相続税路線価では、富山県内の最高路線価である富山市桜町1丁目の「駅前広場通り」が1㎡当たり57万円となり、前年比5.6%上昇しました。
富山駅前は、北陸新幹線、市内電車、バス交通などが集まる県内最大の交通結節点であり、商業、宿泊、業務、居住の需要が重なる地域です。富山市中心部の都市機能集積やマンション需要も、路線価上昇の背景にあると考えられます。
一方、高岡市京田の「市道南部105号」は1㎡当たり8万円で横ばい、砺波市三島町の「国道156号」は1㎡当たり4万9,000円で横ばいとなりました。魚津市釈迦堂1丁目の「駅前通り」は1㎡当たり5万8,000円となり、前年比1.7%の下落でした。
この結果から、富山県内では、富山市中心部の上昇が目立つ一方、その他の地方都市では横ばい又は下落も見られ、地域差があることが分かります。
また、令和8年地価公示では、富山県の全用途平均は上昇しており、特に工業地の上昇が目立ちます。製造業や物流需要が、富山県の不動産市場を下支えしている面もあります。
路線価は、相続税や贈与税の評価に使われる重要な指標ですが、実際の売買価格そのものではありません。不動産の価値は、路線価だけでなく、立地、道路付け、形状、地勢、建物状態、収益性、災害リスク、雪への対応、売却可能性などを総合的に見て判断する必要があります。
あおぎり不動産鑑定では、富山県・石川県・福井県・新潟県・長野県をはじめとする不動産について、相続税評価、売買、相続、担保評価、投資判断、物件調査等に関するご相談に対応しています。
令和8年分路線価の公表をきっかけに、ご所有不動産の相続税評価や市場価値を確認したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
― 新潟県は33年連続下落も、新潟駅前・燕三条・上越など一部で回復傾向 ―
令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として公表され、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額として示されます。
一般的に、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に設定されます。そのため、実際の売買価格そのものではありませんが、相続税・贈与税の評価、資産承継、相続対策、不動産の概況把握において重要な指標になります。
令和8年分の新潟県の路線価を見ると、県全体としては下落が続いているものの、下落幅は縮小しており、新潟市中心部や燕三条、上越市の一部などでは上昇地点も見られます。一方で、柏崎市、小千谷市、糸魚川市などでは下落が続いており、県内でも地域差が明確に表れています。
1 新潟県の標準宅地は33年連続で下落
関東信越国税局が発表した令和8年分の路線価によると、新潟県内の標準宅地の対前年平均変動率は0.4%の下落となりました。
前年は0.6%の下落でしたので、下落幅は縮小しています。
新潟県全体としては33年連続の下落となりましたが、下落率だけを見ると、改善傾向も見られます。長期的には人口減少や地方商業地の弱含みが続いているものの、新潟市中心部や一部の交通利便性の高い地域、工業・物流需要のある地域、観光需要を取り込む地域では、地価の持ち直しが見られる状況です。
つまり、令和8年分の新潟県路線価は、「県全体では下落が続くが、地域によっては回復・上昇が進んでいる」という内容であったといえます。
2 県内最高路線価は38年連続で新潟駅前通り
新潟県内で最も路線価が高かったのは、新潟市中央区東大通1丁目の「新潟駅前通り」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり53万円で、前年から3万円上昇しました。変動率は6.0%の上昇であり、新潟税務署管内では4年連続の上昇となっています。
新潟駅前通りは、38年連続で県内最高路線価となりました。
新潟駅周辺は、新潟県内最大の交通結節点であり、業務、商業、宿泊、飲食、行政・医療・教育機能などが集積する中心市街地です。新幹線、在来線、バス交通が集中し、県内外からの人の流れが集まりやすい立地です。
近年は、新潟駅周辺の整備や再開発、駅直結・駅近商業施設の更新、オフィス・ホテル需要などもあり、中心部の不動産需要を支える要因となっています。
県全体では地価下落が続いている中で、新潟駅前通りが上昇していることは、新潟市中心部の商業・業務集積の強さを示していると考えられます。
3 新潟駅前の上昇が示すもの
新潟駅前通りの路線価上昇は、単に駅前だから高いというだけではありません。
地方都市では、中心市街地の空洞化や郊外大型店への顧客流出が問題となることもあります。しかし、新潟市の場合、県内最大都市としての都市機能が集中しており、駅周辺にはオフィス、ホテル、飲食店、商業施設、マンションなどの需要が重なります。
また、新潟駅周辺では、駅利用者、観光客、ビジネス客、学生、周辺居住者など、複数の需要者層が存在します。このように、単一の需要に依存していないことが、中心部の価格を支える要因になっていると考えられます。
相続税評価の観点から見ると、新潟駅周辺に土地や収益物件を所有している方は、路線価の上昇によって相続税評価額が上がる可能性があります。特に駅前商業地、事務所ビル、店舗併用住宅、賃貸マンション用地などは、最新の路線価を確認しておくことが大切です。
4 長岡市大手通りは横ばい
県内で2番目に高かったのは、長岡市大手通1丁目の「大手通り」で、1㎡当たり19万円でした。前年と同額で、変動率は0.0%です。
長岡市は、新潟県中越地域の中心都市であり、行政、商業、業務、医療、教育機能が集積しています。長岡駅周辺は新幹線停車駅としての交通利便性を有し、中越地域の拠点性を持つエリアです。
一方で、長岡市中心部では、郊外型商業施設との競合や中心市街地の店舗需要の変化もあります。そのため、新潟駅前のような明確な上昇とは異なり、令和8年分では横ばいとなっています。
横ばいという結果は、弱いというよりも、中越地域の中心都市として一定の需要を維持している一方、大きく上昇するほどの強い地価押上げ要因までは見られにくい、という評価が妥当だと思います。
5 燕三条エリアは上昇
巻税務署管内の最高路線価は、燕市井土巻3丁目の「市道燕三条停車場2号線」で、1㎡当たり8万8,000円、前年比1.1%の上昇でした。
三条税務署管内の最高路線価も、三条市須頃1丁目の「市道新幹線駅前通り1号線」で、1㎡当たり8万8,000円、同じく1.1%の上昇です。
燕三条エリアは、上越新幹線の燕三条駅を中心に、交通利便性、商業集積、工業・ものづくり産業の集積が見られる地域です。
燕市・三条市は、金属加工、洋食器、刃物、工具、機械部品など、全国的にも知られるものづくりの集積地です。駅周辺には商業施設、ホテル、飲食店、事業所などが立地し、広域からの人の流れもあります。
また、北陸自動車道三条燕インターチェンジも近く、自動車交通の利便性も高い地域です。こうした交通結節点としての機能と、工業・商業の集積が、路線価の上昇を支えていると考えられます。
新潟県全体では下落が続く中でも、燕三条のように産業集積と交通利便性を兼ね備えた地域では、比較的安定した需要が見込まれます。
6 上越市下門前は上昇
高田税務署管内の最高路線価は、上越市下門前の「県道板倉直江津線」で、1㎡当たり5万8,000円、前年比3.6%の上昇となりました。
上越市は、新潟県上越地域の中心都市であり、直江津港、北陸新幹線、えちごトキめき鉄道、上信越自動車道、北陸自動車道などの交通インフラを有しています。
下門前周辺は、ロードサイド型商業施設や住宅地、事業所などが見られる地域であり、車利用を前提とした商業・生活利便需要が反映されやすいエリアです。
新潟県の地価公示でも、上越地域の一部では上昇地点が見られており、商業地や工業地を中心に、需要のある地域では持ち直しが確認されます。
上越市のような地方中核都市では、中心市街地だけでなく、幹線道路沿い、商業集積地、物流・工業系の需要がある地域が地価を支える場合があります。
7 新津、新発田、十日町、村上、佐渡は横ばい
新津税務署管内の最高路線価は、新潟市秋葉区善道の「市道下興野程島線」で、1㎡当たり5万4,000円、前年と同額でした。
新発田税務署管内の最高路線価は、新発田市舟入町3丁目の「市道舟入20号線」で、1㎡当たり3万9,000円、前年と同額です。
十日町税務署管内の最高路線価は、十日町市高田町6丁目の「市道高山太子堂線」で、1㎡当たり3万8,000円、前年と同額です。
村上税務署管内の最高路線価は、村上市田端町の「駅前通り」で、1㎡当たり3万3,000円、前年と同額です。
佐渡税務署管内の最高路線価は、佐渡市東大通の「市道泉117号線」で、1㎡当たり3万1,000円、前年と同額です。
これらの地域では、強い上昇までは見られないものの、大きく下落しているわけでもありません。地域の中心商業地、幹線道路沿い、駅周辺などでは、一定の生活利便需要や地域内需要が維持されていると考えられます。
ただし、横ばいの地域でも、個別の不動産ごとに見れば差があります。駅に近い土地、幹線道路沿いの店舗用地、住宅需要のある地域、観光地に近い土地などは安定しやすい一方、空き店舗が増えている商店街、人口減少が進む住宅地、建物老朽化が進んだ不動産では、実勢価格が弱含むこともあります。
8 糸魚川、柏崎、小千谷は下落
一方で、糸魚川、柏崎、小千谷の各税務署管内では、最高路線価が前年を下回りました。
糸魚川税務署管内の最高路線価は、糸魚川市南寺町2丁目の「県道西中糸魚川線」で、1㎡当たり4万6,000円、前年比2.1%の下落です。
柏崎税務署管内の最高路線価は、柏崎市駅前1丁目の「主要地方道柏崎停車場線」で、1㎡当たり4万3,000円、前年比2.3%の下落です。柏崎署管内は28年連続の下落とされています。
小千谷税務署管内の最高路線価は、小千谷市平沢2丁目の「国道117号線」で、1㎡当たり3万8,000円、前年比2.6%の下落です。
これらの地域では、人口減少、中心市街地の需要低下、商業集積の弱まり、地方都市における不動産需要の限定性などが影響していると考えられます。
また、柏崎市や上中越の一部地域では、過去の地震、産業構造、人口動態、中心市街地の商業環境など、複数の要因を総合的に見る必要があります。
下落している地域では、相続税評価額が下がること自体は納税者にとって負担軽減につながる面があります。しかし、実際に売却しようとした場合の流動性や、建物解体費、維持管理費、空き家リスクなどには注意が必要です。
9 能登半島地震の影響と回復傾向
新潟県の地価動向を見るうえで、令和6年能登半島地震の影響も無視できません。
新潟県内でも、液状化や建物被害などが発生した地域があり、不動産市場の改善傾向に一時的な歯止めがかかった面があります。
一方、令和8年分では、被害が比較的少なかった地域や、都市機能・交通利便性を有する地域で回復傾向が見られると考えられます。
地震被害の影響があった地域では、土地の価格だけでなく、地盤、液状化履歴、建物被害、復旧状況、インフラ、保険、将来の災害リスクなどを確認する必要があります。
不動産の評価や売買では、単に路線価だけを見るのではなく、災害リスクと復旧状況も含めて判断することが重要です。
10 観光地・リゾート地では上昇の芽もある
新潟県全体では下落が続いていますが、観光地・リゾート地では上昇の芽も見られます。
令和8年の地価公示では、インバウンドを含む観光客の増加により、湯沢町や妙高市の一部地点で地価上昇が見られたとされています。
湯沢町は、上越新幹線による首都圏からのアクセスが良く、スキー場、温泉、リゾートマンションなどを有する観光地です。バブル期に大量供給されたリゾートマンションのイメージもありますが、近年は二地域居住、ワーケーション、インバウンド、スキー・スノーリゾート需要などにより、見直される場面もあります。
妙高市は、赤倉温泉、妙高高原、スキー場、温泉地、山岳観光などを有する地域です。近年は海外資本やインバウンド需要、スノーリゾートとしての評価もあり、一部では地価上昇が見られます。
新潟県の路線価を見る場合、県全体の平均下落だけで判断すると、こうした地域ごとの回復や上昇を見落とす可能性があります。
11 路線価上昇・下落は相続税にどう影響するか
路線価は、相続税や贈与税の土地評価に使われます。
そのため、路線価が上昇すると、同じ土地を所有していても相続税評価額が上がる可能性があります。反対に、路線価が下落すると、相続税評価額が下がる可能性があります。
たとえば、新潟駅前通りのように路線価が50万円/㎡から53万円/㎡に上昇した場合、100㎡の土地であれば、単純計算で次のようになります。
50万円 × 100㎡ = 5,000万円
53万円 × 100㎡ = 5,300万円
この場合、土地の評価額は300万円上昇します。
実際には、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正、二方路線影響加算、借地権割合、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例などにより評価額は変わりますが、路線価の変動は相続税評価額に直接影響します。
特に、新潟駅周辺、燕三条駅周辺、上越市の商業地、観光地・リゾート地などに土地を所有している方は、最新の路線価を確認しておくことが大切です。
12 相続対策では「評価額」と「売れる価格」の両方を見る
相続税の計算では路線価が重要です。
しかし、相続対策では、路線価だけでなく実際の市場価値や売却可能性も確認する必要があります。
たとえば、路線価が下落していて相続税評価額が低くなっている土地であっても、実際には売却が難しい土地もあります。反対に、路線価はそれほど高くなくても、駅周辺、幹線道路沿い、開発需要のある地域、観光地では、実勢価格が強い場合もあります。
特に地方都市では、相続した土地を誰が使うのか、売却できるのか、建物を解体する必要があるのか、固定資産税や管理費を誰が負担するのかが問題になります。
相続税評価額が低いことと、相続人にとって扱いやすい不動産であることは、必ずしも同じではありません。
そのため、相続対策では、路線価による評価額だけでなく、次の点も確認することが重要です。
実際に売却できる価格
売却までにかかる期間
建物解体費
測量費
境界確認の必要性
災害リスク
空き家管理の負担
相続人間での分割のしやすさ
賃貸・活用の可能性
これらを総合的に見て、相続人にとって負担の少ない形を考える必要があります。
13 令和8年分路線価から見る新潟県不動産市場
令和8年分の相続税路線価から見える新潟県不動産市場の特徴は、大きく三つあります。
第一に、県全体としては下落が続いていることです。標準宅地の平均変動率は0.4%の下落であり、33年連続の下落となりました。ただし、下落幅は前年より縮小しており、改善傾向も見られます。
第二に、新潟市中心部など一部地域では上昇していることです。新潟駅前通りは県内最高路線価を38年連続で維持し、前年比6.0%上昇しました。駅前再開発、商業・業務機能の集積、交通利便性が価格を支えています。
第三に、地域差が大きいことです。燕三条や上越市の一部では上昇が見られる一方、糸魚川、柏崎、小千谷では下落が続いています。また、湯沢町や妙高市のように、観光・リゾート需要によって上昇の芽がある地域もあります。
つまり、新潟県の不動産市場は、県全体では下落基調にあるものの、都市中心部、交通結節点、産業集積地、観光地・リゾート地では、個別に強い動きが見られる市場といえます。
14 まとめ
令和8年分の相続税路線価では、新潟県内の標準宅地の平均変動率が0.4%の下落となりました。下落は33年連続ですが、前年の0.6%下落から下落幅は縮小しています。
県内最高路線価は、38年連続で新潟市中央区東大通1丁目の「新潟駅前通り」となり、1㎡当たり53万円、前年比6.0%の上昇でした。
県内13税務署の最高路線価では、前年を上回ったのが新潟、巻、三条、高田の4署、横ばいが新津、長岡、新発田、十日町、村上、佐渡の6署、下落が柏崎、小千谷、糸魚川の3署となっています。
この結果から、新潟県内では、県全体として下落が続く一方で、新潟駅周辺、燕三条、上越市の一部などでは回復・上昇が見られ、地域差が大きくなっていることが分かります。
また、能登半島地震の影響があった地域では、地盤や液状化、復旧状況なども不動産価格を考えるうえで重要です。一方、湯沢町や妙高市のような観光・リゾート地では、インバウンドや観光需要を背景に上昇の芽も見られます。
路線価は相続税や贈与税の評価に使われる重要な指標ですが、実際の売買価格そのものではありません。不動産の価値は、路線価だけでなく、立地、道路付け、形状、地勢、建物状態、収益性、災害リスク、売却可能性などを総合的に見て判断する必要があります。
あおぎり不動産鑑定では、新潟県・長野県をはじめとする不動産について、相続税評価、売買、相続、担保評価、投資判断、物件調査等に関するご相談に対応しています。
令和8年分路線価の公表をきっかけに、ご所有不動産の相続税評価や市場価値を確認したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
― 長野県は3年連続上昇、軽井沢・白馬・野沢温泉の強さが鮮明に ―
令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として公表され、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額として示されます。
一般的に、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に設定されます。そのため、実際の売買価格そのものではありませんが、相続税・贈与税の評価、資産承継、相続対策、不動産の概況把握において重要な指標になります。
令和8年分の長野県の路線価を見ると、全体として上昇傾向が続いており、特に軽井沢町、白馬村、野沢温泉村といったリゾート地・観光地の強さが目立つ結果となりました。
1 長野県の標準宅地は3年連続で上昇
関東信越国税局が公表した長野県内の標準宅地の平均変動率は、継続地点4,818地点で前年比1.1%の上昇となりました。
前年は0.6%の上昇でしたので、上昇幅は拡大しています。長野県全体としては3年連続の上昇となり、地価の回復傾向が続いていることが分かります。
もっとも、県内全域が一律に上昇しているわけではありません。
長野市、松本市、軽井沢町、白馬村、野沢温泉村など、観光需要、移住需要、商業集積、交通利便性、再開発期待などを背景に上昇している地域がある一方で、人口減少や需要の弱い地域では、横ばい又は下落傾向にある地点もあります。
今回の路線価は、長野県内でも地域ごとの差がさらに明確になった結果といえます。
2 県内最高路線価は軽井沢町へ
今回、特に注目されたのは、県内の最高路線価です。
令和8年分の長野県内で最も路線価が高かったのは、佐久税務署管内の「軽井沢町軽井沢 旧軽井沢銀座通り」で、1㎡当たり32万円となりました。前年比では14.3%の上昇です。
これに続いたのが、長野税務署管内の「長野市南長野 長野駅前通り」で、1㎡当たり31万円、前年比5.1%の上昇でした。
これまで長野県内の最高路線価といえば、県庁所在地である長野市の長野駅前通りが中心でした。しかし、令和8年分では、軽井沢町の旧軽井沢銀座通りが長野駅前通りを上回りました。
記録の残る平成元年以降、軽井沢町の地点が長野市の地点を上回ったのは初めてとされています。
これは、軽井沢の不動産市場が、単なる県内の一観光地ではなく、首都圏富裕層やインバウンド需要、別荘・リゾート需要を取り込む全国的な高価格市場になっていることを示していると考えられます。
3 旧軽井沢銀座通りの上昇要因
旧軽井沢銀座通りは、軽井沢を代表する観光商業地です。
観光客の回遊性が高く、土産物店、飲食店、カフェ、ベーカリー、物販店などが集積しており、軽井沢らしい商業地としてのブランド力を有しています。
近年の軽井沢は、避暑地・別荘地としての伝統的な需要に加えて、首都圏からの二地域居住、富裕層の別荘需要、リゾートマンション需要、観光・飲食需要、インバウンド需要などが複合的に重なっています。
また、北陸新幹線による首都圏からのアクセスの良さも大きな強みです。東京から新幹線でアクセスしやすく、週末利用や長期滞在がしやすいことから、軽井沢の不動産需要は長野県内の一般的な地方都市とは異なる動きを示しています。
旧軽井沢銀座通りの路線価上昇は、こうした観光商業地としての希少性、ブランド力、収益性への期待が反映されたものといえます。
4 長野駅前通りも堅調に上昇
一方、長野市南長野の長野駅前通りも、1㎡当たり31万円、前年比5.1%上昇と堅調です。
長野駅前は、長野県の県庁所在地の中心商業地であり、業務、商業、宿泊、飲食、行政機能が集積するエリアです。
長野駅は北陸新幹線、信越本線、しなの鉄道、長野電鉄などの交通結節点であり、県内外からの人の流れが集まりやすい場所です。
軽井沢に県内最高路線価の座を譲ったとはいえ、長野駅前通りの路線価も上昇しており、県都の中心商業地としての地位が弱くなったわけではありません。
むしろ、長野市は行政・業務・生活・商業の中心地として安定した需要を有し、軽井沢は観光・リゾート・富裕層需要を背景に強く上昇している、と見るべきだと思います。
同じ長野県内の上昇でも、長野市と軽井沢町では需要の性質が異なります。
5 白馬村は3年連続で全国上昇率1位
令和8年分路線価で最も大きな注目を集めたのが、白馬村です。
大町税務署管内の「白馬村北城 村道和田野線」は、前年比32.7%の上昇となり、3年連続で全国1位の上昇率となりました。路線価は1㎡当たり6万5,000円です。
白馬村は、北アルプスの山岳景観とスキー場を有する国際的なリゾート地です。冬季のスキー・スノーボード需要に加え、夏季の登山、アウトドア、長期滞在需要もあります。
近年は、外国人観光客や海外資本の関心も高く、宿泊施設、飲食店、別荘、コンドミニアム、開発用地への需要が強まっています。
白馬村の地価上昇は、単に観光客が増えているというだけでなく、世界的なスノーリゾートとしての評価、開発期待、宿泊・滞在需要、投資需要が重なっていることが背景にあると考えられます。
ただし、上昇率が高い一方で、路線価の絶対水準は軽井沢や長野駅前に比べるとまだ低い水準です。これは、これまでの価格水準が相対的に低かったところに、急速な需要が入り、上昇率が大きく出ている面もあります。
6 野沢温泉村は33年ぶりに上昇、全国2位の上昇率
今回もう一つ注目されたのが、野沢温泉村です。
信濃中野税務署管内では、最高地点が「野沢温泉村豊郷 大湯通り」となり、1㎡当たり4万2,000円、前年比31.3%の上昇となりました。
野沢温泉村は、温泉街とスキー場が一体となった観光地です。冬季のスキー需要に加え、温泉、外湯、街歩き、宿泊、飲食などの観光資源を有しており、国内外の観光客から人気があります。
令和8年分では、野沢温泉村の地点が33年ぶりに上昇したとされ、しかも全国2位の上昇率となりました。
これは、白馬村と同様に、インバウンド需要、スノーリゾート需要、宿泊施設・飲食店需要、観光地としての再評価が路線価に反映され始めた結果といえます。
ただし、野沢温泉村も、白馬村と同じく地域の特性が非常に強い市場です。観光需要に支えられる一方で、季節変動、宿泊施設の稼働率、人手不足、建築費上昇、開発規制、既存温泉街の景観との調和など、注意すべき要素も多くあります。
7 県内10税務署管内の動き
長野県内10税務署管内の最高路線価を見ると、上昇が5地点、横ばいが3地点、下落が2地点となっています。
この結果から、長野県内の地価は全体として上昇傾向にあるものの、上昇している地域とそうでない地域の差があることが分かります。
軽井沢、白馬、野沢温泉のようなリゾート地・観光地は強い上昇を示しています。一方で、人口減少や商業集積の弱まりが見られる地域では、横ばい又は下落となる地点もあります。
路線価の見方として重要なのは、県全体の平均だけを見るのではなく、地域ごとの需要の中身を見ることです。
上昇している地域では、観光需要、富裕層需要、インバウンド、開発期待、住宅需要、商業需要など、何が価格を押し上げているのかを確認する必要があります。
反対に、下落している地域では、人口減少、空き店舗、中心市街地の衰退、郊外大型店への顧客流出、交通利便性の低下など、価格を押し下げる要因を確認する必要があります。
8 路線価上昇は相続税にも影響する
路線価は、相続税や贈与税の土地評価に使われます。
したがって、路線価が上昇すると、同じ土地を所有していても、相続税評価額が上がる可能性があります。
たとえば、路線価が1㎡当たり20万円から25万円に上昇した場合、200㎡の土地であれば、単純計算で次のようになります。
20万円 × 200㎡ = 4,000万円
25万円 × 200㎡ = 5,000万円
この場合、土地の評価額は1,000万円上昇します。
実際には、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正、二方路線影響加算、借地権割合、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例などにより評価額は変わりますが、路線価の上昇は相続税評価額に直接影響する重要な要素です。
特に軽井沢町、白馬村、野沢温泉村のように路線価が大きく上昇している地域では、これまで相続税の心配が少ないと思っていた土地でも、評価額が上がる可能性があります。
別荘地、観光地、商業地、宿泊施設用地を所有している方は、最新の路線価を確認しておくことが大切です。
9 相続対策では路線価だけでなく市場性も見る
相続税の評価では路線価が重要ですが、不動産の実際の価値を考える場合には、路線価だけでは不十分です。
たとえば、同じ路線価の土地であっても、形状が良い土地と悪い土地、道路付けが良い土地と悪い土地、傾斜がある土地と平坦な土地、建築しやすい土地と造成費がかかる土地では、市場での評価は異なります。
また、リゾート地では、眺望、道路の除雪状況、上下水道、管理別荘地かどうか、建築規制、自然保護、景観、隣接地の利用状況なども重要です。
商業地では、歩行者通行量、観光客の回遊性、店舗としての視認性、駐車場の有無、テナント需要、収益性などが価格に影響します。
相続対策では、相続税評価額を把握するだけでなく、その不動産が将来売れるのか、誰が使うのか、維持管理費はいくらかかるのか、相続人が共有して問題にならないか、といった実務的な視点も重要です。
10 軽井沢・白馬・野沢温泉の不動産を所有する方の注意点
今回の令和8年分路線価では、軽井沢、白馬、野沢温泉の強さが非常に目立ちました。
これらの地域に土地や建物を所有している方は、相続税評価額が上昇している可能性があります。
特に、次のような方は注意が必要です。
軽井沢町内に別荘地や商業地を所有している方。
旧軽井沢、中軽井沢、南ヶ丘、南原、千ヶ滝、追分などに土地を所有している方。
白馬村内に土地、宿泊施設、店舗、別荘、開発用地を所有している方。
野沢温泉村内に旅館、民宿、店舗、住宅、土地を所有している方。
長野県外に住んでいて、長野県内の不動産を相続する可能性がある方。
地価が上昇している地域では、相続発生時に思った以上の評価額になることがあります。
一方で、相続税評価額は上がっていても、実際に売却できる価格や売却までの期間は、個別の不動産によって大きく異なります。
そのため、相続対策としては、早めに不動産の概算評価を確認し、納税資金、売却可能性、共有回避、遺言書の作成などを検討しておくことが大切です。
11 令和8年路線価から見る長野県不動産市場
令和8年分の路線価から見える長野県不動産市場の特徴は、次の三つだと思います。
第一に、長野県全体としては緩やかな上昇基調にあることです。標準宅地の平均変動率は3年連続で上昇し、前年よりも上昇幅が拡大しました。
第二に、観光・リゾート地の上昇が目立つことです。軽井沢町は県内最高路線価となり、白馬村は3年連続で全国上昇率1位、野沢温泉村は全国2位の上昇率となりました。
第三に、地域差が大きいことです。県内10税務署管内の最高路線価では、上昇、横ばい、下落が混在しており、長野県内でも不動産市場の二極化が進んでいるといえます。
今後も、長野県内の不動産市場では、観光地、駅前商業地、住宅需要の強い地域、工業・物流需要のある地域では堅調な動きが続く可能性があります。
一方で、人口減少が進む地域、商業集積が弱い地域、空き家・空き店舗が増えている地域では、引き続き慎重な見方が必要です。
12 まとめ
令和8年分の相続税路線価では、長野県の標準宅地平均変動率が1.1%上昇し、3年連続で上昇しました。
県内最高路線価は、軽井沢町軽井沢の旧軽井沢銀座通りで1㎡当たり32万円となり、長野市南長野の長野駅前通りを上回りました。軽井沢町の地点が県内最高となったことは、長野県内の不動産市場におけるリゾート地需要の強さを象徴する出来事といえます。
また、白馬村北城の村道和田野線は前年比32.7%上昇し、3年連続で全国1位の上昇率となりました。野沢温泉村豊郷の大湯通りも31.3%上昇し、全国2位の上昇率となりました。
これらの結果から、令和8年分路線価では、軽井沢、白馬、野沢温泉といった長野県内のリゾート地・観光地の強さがはっきり表れたといえます。
一方で、路線価は相続税・贈与税の評価に使われる基準であり、実際の売買価格そのものではありません。また、同じ地域内でも、道路付け、形状、地勢、建築規制、利用状況、収益性、管理状態によって不動産の価値は大きく異なります。
相続税評価額の確認だけでなく、実際に売却できる価格、納税資金、相続人間での分割、将来の維持管理まで含めて考えることが大切です。
あおぎり不動産鑑定では、長野県内の土地、建物、別荘地、商業地、収益物件について、不動産鑑定評価、価格調査、相続対策、売却相談、物件調査等に対応しています。
令和8年分路線価の公表をきっかけに、ご所有不動産の相続税評価や市場価値を確認したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
-幹線道路沿いの出店と生活利便型店舗の競合関係 –
千曲市は、長野県北信地域に位置し、県庁所在地である長野市の南側に接する都市です。長野市中心部への通勤圏としての性格を持つ一方、善光寺平の南部に位置し、戸倉上山田温泉などの観光資源も有しています。
近年、千曲市内では幹線道路沿いを中心に、食品スーパー、ドラッグストア、コンビニエンスストア、飲食店などの生活利便型店舗が集積しており、日常的な買い回り需要をめぐる競争が見られます。
今回は、食品スーパーを中心とする小売業の動向と、千曲市における店舗立地の特徴について整理してみます。
1 食品スーパーは生活必需型の業態である
食品スーパーは、日常生活に欠かせない食料品を取り扱う業態であり、一定の底堅い需要が見込まれる業種です。
景気の変動によって高額品の購入が控えられることはあっても、食料品や日用品の需要が大きく消えることはありません。そのため、食品スーパーは小売業の中でも比較的安定した需要を有する業態といえます。
一方で、近年の食品スーパー業界は必ずしも楽な経営環境ではありません。原材料価格、物流費、人件費、光熱費等の上昇により、店舗運営コストは上がっています。また、ドラッグストア、ディスカウントストア、コンビニエンスストアなども食品の取り扱いを拡大しており、食品スーパーとの競合関係は強まっています。
特に地方都市では、商圏人口が限られる中で複数の小売店舗が競合するため、店舗ごとの集客力、品揃え、価格競争力、駐車場の広さ、アクセスのしやすさが重要になります。
2 全国的にはショッピングセンター市場は回復基調
全国のショッピングセンター市場を見ると、近年は回復基調が見られます。資料では、日本ショッピングセンター協会のSC販売統計調査報告を引用し、2025年の既存SC売上高伸長率が全体で前年比プラスとなり、2021年以降、5年連続で前年を上回ったと整理されています。
売上増加の要因としては、販促施策、館内・近隣イベントの増加、テナント入れ替え、改装効果などが挙げられています。
ただし、地方都市のショッピングセンターや郊外型小売店舗については、全国的な回復傾向をそのまま当てはめることはできません。地域ごとに人口動態、商圏規模、競合店舗の状況、車利用のしやすさ、周辺住宅地の成熟度などが異なるためです。
特に長野県内の地方都市では、幹線道路沿いに自動車利用を前提とした店舗が多く、食品スーパー、ドラッグストア、ロードサイド型飲食店、コンビニエンスストアが近接して立地することが多く見られます。
そのため、個別の店舗評価においては、単に「小売業は堅調」「食品スーパーは生活必需型で安定している」という一般論だけでなく、商圏人口、競合店舗、駐車場、視認性、道路アクセスを具体的に見る必要があります。
3 長野県内の大型小売店売上高の動向
資料によると、長野県内の大型小売店売上高については、令和8年4月時点で、総売上高が前年同月比プラス0.6%となっています。食料品については、販売価格の上昇などを背景に前年同月比プラス0.7%となっており、比較的堅調な推移が確認されています。
一方、衣料品は前年同月比マイナスとなっており、小売業の中でも業種によって動向に差があることが分かります。
この点からも、食品スーパーを中心とする食料品小売業は、生活必需品を取り扱うという性格から一定の需要を維持しやすい一方、物価上昇、人件費上昇、競合激化の影響を受けやすい業態であるといえます。
売上高が増加している場合でも、それが販売数量の増加によるものなのか、価格上昇によるものなのかは慎重に見る必要があります。売上が増えていても、利益率が低下している場合や、光熱費・人件費・物流費の上昇によって収益性が悪化している場合もあります。
したがって、食品スーパーの不動産を評価する場合には、売上高だけでなく、店舗の立地競争力、商圏内でのポジション、建物の老朽化、駐車場の使いやすさ、将来的なテナント需要も確認する必要があります。
4 千曲市の飲食料品小売業の規模
資料では、経済センサス活動調査に基づき、千曲市、長野市、上田市、須坂市、中野市、坂城町について、産業分類「58 飲食料品小売業」の事業所数、従業者数、年間商品販売額、売場面積などが比較されています。
千曲市の飲食料品小売業は、事業所数422、従業者数3,014人、年間商品販売額50,421百万円、売場面積76,102㎡とされています。
比較対象の中では、長野市が事業所数2,896、年間商品販売額444,806百万円と圧倒的に大きく、上田市も年間商品販売額167,033百万円と規模が大きいです。これに対し、千曲市は長野市・上田市ほどの市場規模ではありませんが、中野市や須坂市と近い水準にあり、一定の食品小売市場を形成しているといえます。
また、千曲市の1事業所当たり販売額は119百万円、従業者1人当たり販売額は17百万円、売場1㎡当たり販売額は0.66百万円と整理されています。
この数字から見ると、千曲市は長野市ほどの大規模市場ではないものの、日常生活に必要な食品小売需要が一定程度存在しており、周辺住民の買い回り需要を支える地域市場が形成されていると考えられます。
5 千曲市は長野市への通勤圏であり、ベッドタウン性を有する
千曲市の小売店舗を考えるうえで重要なのは、同市が長野市の南側に位置し、長野市中心部への通勤圏にあるという点です。
資料でも、千曲市は長野市中心部への通勤圏であり、業務・観光両面の需要が比較的堅調であることから、周辺市町村を含めた広域的な生活・就業圏を形成していると整理されています。
また、千曲市新田、鋳物師屋、寂蒔周辺などでは、近年、分譲住宅地の開発が進み、住宅地としての熟成が進んでいるとされています。こうした住宅地の拡大や居住人口の増加は、食品スーパーやドラッグストア、コンビニエンスストアなどの日常生活関連サービスの需要を支える要因になります。
食品スーパーは、地域住民の日常的な買い回り需要を基礎としながら、幹線道路を通行する車利用者の立ち寄り需要も取り込む業態です。そのため、周辺住宅地の人口、幹線道路の交通量、店舗への入りやすさ、駐車場の広さ、視認性が競争力に大きく影響します。
6 千曲市内では幹線道路沿いの競合が重要
千曲市内では、国道18号線、県道403号線、市道1-211号線などの幹線道路沿いに小売店舗が集積しています。
資料では、対象エリア周辺において、既に複数の食品スーパーや生活利便型店舗が立地しており、商圏内における顧客獲得競争が一定程度認められると整理されています。
主な競合店舗としては、食品スーパー、スーパーセンター、ドラッグストア、コンビニエンスストアが挙げられています。食品スーパー同士の競合だけでなく、ドラッグストアやコンビニも、日常的な食品・日用品需要の一部を取り込んでいる点に注意が必要です。
特に近年のドラッグストアは、医薬品だけでなく、食品、飲料、日用品、冷凍食品などの取り扱いを拡大しており、食品スーパーに対する補完的競合、場合によっては直接的競合として機能することがあります。
コンビニエンスストアも、弁当、惣菜、飲料、冷凍食品、日用品などを取り扱っており、特に単身者、高齢者、短時間で買い物を済ませたい需要者にとっては、食品スーパーの代替となる場面があります。
このように、千曲市内の食品スーパー市場を考える場合には、同業スーパーだけではなく、ドラッグストアやコンビニを含めた生活利便型店舗全体の競合状況を見る必要があります。
7 競合店舗を見るポイント
食品スーパーの競争力を考えるうえで、重要なポイントは次のとおりです。
まず、幹線道路への接近性です。車利用が中心となる地方都市では、店舗がどの道路に面しているか、右折入庫しやすいか、交通量があるか、道路から見つけやすいかが重要です。
次に、駐車場です。食品スーパーでは、まとめ買い需要が多いため、駐車場の広さ、停めやすさ、出入りのしやすさが大きな競争力になります。駐車場が狭い、出入口が分かりにくい、交通量の多い道路に面していて出入りしにくい場合には、顧客が競合店に流れる可能性があります。
第三に、店舗の規模と品揃えです。広い売場面積を持つ店舗は、食品、惣菜、日用品などをまとめて購入できるため、集客力を持ちやすいです。一方、小規模店舗でも、近隣高齢者や徒歩圏需要を取り込める場合があります。
第四に、商圏内の住宅地との関係です。周辺に分譲住宅地や集合住宅が多い場合、日常的な買い物需要が期待できます。特に高齢者が多い地域では、近距離で買い物できる店舗に一定の需要が残る可能性があります。
第五に、ブランド力です。地域で認知度の高い食品スーパーや、価格競争力・品揃えに強みのある店舗は、多少距離があっても顧客を引きつけることがあります。
8 千曲市の食品スーパー市場は「一定の需要」と「競争激化」が併存する
千曲市の食品スーパー市場は、生活必需品を扱うため一定の需要が見込まれる一方、競争は決して弱くありません。
資料上も、対象エリア周辺には食品スーパー、スーパーセンター、ドラッグストア、コンビニが複数立地しており、競合度の高い店舗も見られます。
千曲市は長野市のベッドタウン的性格を有し、住宅地の開発も進んでいることから、日常生活需要は一定程度見込まれます。しかし、消費者は車で複数の店舗を比較しながら買い物をすることができるため、店舗の立地や品揃え、価格、駐車場、ブランド力によって顧客が動きやすい市場でもあります。
特に大型食品スーパーやスーパーセンターは、広い駐車場、豊富な品揃え、価格競争力を武器に、広域から顧客を集めることができます。その一方で、近隣密着型の小型店舗は、高齢者や徒歩・自転車利用者、短時間買い物需要を取り込むことで、一定の存在意義を持つことがあります。
つまり、千曲市の食品スーパー市場は、一律に「強い」「弱い」と評価するのではなく、店舗ごとの商圏、立地、規模、駐車場、競合関係を個別に見る必要があります。
9 不動産として見る食品スーパーの評価ポイント
食品スーパーを不動産として見る場合、単に営業しているかどうかだけでは不十分です。
評価上は、次のような点が重要になります。
周辺人口と世帯数
幹線道路からの視認性
駐車場の規模と出入りのしやすさ
競合店舗との距離
食品スーパーとしての売場面積
建物の築年数と老朽化
荷捌きスペースの有無
冷蔵・冷凍設備への対応
将来的な改装・転用可能性
テナント撤退時の再利用可能性
特に食品スーパーは、建物の用途がやや特殊です。売場、バックヤード、冷蔵・冷凍設備、荷捌きスペース、駐車場、看板、搬入口など、一般的な小売店舗とは異なる設備や配置が必要になります。
そのため、仮に現テナントが退去した場合、同じ食品スーパーとして再利用できるのか、ドラッグストアや物販店舗に転用できるのか、あるいは大規模な改修が必要になるのかを検討する必要があります。
商圏内で食品スーパー需要が一定程度あっても、建物が老朽化している、駐車場が狭い、出入口が悪い、競合店に比べて視認性が劣るといった場合には、不動産としての競争力は弱くなります。
10 まとめ
千曲市は、長野市の南側に位置し、長野市への通勤圏、観光地へのアクセス、住宅地の拡大などを背景に、一定の生活利便需要を有する地域です。
市内では、国道18号線、県道403号線、市道1-211号線などの幹線道路沿いに、食品スーパー、ドラッグストア、コンビニエンスストア、飲食店などが集積しており、日常生活関連サービスの立地が進んでいます。
食品スーパーは、生活必需品を取り扱うため一定の需要が見込まれる一方、近年はドラッグストア、ディスカウントストア、コンビニエンスストアとの競合も強まっています。千曲市内でも、複数の食品スーパーや生活利便型店舗が存在しており、商圏内での顧客獲得競争は一定程度認められます。
不動産として食品スーパーを評価する場合には、単に「スーパーだから安定している」と見るのではなく、商圏人口、競合店舗、道路アクセス、駐車場、視認性、建物の老朽化、改装の必要性、テナント代替可能性などを総合的に確認することが重要です。
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