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令和8年分相続税路線価の概況

不動産市況
令和8年分相続税路線価の概況

― 長野県は3年連続上昇、軽井沢・白馬・野沢温泉の強さが鮮明に ―

令和8年7月1日、国税庁から令和8年分の相続税路線価が公表されました。

路線価とは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の評価額を算定するための基準となる価格です。毎年1月1日時点の価格として公表され、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額として示されます。

一般的に、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に設定されます。そのため、実際の売買価格そのものではありませんが、相続税・贈与税の評価、資産承継、相続対策、不動産の概況把握において重要な指標になります。

令和8年分の長野県の路線価を見ると、全体として上昇傾向が続いており、特に軽井沢町、白馬村、野沢温泉村といったリゾート地・観光地の強さが目立つ結果となりました。

1 長野県の標準宅地は3年連続で上昇

関東信越国税局が公表した長野県内の標準宅地の平均変動率は、継続地点4,818地点で前年比1.1%の上昇となりました。

前年は0.6%の上昇でしたので、上昇幅は拡大しています。長野県全体としては3年連続の上昇となり、地価の回復傾向が続いていることが分かります。

もっとも、県内全域が一律に上昇しているわけではありません。

長野市、松本市、軽井沢町、白馬村、野沢温泉村など、観光需要、移住需要、商業集積、交通利便性、再開発期待などを背景に上昇している地域がある一方で、人口減少や需要の弱い地域では、横ばい又は下落傾向にある地点もあります。

今回の路線価は、長野県内でも地域ごとの差がさらに明確になった結果といえます。

2 県内最高路線価は軽井沢町へ

今回、特に注目されたのは、県内の最高路線価です。

令和8年分の長野県内で最も路線価が高かったのは、佐久税務署管内の「軽井沢町軽井沢 旧軽井沢銀座通り」で、1㎡当たり32万円となりました。前年比では14.3%の上昇です。

これに続いたのが、長野税務署管内の「長野市南長野 長野駅前通り」で、1㎡当たり31万円、前年比5.1%の上昇でした。

これまで長野県内の最高路線価といえば、県庁所在地である長野市の長野駅前通りが中心でした。しかし、令和8年分では、軽井沢町の旧軽井沢銀座通りが長野駅前通りを上回りました。

記録の残る平成元年以降、軽井沢町の地点が長野市の地点を上回ったのは初めてとされています。

これは、軽井沢の不動産市場が、単なる県内の一観光地ではなく、首都圏富裕層やインバウンド需要、別荘・リゾート需要を取り込む全国的な高価格市場になっていることを示していると考えられます。

3 旧軽井沢銀座通りの上昇要因

旧軽井沢銀座通りは、軽井沢を代表する観光商業地です。

観光客の回遊性が高く、土産物店、飲食店、カフェ、ベーカリー、物販店などが集積しており、軽井沢らしい商業地としてのブランド力を有しています。

近年の軽井沢は、避暑地・別荘地としての伝統的な需要に加えて、首都圏からの二地域居住、富裕層の別荘需要、リゾートマンション需要、観光・飲食需要、インバウンド需要などが複合的に重なっています。

また、北陸新幹線による首都圏からのアクセスの良さも大きな強みです。東京から新幹線でアクセスしやすく、週末利用や長期滞在がしやすいことから、軽井沢の不動産需要は長野県内の一般的な地方都市とは異なる動きを示しています。

旧軽井沢銀座通りの路線価上昇は、こうした観光商業地としての希少性、ブランド力、収益性への期待が反映されたものといえます。

4 長野駅前通りも堅調に上昇

一方、長野市南長野の長野駅前通りも、1㎡当たり31万円、前年比5.1%上昇と堅調です。

長野駅前は、長野県の県庁所在地の中心商業地であり、業務、商業、宿泊、飲食、行政機能が集積するエリアです。

長野駅は北陸新幹線、信越本線、しなの鉄道、長野電鉄などの交通結節点であり、県内外からの人の流れが集まりやすい場所です。

軽井沢に県内最高路線価の座を譲ったとはいえ、長野駅前通りの路線価も上昇しており、県都の中心商業地としての地位が弱くなったわけではありません。

むしろ、長野市は行政・業務・生活・商業の中心地として安定した需要を有し、軽井沢は観光・リゾート・富裕層需要を背景に強く上昇している、と見るべきだと思います。

同じ長野県内の上昇でも、長野市と軽井沢町では需要の性質が異なります。

5 白馬村は3年連続で全国上昇率1位

令和8年分路線価で最も大きな注目を集めたのが、白馬村です。

大町税務署管内の「白馬村北城 村道和田野線」は、前年比32.7%の上昇となり、3年連続で全国1位の上昇率となりました。路線価は1㎡当たり6万5,000円です。

白馬村は、北アルプスの山岳景観とスキー場を有する国際的なリゾート地です。冬季のスキー・スノーボード需要に加え、夏季の登山、アウトドア、長期滞在需要もあります。

近年は、外国人観光客や海外資本の関心も高く、宿泊施設、飲食店、別荘、コンドミニアム、開発用地への需要が強まっています。

白馬村の地価上昇は、単に観光客が増えているというだけでなく、世界的なスノーリゾートとしての評価、開発期待、宿泊・滞在需要、投資需要が重なっていることが背景にあると考えられます。

ただし、上昇率が高い一方で、路線価の絶対水準は軽井沢や長野駅前に比べるとまだ低い水準です。これは、これまでの価格水準が相対的に低かったところに、急速な需要が入り、上昇率が大きく出ている面もあります。

6 野沢温泉村は33年ぶりに上昇、全国2位の上昇率

今回もう一つ注目されたのが、野沢温泉村です。

信濃中野税務署管内では、最高地点が「野沢温泉村豊郷 大湯通り」となり、1㎡当たり4万2,000円、前年比31.3%の上昇となりました。

野沢温泉村は、温泉街とスキー場が一体となった観光地です。冬季のスキー需要に加え、温泉、外湯、街歩き、宿泊、飲食などの観光資源を有しており、国内外の観光客から人気があります。

令和8年分では、野沢温泉村の地点が33年ぶりに上昇したとされ、しかも全国2位の上昇率となりました。

これは、白馬村と同様に、インバウンド需要、スノーリゾート需要、宿泊施設・飲食店需要、観光地としての再評価が路線価に反映され始めた結果といえます。

ただし、野沢温泉村も、白馬村と同じく地域の特性が非常に強い市場です。観光需要に支えられる一方で、季節変動、宿泊施設の稼働率、人手不足、建築費上昇、開発規制、既存温泉街の景観との調和など、注意すべき要素も多くあります。

7 県内10税務署管内の動き

長野県内10税務署管内の最高路線価を見ると、上昇が5地点、横ばいが3地点、下落が2地点となっています。

この結果から、長野県内の地価は全体として上昇傾向にあるものの、上昇している地域とそうでない地域の差があることが分かります。

軽井沢、白馬、野沢温泉のようなリゾート地・観光地は強い上昇を示しています。一方で、人口減少や商業集積の弱まりが見られる地域では、横ばい又は下落となる地点もあります。

路線価の見方として重要なのは、県全体の平均だけを見るのではなく、地域ごとの需要の中身を見ることです。

上昇している地域では、観光需要、富裕層需要、インバウンド、開発期待、住宅需要、商業需要など、何が価格を押し上げているのかを確認する必要があります。

反対に、下落している地域では、人口減少、空き店舗、中心市街地の衰退、郊外大型店への顧客流出、交通利便性の低下など、価格を押し下げる要因を確認する必要があります。

8 路線価上昇は相続税にも影響する

路線価は、相続税や贈与税の土地評価に使われます。

したがって、路線価が上昇すると、同じ土地を所有していても、相続税評価額が上がる可能性があります。

たとえば、路線価が1㎡当たり20万円から25万円に上昇した場合、200㎡の土地であれば、単純計算で次のようになります。

20万円 × 200㎡ = 4,000万円
25万円 × 200㎡ = 5,000万円

この場合、土地の評価額は1,000万円上昇します。

実際には、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正、二方路線影響加算、借地権割合、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例などにより評価額は変わりますが、路線価の上昇は相続税評価額に直接影響する重要な要素です。

特に軽井沢町、白馬村、野沢温泉村のように路線価が大きく上昇している地域では、これまで相続税の心配が少ないと思っていた土地でも、評価額が上がる可能性があります。

別荘地、観光地、商業地、宿泊施設用地を所有している方は、最新の路線価を確認しておくことが大切です。

9 相続対策では路線価だけでなく市場性も見る

相続税の評価では路線価が重要ですが、不動産の実際の価値を考える場合には、路線価だけでは不十分です。

たとえば、同じ路線価の土地であっても、形状が良い土地と悪い土地、道路付けが良い土地と悪い土地、傾斜がある土地と平坦な土地、建築しやすい土地と造成費がかかる土地では、市場での評価は異なります。

また、リゾート地では、眺望、道路の除雪状況、上下水道、管理別荘地かどうか、建築規制、自然保護、景観、隣接地の利用状況なども重要です。

商業地では、歩行者通行量、観光客の回遊性、店舗としての視認性、駐車場の有無、テナント需要、収益性などが価格に影響します。

相続対策では、相続税評価額を把握するだけでなく、その不動産が将来売れるのか、誰が使うのか、維持管理費はいくらかかるのか、相続人が共有して問題にならないか、といった実務的な視点も重要です。

10 軽井沢・白馬・野沢温泉の不動産を所有する方の注意点

今回の令和8年分路線価では、軽井沢、白馬、野沢温泉の強さが非常に目立ちました。

これらの地域に土地や建物を所有している方は、相続税評価額が上昇している可能性があります。

特に、次のような方は注意が必要です。

軽井沢町内に別荘地や商業地を所有している方。

旧軽井沢、中軽井沢、南ヶ丘、南原、千ヶ滝、追分などに土地を所有している方。

白馬村内に土地、宿泊施設、店舗、別荘、開発用地を所有している方。

野沢温泉村内に旅館、民宿、店舗、住宅、土地を所有している方。

長野県外に住んでいて、長野県内の不動産を相続する可能性がある方。

地価が上昇している地域では、相続発生時に思った以上の評価額になることがあります。

一方で、相続税評価額は上がっていても、実際に売却できる価格や売却までの期間は、個別の不動産によって大きく異なります。

そのため、相続対策としては、早めに不動産の概算評価を確認し、納税資金、売却可能性、共有回避、遺言書の作成などを検討しておくことが大切です。

11 令和8年路線価から見る長野県不動産市場

令和8年分の路線価から見える長野県不動産市場の特徴は、次の三つだと思います。

第一に、長野県全体としては緩やかな上昇基調にあることです。標準宅地の平均変動率は3年連続で上昇し、前年よりも上昇幅が拡大しました。

第二に、観光・リゾート地の上昇が目立つことです。軽井沢町は県内最高路線価となり、白馬村は3年連続で全国上昇率1位、野沢温泉村は全国2位の上昇率となりました。

第三に、地域差が大きいことです。県内10税務署管内の最高路線価では、上昇、横ばい、下落が混在しており、長野県内でも不動産市場の二極化が進んでいるといえます。

今後も、長野県内の不動産市場では、観光地、駅前商業地、住宅需要の強い地域、工業・物流需要のある地域では堅調な動きが続く可能性があります。

一方で、人口減少が進む地域、商業集積が弱い地域、空き家・空き店舗が増えている地域では、引き続き慎重な見方が必要です。

12 まとめ

令和8年分の相続税路線価では、長野県の標準宅地平均変動率が1.1%上昇し、3年連続で上昇しました。

県内最高路線価は、軽井沢町軽井沢の旧軽井沢銀座通りで1㎡当たり32万円となり、長野市南長野の長野駅前通りを上回りました。軽井沢町の地点が県内最高となったことは、長野県内の不動産市場におけるリゾート地需要の強さを象徴する出来事といえます。

また、白馬村北城の村道和田野線は前年比32.7%上昇し、3年連続で全国1位の上昇率となりました。野沢温泉村豊郷の大湯通りも31.3%上昇し、全国2位の上昇率となりました。

これらの結果から、令和8年分路線価では、軽井沢、白馬、野沢温泉といった長野県内のリゾート地・観光地の強さがはっきり表れたといえます。

一方で、路線価は相続税・贈与税の評価に使われる基準であり、実際の売買価格そのものではありません。また、同じ地域内でも、道路付け、形状、地勢、建築規制、利用状況、収益性、管理状態によって不動産の価値は大きく異なります。

相続税評価額の確認だけでなく、実際に売却できる価格、納税資金、相続人間での分割、将来の維持管理まで含めて考えることが大切です。

あおぎり不動産鑑定では、長野県内の土地、建物、別荘地、商業地、収益物件について、不動産鑑定評価、価格調査、相続対策、売却相談、物件調査等に対応しています。

令和8年分路線価の公表をきっかけに、ご所有不動産の相続税評価や市場価値を確認したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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