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QGISによる公図・地図重ね合わせ実務備忘録

QGISによる公図・地図重ね合わせ実務備忘録

マニュアルの目的

公図(法務局XML / G空間情報センターのSHP.ZIP)と、国土地理院の航空写真・住宅地図をQGIS上で正確に重ね合わせ、現地把握が難しい農地や複数筆の調査・不動産調査(対象範囲の特定)を効率化するための初期設定およびトラブルシューティングの記録。

1. 緯度経度による「対象地の場所特定」と「複数筆・農地調査」への活用

地方の農地(田・畑・山林など)や、現地に明確な目印がない複数筆の土地を調査する際、公図(図面)だけを見て現地を特定するのは極めて困難である。

しかし、公図の右上や左下の枠外には、そのエリアを示す緯度経度(度・分・秒)が記載されている。この情報をQGISに打ち込むことで、「対象地が航空写真上のどこにあるのか」を一瞬で特定・テレポートさせることができ、農地の評価における対象不動産の正確な範囲特定に絶大な威力を発揮する。

2. QGISの初期設定と「世界測地系(WGS 84)」の準備

公図に記載されている緯度経度情報は、世界共通の「世界測地系(WGS 84 / EPSG:4326)」に基づいている。これらをQGISで直接扱えるようにプロジェクトを初期化する。

  1. QGISの起動と日本語化
    • ダウンロード後、メニューの「Settings」>「Options」>「General」の「User Interface Translation」を「Japanese(日本語)」に変更して再起動する。
  2. プロジェクトCRS(座標参照系)の変更
    • 画面右下の 「EPSG:xxxx」 (または「Coordinate」の隣の球体マーク)をクリック。
    • 「プロパティ」画面が開くので、上部の「フィルター」欄に 「4326」 と入力。
    • 候補に出る 「WGS 84 (EPSG:4326)」 を選択して「OK」をクリック。
    • ※画面右下が「EPSG:4326」になり、緯度経度によるテレポートの準備が整う。

3. 航空写真(背景地図)の追加手順

インターネット上の地理院地図(ラスタタイル)を背景として読み込む。

  1. 画面左側の「ブラウザパネル」にある 「XYZ Tiles」 を右クリック > 「新しい接続」 を選択。
  2. 設定画面で以下の通り入力する:
    • 名前地理院地図(任意)
    • URLhttps://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/seamlessphoto/{z}/{x}/{y}.jpg
    • 最小ズームレベル2 (初期値の0から2へ変更することでエラーを防ぐ)
    • 最大ズームレベル18
  3. すべて「OK」を押し、追加された「地理院地図」をダブルクリックまたはレイヤパネルにドラッグ&ドロップする。

4. 日本(長野県など対象地)を強制表示させる「魔法の操作」

背景地図を読み込んだ際、画面が真っ白になったり、世界地図の縮尺が大きすぎて日本を見失われたりした場合の強制復旧テクニック。

対策A:QuickMapServices(プラグイン)を使う方法

  1. メニューバー 「プラグイン」「プラグインの管理とインストール」 をクリック。
  2. 検索窓に 「QuickMapServices」 と入力し、インストールを実行。
  3. インストール後、メニューバーに 「ウェブ (Web)」 タブが出現。
  4. 「ウェブ」 > 「QuickMapServices」 > 「OSM」 > 「OSM Standard」 を読み込む。
  5. 世界地図が強制表示されるため、マウスホイールで対象エリア(長野県など)まで手動で拡大する。

対策B:新しい地図ビューと縮尺固定を使う方法

  1. メニューバー 「表示」 > 「新しい地図ビュー」 をクリック。
  2. 新しくポップアップしたウィンドウ(地図画面)の最下部にある「縮尺」の入力窓に 「1:50000」 (または 50000)と打ち込んでEnterキーを押す。
  3. これにより、カメラが現在設定されている座標の中心(日本周辺)まで一気に強制テレポートする。

5. 公図の緯度・経度を使って直接場所を特定する手順

公図の四隅(右上・左下など)に記載されている緯度・経度を使い、対象のエリアへジャンプする。

  1. QGIS画面の左下最下部にある 「検索 (Ctrl+K)」窓(ステータスバーの虫眼鏡マーク)を確認する。
  2. 検索窓に、 go 緯度,経度 の形式で数値を半角入力してEnterキーを押す。
    • 入力例:go 36.65,138.19 (※度分秒は十進法に換算するか、プラグイン等を利用して入力する)
  3. これにより、地図のカメラが指定した緯度経度のピンポイントへジャンプする。公図の右上・左下の座標でそれぞれ検索をかけることで、航空写真上における「その公図がカバーしている大まかな範囲・位置」がビジュアルで特定できるようになり、農地などの範囲特定に役立つ。

6. 日本の測量基準「平面直角座標系(第VIII系)」への完全固定

日本国内、特に長野県・新潟県・富山県・石川県・福井県の調査を行う場合、最終的な実務・測量成果は「平面直角座標系 第VIII系(EPSG:6676)」で管理しなければならない。「先に座標を8系に固定してから、データを読み込む」のが鉄則。

  1. 一度、現在のレイヤパネルにある地図をすべて右クリックで削除し、真っ白な状態(空)にする。
  2. メニューバー 「プロジェクト」 > 「プロパティ」 を開く。
  3. 左タブ 「CRS」 を選択し、フィルター欄に 「6676」 と入力。(地方によって平面直角座標系が異なる)
  4. 「JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS VIII (EPSG:6676)」 を選択し、「OK」を押す。
  5. 画面右下が 「EPSG:6676」 になったことを確認してから、再度「地理院地図」をダブルクリックして読み込む。
    • ※QGISの「オンザフライ変換」機能により、Webメルカトル(3857)の地理院地図が、自動的に第VIII系(6676)の形にリアルタイム変換されて正しく重なる。

7. 公図データの取得とインポート(法務局・G空間情報センター)

法務局の登記所備付地図データは毎年更新されるため、最新版を取得する。

G空間情報センターからまとめてダウンロードするコツ

  1. G空間情報センターにアクセスし、事前に ID登録(無料) を行う。
  2. 「登記所備付地図」と検索し、目的の市町村を探す(市町村ごとに分かれているため)。
  3. ダウンロードする際は、通常の .ZIP ではなく、 .SHP.ZIP(シェープファイル形式が同梱されたZIP) と書かれたものを選択すると、QGISでの取り扱いが劇的に楽になる。

地図XML(またはベクタデータ)の読込手順

  1. メニューバー 「レイヤ」 > 「レイヤの追加」 > 「ベクタレイヤの追加」 を選択。
  2. ソースの「…」ボタンを押し、ダウンロードした公図データ(XMLまたは展開したShapeファイル)を選択して「追加」を押す。
  3. 【最重要】「CRSの選択」画面が出たら、必ず「EPSG:6676(第VIII系)」を選択してOKを押す。
    • これにより、QGISが「この公図データは8系の数値データだ」と正しく認識し、航空写真の正しい位置に寸分違わず配置される。
  4. 画面に表示されない場合(位置ズレの修正)
    • 読み込んだ公図レイヤを右クリック > 「レイヤの範囲にズーム」 を実行。
    • それでも全く違う場所に飛ぶ場合は、その公図が公共座標を持たない「任意座標公図」である可能性が高い。その場合は「ジオリファレンサ」機能を用いて、公図に記載された四隅の緯度経度をピン(GCP)として打ち込むか、航空写真の道路や建物の角に合わせて手動で位置合わせ(ゴム引き変形)を行う。

8. 視覚化テクニック(透過・地番表示・ハイライト)

A. 公図を半透明にして下の航空写真を透かす手順

  1. レイヤパネルにある公図レイヤを ダブルクリック してプロパティを開く。
  2. 左メニューから 「シンボロジ」 タブを選択。
  3. 画面下部にある 「不透明度」 のスライダーを、現在の100%から 50%〜70% に下げる。
  4. 「適用」をクリックすると、公図の境界線の下にある実際の農地(畦道や作物の境界)や建物の形状が透けて見えるようになる。

B. すべての土地に「地番」を浮かび上がらせる手順

  1. 公図レイヤをダブルクリックしてプロパティを開く。
  2. 左メニューから 「ラベル」 タブを選択。
  3. 一番上のドロップダウンを「ラベルなし」から 「単一定義ラベル(Single Labels)」 に変更。
  4. 「値」 の項目で、属性データの中から 地番 (または chibanparcel_no )を選択する。
  5. 下の「テキスト」メニューで、フォントサイズを 6〜8 程度に小さくし、色を黒や目立つ色(赤など)に調整する。
  6. 「適用」を押すと、すべての筆の上に地番が自動表示される。

C. 選択(クリック)した土地だけ「住居表示」を出す式(条件付きラベル)

鑑定調査や農地確認の際、広大な公図の中から「今調べている対象不動産だけを目立たせ、選択した時だけ住居表示(属性情報)を表示させたい」という場合の高度な設定。

  1. ラベル設定画面(上記Bの画面)を開く。
  2. 「単一定義ラベル」に設定した状態で、画面右上にある 「値」の右隣にある「$\Sigma$(式)」ボタン をクリック。
  3. 「式文字列ビルダ」という入力画面が出るので、以下の式をそのまま半角で入力する:

SQL

CASE 
  WHEN is_selected() THEN "住居表示"
  ELSE "地番"
END

(※ "住居表示""地番" の部分は、お使いの公図データの属性フィールド名(例: juushochiban)に合わせて正確にダブルクォーテーションで囲んで差し替えてください)

【式の意味と仕組み】

  • is_selected() は、QGIS上でそのポリゴン(土地)が「選択ツール」でクリックされて黄色くハイライトされているかどうかを判定する関数。
  • クリックされて選択されている時(THEN):その土地だけ「住居表示(住所)」にラベルが切り替わる。
  • 選択されていない時(ELSE):普段通り「地番」だけが表示される。
  1. 入力したら「OK」を押し、プロパティ画面で「適用」を押す。
  2. 操作方法:QGISのツールバーにある「地物選択」ツール(黄色の四角いアイコン)を持ち、航空写真上の対象地をクリックして黄色くハイライトさせる。選択された土地だけがピンポイントで住所表示に切り替わり、周囲の土地は地番のままになるため、広大な農地群の中でも調査対象不動産の範囲が一目で判別・特定可能になる。

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