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「現金5000万円あるから安心」は勘違い?2億円の資産を持つ社長が陥る事業承継の罠

コラム
「現金5000万円あるから安心」は勘違い?2億円の資産を持つ社長が陥る事業承継の罠

「うちは手元に現預金が5000万円もあるから、特別な相続対策なんてしなくても、子供たちでうまく分け合えるだろう」

そう考えている中小企業の社長様は非常に多いです。しかし、結論から申し上げますと、その考えは大きな間違いです。

十分な現金を残しているつもりでも、いざ相続が発生すると、会社の存続を揺るがすほどの「大増税」と「親族トラブル」が待ち受けているケースが後を絶ちません。今回は、総資産2億円の社長を例に、事業承継に潜む罠とその解決策を数字を交えて分かりやすく解説します。

【シミュレーション】手元の5000万円では「約4120万円」も足りない!

まずは、以下の条件で社長に相続が発生した場合の具体的な数字を見てみましょう。

【社長の財産(総額2億円)】

  • 事業用の土地:1億円
  • 自社株:5000万円
  • 現預金:5000万円

【家族構成】

  • 相続人は子供3人だけ(配偶者は他界)
  • 長男が後継者として事業(土地・自社株)を承継する場合

1. 想像以上に重い「相続税」の壁

このケースにおける相続税の総額は、約2460万円です。 仮に手元の現預金5000万円からこの相続税を支払うと、手元に残る現金は2540万円まで減ってしまいます。

2. 見落としがちな「遺留分」の恐怖

事業を円滑に引き継ぐため、長男が「事業用の土地(1億円)」と「自社株(5000万円)」の計1億5000万円分を相続したとします。このとき、残された次男と三男には「遺留分(法律上最低限保障された遺産の取り分)」を請求する権利があります。

子供3人の場合の遺留分は、法定相続分の半分である「各6分の1」です。

  • 次男の遺留分:2億円 × 1/6 = 約3333万円
  • 三男の遺留分:2億円 × 1/6 = 約3333万円
  • 次男・三男の遺留分合計約6666万円

相続税を支払った後に残った現預金(2540万円)を次男と三男で均等に分けたとしても、1人あたり1270万円にしかなりません。つまり、遺留分を満たすためには、長男が自身の個人資産から合計で約4120万円もの現金を「代償金」として次男・三男に支払わなければならなくなるのです。

【結論】 遺留分の支払いと相続税の支払いを合わせると、総額約9120万円の資金が必要になります。手元の現金5000万円だけでは全く足りず、長男が残りの約4120万円を用意できなければ、事業用の土地や自社株を売りに出さざるを得なくなり、廃業の危機に直面します。

解決策:生前に土地を法人へ移転し、生命保険を活用する

この危機を乗り越えるための有効な打つ手が、「生前における事業用土地の法人移転」と「生命保険の活用」です。

① 社長名義の土地を法人へ売却する

社長名義の土地の上に、法人名義の建物が建っているケースは非常に多いです。この土地を放置しておくと、そのまま相続税や遺留分の争いの種になってしまいます。

そこで、相続が発生する前に法人が金融機関から融資を受け、社長個人から土地を買い取る(法人へ移転する)という対策をとります。

② 売買の際は「適正な時価」= 不動産鑑定評価が必須

社長個人と経営する法人の間での売買は、法律上「利益相反取引」に該当します。税務署から「不当に安い(または高い)価格で取引して税金を逃れようとしているのではないか」と厳しく目を光らされるポイントです。

そのため、取引の際は必ず「利益相反に関する取締役会議事録の作成」を行うとともに、客観的な時価の証明として「不動産鑑定評価」による適正な価格を算出しておく必要があります。

③ 土地の売却代金を生命保険に変えて相続対策に

土地を売却したことで、社長個人には法人が融資で調達したまとまった現金(土地の売却代金)が入ります。この現金をそのまま持っていると再び相続税の対象になるため、生命保険(死亡退職金など)に形を変えて活用します。

生命保険を活用することで、以下のような絶大なメリットが生まれます。

  • 遺産分割協議の対象外になる:生命保険金は受取人(長男)固有の財産となるため、次男や三男との分け合いの対象になりません。
  • 非課税枠が使える:生命保険には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。今回のケース(子供3人)であれば、1500万円分が非課税になります。

この対策でいくら節約できるのか?

生前に対策を実行することで、具体的に以下のような効果が期待できます。

  1. 確実な税金カット(約300万円の節約) 生命保険の非課税枠(1500万円)を活用することで、そのまま現金を残す場合に比べて約300万円の相続税を直接節約することが可能です。
  2. 将来の株価上昇を抑える 土地を法人が時価で購入することにより、一時的に法人の含み損益が調整され、自社株の評価額(株価)の上昇を緩やかにコントロールしやすくなります。
  3. プライスレスな「争族トラブル」の回避 長男に生命保険金として確実に現金を遺すことで、次男・三男から遺留分を請求されても、その保険金を原資にしてスムーズに代償金を支払うことができます。泥沼の親族訴訟に発展した場合の弁護士費用や、事業中断による損失(数百万円〜数千万円規模)を未然に防ぐ効果は計り知れません。

まとめ

事業承継の第一歩は、現状の財産を正しく把握すること、そして関係会社間売買において税務署に否認されない「言い訳の立たない適正な時価」を確定させることです。

※本コラムに記載されている税務や法律に関する記述は、一般的なシミュレーションに基づくものです。実際の相続税額や税務上の判断は、個別具体的な状況により異なりますので、必ず事前に税理士や税務署等の専門家にご相談ください。

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