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松本市の中古マンション市場の概況

不動産市況
松本市の中古マンション市場の概況

― 価格帯・築年数・駅距離から見る取引傾向 ―

松本市は、長野県内でも中古マンション市場が比較的成立しやすい都市の一つです。県庁所在地である長野市と並び、都市機能、交通利便性、教育・医療機関、商業施設が一定程度集積しており、県内ではマンション需要を確認しやすいエリアといえます。

今回は、過去の中古マンション取引データをもとに、松本市における中古マンション市場の概況を整理しました。分析対象は、おおむね2015年以降の取引事例であり、価格帯、築年数、駅距離、住戸面積帯などの観点から、市場の特徴を見ていきます。

1 松本市の中古マンション市場はファミリー向けが中心

まず、価格帯別の取引件数を見ると、松本市の中古マンション市場では、ファミリー向け住戸の取引が中心となっていることが分かります。

資料上、ファミリー向け、すなわち専有面積55㎡超の住戸については、取引件数が540件、平均価格は約2,421万円、平均㎡単価は約319,409円/㎡となっています。

一方、カップル向け、すなわち専有面積55㎡以下の住戸については、取引件数が38件、平均価格は約854万円、平均㎡単価は約168,472円/㎡となっています。

この数字を見ると、松本市の中古マンション市場では、ワンルームや小規模住戸よりも、ファミリー向けの住戸が中心であることが分かります。これは、松本市が観光都市・商業都市であると同時に、居住地としての性格も強く、実需層による取得が多いことを示していると考えられます。

県全体と比較しても、松本市のファミリー向け中古マンションは、一定の取引件数を有しており、県内では中古マンション市場が形成されている都市といえます。

2 価格帯は2,000万円台から3,000万円台前半が中心

価格帯別の件数を見ると、松本市の中古マンションは、2,000万円台から3,000万円台前半に取引が集中しています。

特に、ファミリー向け住戸では、2,000万円から2,500万円の価格帯が111件、2,500万円から3,000万円が93件、3,000万円から3,500万円が98件となっており、このあたりが市場の中心価格帯と考えられます。

また、1,500万円から2,000万円の価格帯も65件、3,500万円から4,000万円の価格帯も57件あり、築年数や立地条件、専有面積、眺望、階数などによって、一定の価格差が生じていることが分かります。

一方、4,000万円を超える価格帯になると件数は少なくなります。4,000万円から4,500万円が9件、4,500万円から5,000万円が4件、5,000万円超の価格帯はさらに限定的です。

このことから、松本市の中古マンション市場では、2,000万円台から3,000万円台前半が最も流動性の高い価格帯であり、4,000万円を超えると需要者が限られやすい傾向があると考えられます。

鑑定評価や売却査定の実務では、単に「松本市の中古マンション」という大きな括りで見るのではなく、対象住戸が市場の中心価格帯に入るのか、それとも高価格帯に位置するのかを確認することが重要です。中心価格帯に近い物件は需要者層が広く、比較的流動性が期待しやすい一方、高価格帯の物件は、立地や築年数、グレードに強い説明力が必要になります。

3 築年数が浅いほど㎡単価は高い

築年数と㎡単価の関係を見ると、一般的な傾向として、築年数が浅いほど㎡単価が高く、築年数が経過するほど㎡単価が低下する傾向が確認できます。

築10年以内の住戸は、㎡単価40万円台から50万円台の取引も多く、条件の良い住戸では60万円/㎡を超える事例も見られます。特に近年の取引では、築浅物件の㎡単価が高く出ており、松本市においても築浅マンションに対する需要の強さがうかがえます。

一方、築20年以内、築30年以内、築30年超となるにつれて、㎡単価は徐々に低下する傾向があります。築20年以内では30万円/㎡台を中心とする事例が多く、築30年以内になると20万円/㎡台から30万円/㎡台の取引が増えてきます。築30年超では、さらに価格帯が下がり、10万円/㎡台から20万円/㎡台の事例も確認できます。

ただし、築年数と価格の関係は単純ではありません。

築年数が古くても、松本駅に近い、中心市街地に所在する、管理状態が良い、大規模修繕が適切に行われている、眺望や階数に優れる、といった条件があれば、比較的高い㎡単価で取引されることがあります。

反対に、築浅であっても、駅から遠い、専有面積が広すぎる、管理費・修繕積立金が高い、駐車場条件が悪い、周辺環境に難があるといった場合には、㎡単価が伸びにくいこともあります。

したがって、築年数は重要な価格形成要因ですが、築年数だけで価格を判断することはできません。管理状態、立地、階数、向き、面積、間取り、駐車場、修繕履歴などを総合的に見る必要があります。

4 近年は築浅物件の価格水準が上昇している可能性

築10年以内のマンションについて、2015年から2021年頃までの取引と、2021年以降の取引を比較すると、近年の方が㎡単価の水準が高くなっているように見えます。

2015年から2021年頃までの築10年以内の取引では、㎡単価30万円台から40万円台を中心とする事例が多く見られます。一方、2021年以降の築10年以内の取引では、40万円/㎡台から50万円/㎡台、さらに条件の良いものでは60万円/㎡を超える事例も確認できます。

この背景には、建築費の上昇、新築マンション価格の上昇、住宅ローン金利の低水準、中心市街地の利便性に対する評価の高まり、築浅物件の供給の少なさなどがあると考えられます。

特に地方都市では、新築マンションの供給が限られることが多く、築浅中古マンションが新築の代替として検討されることがあります。そのため、築浅で立地の良い中古マンションは、価格が下がりにくい傾向を示すことがあります。

松本市でも、築浅・駅近・中心部のマンションは、今後も一定の需要が見込まれると考えられます。

5 駅距離が遠くなるほど㎡単価は下がる傾向

駅距離と㎡単価の関係を見ると、駅から遠くなるほど㎡単価が下がる傾向が確認できます。

特に、築10年以内のマンションでは、駅距離と㎡単価の関係が比較的分かりやすく表れています。駅に近い物件では㎡単価50万円/㎡前後、またはそれ以上の事例も見られますが、駅から20分、30分と離れるにつれて、㎡単価は低下する傾向があります。

これは、松本市においても、駅距離が中古マンション価格に影響する重要な要因であることを示しています。

松本市の場合、松本駅周辺には商業施設、公共施設、飲食店、業務機能が集積しており、駅へのアクセスは生活利便性や資産性に直結しやすい要素です。また、県外からの移住者、単身赴任者、シニア層、共働き世帯などにとっても、駅や中心市街地への近さは重視されやすいと考えられます。

ただし、松本市は自動車利用も多い都市です。そのため、駅距離だけでなく、駐車場の有無、道路アクセス、買い物施設への距離、学校区、病院への距離なども重要です。

駅から多少離れていても、駐車場が確保されている、生活利便施設が近い、住環境が良い、専有面積が広いといった物件は、一定の需要を確保できる可能性があります。

6 築年数別に見る駅距離の影響

駅距離と㎡単価の関係を築年数別に見ると、築年数が浅い物件ほど全体的な価格水準が高く、築年数が古い物件ほど価格水準が低くなる傾向があります。

築10年以内の物件は、駅から多少距離があっても、築浅という強みが価格を支えているケースがあります。一方、築20年以内、築30年以内となるにつれて、駅距離の影響がより目立つようになります。

築年数が経過した物件では、建物の古さを補うだけの立地条件が必要になります。駅に近い、中心市街地に近い、管理状態が良い、リフォーム済みである、といった強みがなければ、㎡単価は下がりやすくなります。

反対に、築古であっても、駅近で立地が良い物件は、一定の価格を維持することがあります。これは、マンションの場合、土地の持分は小さいものの、立地の希少性が価格に反映されるためです。

7 松本市の中古マンション市場で重視される要素

今回の資料から、松本市の中古マンション価格を判断するうえで、特に重要な要素は次のとおりです。

第一に、築年数です。築浅物件は価格水準が高く、築年数が経過するほど㎡単価は低下する傾向があります。

第二に、駅距離です。松本駅や最寄駅への距離が近い物件ほど、㎡単価が高くなりやすい傾向があります。

第三に、専有面積です。松本市ではファミリー向け住戸の取引が中心であり、55㎡超の住戸が市場の主力になっています。

第四に、価格帯です。2,000万円台から3,000万円台前半の物件は取引件数が多く、流動性が比較的高い価格帯と考えられます。

第五に、管理状態です。今回の図表には直接表れにくい部分ですが、中古マンションでは管理状態が非常に重要です。管理費・修繕積立金の水準、大規模修繕の実施状況、管理組合の運営状況、共用部の維持管理状態などは、価格や将来の売却可能性に影響します。

特に築20年を超えるマンションでは、建物の老朽化だけでなく、修繕積立金の不足、大規模修繕の予定、設備更新の必要性などを確認する必要があります。

8 購入を検討する場合の注意点

松本市で中古マンションを購入する場合、価格だけで判断するのではなく、次の点を確認することが重要です。

まず、同じ価格でも、築年数、専有面積、駅距離、管理状態によって割安・割高の判断は変わります。

たとえば、3,000万円の物件であっても、築浅で駅近、管理状態が良い物件であれば妥当な価格といえる場合があります。一方、築年数が古く、駅から遠く、修繕積立金が不足している物件であれば、価格の見直しが必要になることもあります。

また、松本市では自動車利用が多いため、駐車場の有無は重要です。マンション本体の価格が適正に見えても、駐車場が確保できない場合、ファミリー層や郊外勤務の需要者にとっては使いにくい物件になる可能性があります。

さらに、冬季の道路状況、周辺の交通量、学校や病院へのアクセス、買い物施設への距離も確認したいところです。

中古マンションは、土地や戸建住宅と異なり、専有部分だけでなく共用部分や管理組合の状態も資産価値に影響します。購入前には、重要事項調査報告書、長期修繕計画、修繕積立金の残高、過去の大規模修繕履歴などを確認することが大切です。

9 売却を検討する場合の注意点

売却を検討する場合には、対象物件がどの市場帯に属するのかを把握することが重要です。

松本市では、2,000万円台から3,000万円台前半のファミリー向け中古マンションに取引が多く見られます。そのため、この価格帯に収まる物件は、比較的需要者に検討されやすいと考えられます。

一方、4,000万円を超える価格帯の中古マンションは、件数が少なく、需要者が限られやすい傾向があります。高価格帯で売却するためには、築浅、駅近、眺望、広い専有面積、駐車場、管理状態、ブランド性など、価格を裏付ける要素が必要になります。

また、築年数が経過している物件では、リフォームの有無も重要です。売却前に大規模なリフォームを行うべきか、現況のまま価格を抑えて売却すべきかは、物件ごとに判断が必要です。

リフォーム費用をかけても、その分がそのまま売却価格に上乗せできるとは限りません。売却戦略としては、周辺の競合物件や買主層を見ながら、費用対効果を検討する必要があります。

10 鑑定士として見た松本市中古マンション市場

今回の資料を見る限り、松本市の中古マンション市場は、県内では比較的取引が多く、一定の市場性が認められるエリアだと考えられます。

特に、ファミリー向け住戸の取引が多く、2,000万円台から3,000万円台前半を中心に市場が形成されています。また、築浅物件や駅近物件については、㎡単価が高く、需要の強さがうかがえます。

一方で、築年数が経過した物件や駅距離のある物件では、㎡単価が下がりやすくなっています。築古マンションでは、単に価格が安いというだけでなく、管理状態や修繕計画、将来の流動性を慎重に確認する必要があります。

松本市は、長野県内では都市機能が集積した地域であり、中古マンション需要が一定程度見込まれる都市です。しかし、首都圏のように広範なマンション需要がある市場とは異なり、物件の個別性によって価格差が出やすい市場でもあります。

そのため、松本市の中古マンションを評価する際には、平均価格や㎡単価だけでなく、築年数、駅距離、階数、向き、専有面積、駐車場、管理状態、周辺環境、取引時点の市況を総合的に確認することが重要です。

11 まとめ

松本市の中古マンション市場は、ファミリー向け住戸を中心に取引が形成されています。価格帯としては、2,000万円台から3,000万円台前半が中心であり、この価格帯は比較的流動性が高いと考えられます。

築年数については、築浅物件ほど㎡単価が高く、築年数が経過するほど㎡単価は低下する傾向があります。特に近年は、築浅物件の㎡単価が上昇している可能性があり、新築マンション価格の上昇や供給不足の影響も考えられます。

駅距離についても、駅に近い物件ほど㎡単価が高く、駅から離れるほど価格が下がる傾向が確認できます。ただし、松本市では自動車利用も多いため、駅距離だけでなく、駐車場、道路アクセス、生活利便施設への距離なども重要です。

中古マンションの価格は、単純に「築年数が浅いから高い」「駅から近いから高い」と決まるものではありません。実際には、立地、建物、管理、面積、階数、向き、駐車場、周辺環境などが複合的に影響します。

あおぎり不動産鑑定では、松本市をはじめとする長野県内の中古マンションについて、不動産鑑定評価、価格調査、売買・相続・財産評価に関するご相談に対応しています。

中古マンションの売却を検討している方、購入価格が妥当か確認したい方、相続財産としてマンションの価値を把握したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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