― 飛騨高山の大幅上昇が際立つ一方、県内では地域差も鮮明に ―
令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額が示されます。一般的には、地価公示価格等を基に、その80%程度を目途として定められています。
令和8年分の岐阜県内の最高路線価を見ると、7税務署管内のうち5地点が上昇、1地点が横ばい、1地点が下落となりました。特に、高山市の観光地における大幅な上昇が目立つ一方、岐阜駅周辺や主要地方都市の駅前でも緩やかな上昇が続いています。
岐阜県内の税務署別最高路線価
| 税務署 | 最高路線価の所在地 | 令和8年分 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 岐阜北 | 岐阜市吉野町5丁目・岐阜停車場線通り | 530,000円/㎡ | +1.9% |
| 岐阜南 | 岐阜市加納清野町・加納清野町線通り | 200,000円/㎡ | +2.6% |
| 大垣 | 大垣市高屋町1丁目・市道高屋3号線通り | 120,000円/㎡ | +4.3% |
| 高山 | 高山市上三之町・上三之町下三之町線通り | 420,000円/㎡ | +23.5% |
| 多治見 | 多治見市本町2丁目・多治見駅前通り | 125,000円/㎡ | +4.2% |
| 関 | 郡上市八幡町新町・新町商店街通り | 82,000円/㎡ | ▲1.2% |
| 中津川 | 恵那市長島町正家1丁目・恵那停車場線通り | 65,000円/㎡ | 0.0% |
※国税庁「令和8年分 名古屋国税局各税務署管内の最高路線価」を基に作成。
県内最高は岐阜駅前の53万円
岐阜県内で最も高い路線価は、岐阜市吉野町5丁目の「岐阜停車場線通り」で、1㎡当たり53万円となりました。前年の52万円から1万円、率にして1.9%の上昇です。
同地点はJR岐阜駅北口に位置する県内を代表する商業地域であり、県庁所在都市の最高路線価としても同じ地点が選ばれています。上昇率は大きくないものの、駅周辺の商業・業務機能や交通利便性を背景として、堅調な地価動向が続いていることがうかがえます。
岐阜南税務署管内の岐阜市加納清野町も、前年の19万5,000円から20万円へ2.6%上昇しました。岐阜市内では、駅への接近性や生活利便性を備えた地域を中心に、底堅い土地需要が路線価に反映されています。
高山市上三之町は23.5%の大幅上昇
県内で最も高い上昇率となったのは、高山市上三之町の「上三之町下三之町線通り」です。
令和8年分の路線価は1㎡当たり42万円で、前年の34万円から8万円、率にして23.5%上昇しました。前年も28.3%上昇しており、2年続けて極めて高い上昇率となっています。路線価の水準も岐阜駅前の53万円に次ぐ県内第2位です。
上三之町は、伝統的な建物が連なる「古い町並み」の中心に位置する、高山市を代表する観光商業地域です。高山市では観光客や宿泊客の回復が進んでおり、令和6年の観光入込客数は約442万人と、前年から8.6%増加しています。こうした国内外からの観光需要を背景に、飲食店、物販店舗、宿泊施設等としての収益性や出店需要が、土地価格を押し上げているものと考えられます。
大垣・多治見の駅前も上昇
大垣市高屋町1丁目は、前年の11万5,000円から12万円へ4.3%上昇しました。多治見市本町2丁目の多治見駅前通りも、前年の12万円から12万5,000円へ4.2%上昇しています。
いずれも地域の中心駅に近い商業地域であり、交通利便性や店舗・事務所としての利用可能性を備えています。岐阜県内では、人口減少が進む地域であっても、駅周辺や生活利便施設が集積する地域には需要が集中する傾向がみられます。
一方、中津川税務署管内の恵那市長島町正家1丁目は6万5,000円で横ばいとなり、関税務署管内の郡上市八幡町新町は、前年の8万3,000円から8万2,000円へ1.2%下落しました。県内の地価が一律に上昇しているわけではなく、地域の人口動向、商業集積、交通利便性及び観光需要などによって、価格動向に差が生じています。
岐阜県の路線価は「駅前」と「観光地」がけん引
令和8年分の岐阜県の路線価は、岐阜駅前をはじめとする主要駅周辺の安定した需要と、飛騨高山における強い観光需要が地価をけん引する結果となりました。
なかでも、高山市上三之町の23.5%上昇は際立っています。一方、郡上市の商店街では下落がみられ、同じ観光地や地方都市であっても、来訪者数、店舗需要、宿泊施設の集積状況などによって、地価の動きが大きく異なることが分かります。
なお、路線価は実際の売買価格そのものではありません。個別の土地を評価する際には、接道状況、奥行き、形状、高低差、間口、利用上の制約などに応じた補正が必要です。また、路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額に所定の倍率を乗じる「倍率方式」によって評価します。
相続や贈与を予定している場合には、路線価の上昇が土地の相続税評価額や税負担に影響する可能性があります。特に岐阜駅周辺や飛騨高山など、継続的な地価上昇がみられる地域に土地を所有している場合には、最新の路線価と土地の個別条件を確認しておくことが重要です。