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令和8年度 富山県地価調査が公表されました

不動産市況
令和8年度 富山県地価調査が公表されました

全用途平均は34年ぶりに上昇。富山市中心部の商業地、舟橋村・立山町・射水市の住宅地に強さ

令和8年9月16日公表資料をもとに解説

令和8年9月16日、令和8年度富山県地価調査が公表されました。

地価調査は、都道府県が毎年7月1日時点の基準地について正常な価格を判定し、公表する制度です。令和8年の富山県では226地点を調査し、内訳は住宅地145地点、宅地見込地3地点、商業地68地点、工業地5地点、林地5地点となっています。また、1月1日時点の地価公示と同一地点である「共通地点」が13地点設定されています。

1 まずは全体像―全用途平均が34年ぶりにプラスへ

令和8年の富山県の平均変動率は、住宅地が▲0.2%、商業地が+0.6%、全用途平均が+0.1%となりました。

前年は住宅地▲0.3%、商業地+0.5%、全用途平均0.0%でしたので、住宅地では下落幅が縮小し、商業地では上昇幅が拡大しています。

特に注目したいのが全用途平均です。前年の横ばいから+0.1%となり、平成4年以来34年ぶりの上昇となりました。一方、住宅地は平成10年から29年連続の下落、商業地は令和4年から5年連続の上昇となっています。

富山県全体を「地価が上昇した」と一括りにするのは適切ではありません。住宅地はなおマイナスである一方、商業地の上昇が続き、その結果として全用途平均がわずかながらプラスに転じたという構造です。


2 市町村別―富山市・舟橋村に加えて射水市にも変化

市町村別にみると、地域差がより鮮明になります。

富山市は全用途平均+1.2%、住宅地+0.7%、商業地+2.1%となりました。全用途平均は13年連続、住宅地は11年連続、商業地は13年連続の上昇です。

舟橋村は住宅地・全用途平均ともに+1.9%で、13年連続の上昇となりました。

また、今回特に注目されるのが射水市です。前年は全用途平均▲0.4%、住宅地▲0.4%でしたが、令和8年は全用途平均+0.3%、住宅地+0.6%となり、いずれも初めて上昇に転じました。

立山町も特徴的です。全用途平均は+1.3%、住宅地+1.6%、商業地+0.8%となりました。

一方、入善町は商業地が前年▲0.9%から+2.2%へ大きく転じたものの、住宅地は▲2.1%です。同じ市町村であっても、住宅地と商業地で市場の動きが全く異なることが分かります。

地価を見る際には「○○市だから上がっている」と判断するのではなく、住宅需要、商業需要、駅や幹線道路への接近性、新規供給など、用途ごとに市場を分けて考える必要があります。


3 上昇地点は71地点から86地点へ増加

今回の調査では、林地を除く継続地点について、上昇地点が前年の71地点から86地点へ増えています。

一方、横ばい地点は63地点から47地点へ減少し、下落地点は85地点から88地点となりました。

つまり、県全体が一斉に上昇しているわけではなく、上昇する地点が増える一方で、下落が続く地点も相当数残っているという状況です。

住宅地では上昇地点が39地点から53地点へ増加しました。一方、下落地点も69地点あります。

商業地では上昇地点が27地点から29地点へ増加し、工業地では5地点のうち2地点が上昇、3地点が横ばいとなっています。

「県平均+0.1%」という数字だけでは見えない地域差が、この地点数からも分かります。


4 富山市の商業地―桜町2丁目が673,000円/㎡

商業地では、富山市中心部の強さが目立ちます。

県内商業地の最高価格は、富山市桜町2丁目で673,000円/㎡、前年比+6.0%でした。

続いて、

富山市牛島町 500,000円/㎡・+9.9%
富山市新富町2丁目 380,000円/㎡・+5.8%
富山市神通本町1丁目 295,000円/㎡・+7.3%
富山市荒町 275,000円/㎡・+1.9%

となっています。

ここで注目したいのは、価格の高さと上昇率の大きさは必ずしも一致しないということです。

桜町2丁目は673,000円/㎡で県内最高価格ですが、上昇率は+6.0%。これに対して牛島町は500,000円/㎡ですが、上昇率は+9.9%となっています。

富山駅周辺では、駅周辺整備等による繁華性の向上が地価に影響していることが、令和8年地価公示の県資料でも指摘されています。

不動産鑑定の視点では、こうした中心商業地を評価する場合、単に近隣の土地単価を見るだけではなく、駅への接近性、人流、店舗・ホテル・オフィス需要、再開発、容積率、土地利用の高度化可能性などを見る必要があります。


5 住宅地―最高価格は舟橋南町、奥田寿町は+3.7%

住宅地の最高価格は、富山市舟橋南町の133,000円/㎡、前年比+0.8%でした。22年連続の1位となっています。

続いて、

富山市鹿島町1丁目 122,000円/㎡・+0.8%
富山市奥田寿町 112,000円/㎡・+3.7%
富山市西中野町1丁目 91,100円/㎡・+2.9%
富山市花園町3丁目 86,300円/㎡・+3.0%

となっています。

住宅地の県平均は▲0.2%ですから、県全体としてはまだ下落が続いています。しかし、富山市中心部や利便性の高い住宅地では上昇地点もみられます。

つまり「富山県の住宅地は下落している」という県平均の数字と、「富山市中心部の住宅地は上昇している」という個別市場の動きは、同時に成立します。

不動産価格を考える場合、この違いは非常に重要です。


6 富山市だけではない―舟橋村・立山町・射水市

富山市以外にも住宅需要の強さが現れている地域があります。

舟橋村の住宅地平均は+1.9%。立山町は+1.6%、射水市は+0.6%、砺波市は+0.5%です。

一方で、入善町▲2.1%、朝日町▲1.7%、小矢部市▲1.4%、氷見市▲1.4%など、下落が続く地域もあります。

同じ富山県内でも、人口・世帯数の動き、通勤利便性、宅地供給、新築住宅需要、既存住宅地の熟成度などによって、市場環境は大きく異なります。

このため市町村平均は、その地域全体を把握するためには有用ですが、個々の土地価格を判断するためにはさらに細かな地域分析が必要になります。


7 地価公示から半年間でも住宅地・商業地とも+0.7%

地価調査には、1月1日時点の地価公示と同じ地点を評価する「共通地点」があります。

富山県では13地点が共通地点となっており、住宅地9地点、商業地4地点です。

令和8年1月1日から7月1日までの半年間では、住宅地が平均+0.7%、商業地も+0.7%、全用途平均も+0.7%となりました。

住宅地については、令和7年1月から7月、令和7年7月から令和8年1月、令和8年1月から7月と、いずれも+0.7%程度で推移しています。

一方、商業地はそれ以前の半年間が+0.9%で推移していましたが、令和8年1月から7月は+0.7%となりました。

年間変動率だけではなく、地価公示と地価調査の共通地点をつないで半年単位で見ることで、直近の市場の勢いが加速しているのか、減速しているのかを確認できます。


8 北陸3県で比較すると富山県はどうなのか

北陸3県を比較すると、令和8年度地価調査の全用途平均は、

富山県 +0.1%
石川県 +0.7%
福井県 ▲0.3%

となっています。

住宅地は富山県▲0.2%、石川県+0.3%、福井県▲0.4%。商業地は富山県+0.6%、石川県+1.6%、福井県▲0.1%です。

北陸平均では住宅地が0.0%、商業地+0.7%、全用途+0.2%です。

したがって富山県は、「北陸の中で特に急激な地価上昇が起きている」というよりも、長期間続いた下落局面から徐々に持ち直し、一部の強い地域が県平均を押し上げている段階と見るのが分かりやすいと思います。


9 「富山県+0.1%」よりも地域別・用途別に見る

今回の調査を見て最も重要なのは、県平均+0.1%という一つの数字だけで判断しないことです。

例えば富山市では全用途平均+1.2%ですが、高岡市は▲1.1%、魚津市▲1.1%、氷見市▲1.5%です。

さらに同じ市町村内でも、駅周辺商業地、郊外住宅地、工業地などでは市場参加者が異なります。

富山市中心部の商業地では、店舗、ホテル、事務所、投資家などが需要者となる可能性があります。

一方、一般住宅地では主な需要者は地域内の個人世帯です。

同じ「土地」であっても、誰が買う土地なのかによって価格形成の仕組みそのものが違うということです。


10 「基準地価格=所有している土地の価格」ではありません

地価調査で公表される基準地の標準価格は、その地点について自由な取引が行われた場合に通常成立すると認められる正常価格です。

近くに10万円/㎡の基準地があるからといって、ご所有の土地も10万円/㎡になるわけではありません。

住宅地であれば、地積、間口、奥行、形状、道路幅員、方位、駅距離、用途地域、上下水道、造成状態、災害リスクなどによって価格は変わります。

商業地であれば、さらに歩行者・車両交通量、店舗集積、容積率、駅への接近性、建物利用の可能性などが重要になります。

富山市中心部であっても、桜町、牛島町、新富町、荒町などで価格水準も上昇率も異なります。

地価公示・地価調査は非常に重要な指標ですが、所有不動産の価格を知るための「出発点」であって、そのまま答えになるものではありません。


11 まとめ―富山県の地価は「長期下落からの転換」が少しずつ見え始めた

令和8年度富山県地価調査では、住宅地▲0.2%、商業地+0.6%、全用途平均+0.1%となりました。

全用途平均がプラスとなるのは平成4年以来34年ぶりです。一方、住宅地は29年連続の下落であり、県全体が本格的な地価上昇局面に入ったと単純に考えることはできません。

今回の結果から見えるのは、富山市中心部の商業地、富山市・舟橋村・立山町・射水市などの住宅地と、下落が続く地域との違いが徐々に明確になっていることです。

特に富山市の商業地では、桜町2丁目が673,000円/㎡、牛島町が500,000円/㎡となり、牛島町では前年比+9.9%という大きな上昇がみられました。

一方、県内には住宅地・商業地ともに下落が続く地域もあります。

したがって、今回の地価調査を読む際には「富山県は+0.1%だった」という県平均だけではなく、地域、用途、需要者、駅への接近性、土地利用の可能性などを個別に見ることが重要です。

あおぎり不動産鑑定では、住宅地、商業地、工業地、収益物件、事業用地等について、不動産鑑定評価、価格調査、売却相談、物件調査等に対応しています。

地価公示や基準地価格と比較して、ご所有の土地・建物が現在どの程度の市場価値なのか確認したい場合は、お気軽にご相談ください。

追記:

少し個人的な話になりますが、富山県へは不動産の実査で私自身もよく足を運びます。どの地域にもそれぞれ魅力がありますが、なかでも私が特に気に入っているのが入善町です。海沿いでは潮風が心地よく、街並みもきれいで、富山湾と北アルプスに囲まれた開放的な景色が印象に残ります。入善海岸沿いは、入善漁港や松林などを眺めながら走れるシーサイドの環境で、仕事で訪れていても少し気分が変わる場所です。

そして富山県といえば、やはり食事も楽しみの一つです。県内各地で食べる寿司や海の幸もおいしく、実査の合間の楽しみになっています。仕事では土地の価格や市場性を見ていますが、実際にその土地を歩き、海や街並み、食、人の動きまで感じることで、数字だけでは分からない地域の魅力に気づくことがあります。入善町は、私にとってそうした魅力を特に感じる地域の一つです。

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