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長野県の令和8年地価調査が公表されました

コラム
長野県の令和8年地価調査が公表されました

― 長野県は住宅地・商業地が2年連続上昇、工業地は5年連続上昇。白馬・軽井沢と工業地需要の強さが鮮明に ―

令和8年9月16日、令和8年都道府県地価調査が公表されました。

地価調査とは、都道府県が毎年7月1日時点における基準地の正常な価格を調査し、公表する制度です。国が毎年1月1日時点で実施する「地価公示」とともに、一般の土地取引における価格の指標となります。令和8年の長野県では、県内77市町村、401地点について調査が実施されました。

全国的にも地価の上昇基調は続いていますが、国土交通省は「地域や用途により差がある」としています。特に長野県では、白馬・軽井沢などのリゾート地、長野・松本などの主要都市、さらに工業・物流系の土地で、それぞれ異なる理由による地価上昇が見られました。

1 長野県は住宅地・商業地・工業地のすべてで上昇

まず、長野県全体の結果を用途別に見ると、次のようになりました。

用途令和8年平均変動率上昇地点横ばい下落地点
住宅地+0.7%10536133
商業地+0.9%401257
工業地+1.8%1100
林地▲0.6%004
全用途(林地除く)+0.8%15648190

住宅地は前年の+0.2%から+0.7%へ、商業地は+0.4%から+0.9%へ上昇幅が拡大しました。住宅地・商業地はいずれも2年連続の上昇です。工業地は+1.8%で5年連続の上昇となり、しかも継続調査11地点すべてが上昇しました。

ここで注意したいのは、「県平均が上昇した=県内全域で土地価格が上がっている」わけではないことです。

林地を除く394の継続地点では、上昇156地点に対して下落190地点となっています。つまり、下落地点の方がまだ多いにもかかわらず、平均変動率は+0.8%となりました。

今回の地価調査は、需要の強い地域の上昇が大きくなる一方、人口減少等の影響を受ける地域では下落が続くという、長野県内の地域差・用途差が一段と鮮明になった結果と見ることができます。

2 住宅地 ― 上昇率では白馬、価格水準では軽井沢

住宅地で最も目を引くのは、白馬村です。

県内の住宅地で上昇率が高かった地点は次のとおりです。

順位基準地基準地価格前年比
1白馬(県)-2 白馬村北城・白馬村役場西17,600円/㎡+31.3%
2白馬(県)-3 白馬村北城8,000円/㎡+31.1%
3野沢温泉(県)-1 豊郷・秋葉地区30,700円/㎡+21.8%
4軽井沢(県)-5 追分27,500円/㎡+17.0%
5軽井沢(県)-3 千ヶ滝地区31,800円/㎡+15.2%

白馬(県)-2は前年比+31.3%で、住宅地の上昇率として長野県1位、全国でも2位となりました。国土交通省も今回の地価調査で特徴的な地点として白馬村を取り上げています。

一方で、「上昇率」と「土地価格の高さ」は別に考える必要があります。

住宅地の県内最高価格は、旧軽井沢別荘地の「軽井沢(県)-1」で、**210,000円/㎡、前年比+14.8%**です。第2位は長野市栗田の「長野(県)-17」で145,000円/㎡、第3位は南原別荘地の「軽井沢(県)-6」で130,000円/㎡でした。

白馬は上昇率が非常に大きいものの、絶対的な価格水準はまだ軽井沢より低い。反対に軽井沢は、すでに高い価格水準にありながら、なお10%を超える上昇地点が存在しています。

この違いは、それぞれの市場を考えるうえで重要です。

3 白馬村ではリゾート需要が「一般住宅地」にまで波及

白馬(県)-2は、白馬駅から約550m、村役場や小学校にも近い既存住宅地域です。いわゆるスキー場直近の高級リゾート物件そのものではありません。それにもかかわらず17,600円/㎡、+31.3%となりました。

鑑定評価書では、従来の地縁的な需要者に加え、リゾート需要の波及により、他地域からの転入者や外国人移住者の割合が上昇していることが指摘されています。また、高値取引が既存住宅地域にも広がり、従来の地元需要者による価格水準から乖離が生じつつあると分析されています。

つまり現在の白馬では、

「スキー場周辺のホテル・別荘用地だけが上がっている」のではなく、その需要が周辺の一般住宅地にも波及している

という点が大きな特徴です。

これは不動産鑑定の観点からも重要です。従来であれば地元居住者を主な需要者として分析していた住宅地域でも、外部資本、別荘需要、宿泊施設関係者、外国人居住者などを市場参加者として考慮する必要が出てきています。

4 軽井沢は高い価格水準からさらに上昇

一方、軽井沢(県)-1は旧軽井沢の高級別荘地域で、基準地価格は210,000円/㎡、前年比+14.8%です。

鑑定評価書では、需要者として首都圏を中心とする法人・富裕層が想定され、町内の高級別荘地は供給が非常に限定される一方、潜在需要が強いと分析されています。二地域居住などの実需に加え、インバウンド関連投資も町全体の地価を押し上げる要因として指摘されています。

市町村別の住宅地平均変動率でも、白馬村が**+25.6%、軽井沢町が+14.3%、御代田町が+14.0%**となっています。これに対して長野市は+0.7%、松本市は+1.4%、安曇野市は+2.2%です。

同じ「住宅地上昇」でも、長野市・松本市の生活利便性や住宅実需を背景とする市場と、軽井沢・白馬の広域的・リゾート的な需要を背景とする市場では、価格形成の構造が異なります。

5 商業地 ― 白馬駅前+35.6%、軽井沢銀座は県内最高価格へ

商業地では、住宅地以上にリゾート地の強さが表れました。

主な上昇地点を見ると、次のようになっています。

基準地基準地価格前年比地域
白馬(県)5-132,000円/㎡+35.6%白馬駅西
野沢温泉(県)5-150,800円/㎡+27.0%温泉街・中央ターミナル東
白馬(県)5-285,000円/㎡+25.9%エコーランド
軽井沢(県)5-3250,000円/㎡+20.2%軽井沢本通り
軽井沢(県)5-1435,000円/㎡+16.0%旧軽井沢銀座商店街

白馬(県)5-1は前年比+35.6%で、全国の商業地でも上昇率1位となりました。

白馬駅から約80mの駅前商業地で、鑑定評価書では、ホテル開発に伴う土地買収、旺盛なインバウンド需要、土地供給の不足などから需給が逼迫していると分析されています。駅前や国道沿いではホテル用地の取得や複合施設建設も進み、従来停滞していた駅前市場そのものが変化しています。

白馬の場合、32,000円/㎡という価格自体は県内最高水準ではありません。しかし、23,600円/㎡から32,000円/㎡へ1年間で上昇しており、**「これまで比較的低かった価格水準に、急速に外部需要が流入している市場」**として見ることができます。

6 旧軽井沢銀座が長野駅前を逆転

商業地の「価格水準」で最も大きなニュースは、旧軽井沢銀座です。

令和8年の商業地上位は次のようになりました。

順位基準地基準地価格前年比
1軽井沢(県)5-1 旧軽井沢銀座435,000円/㎡+16.0%
2長野(県)5-9 長野駅前392,000円/㎡+3.7%
3軽井沢(県)5-3 軽井沢本通り250,000円/㎡+20.2%
4松本(県)5-5 松本駅前249,000円/㎡+2.5%
5長野(県)5-11 中央通り222,000円/㎡+3.7%

旧軽井沢銀座の軽井沢(県)5-1は435,000円/㎡となり、これまで13年連続で県内商業地1位だった長野駅前を逆転しました。

鑑定評価書では、旧軽井沢銀座について、首都圏や海外からの観光客で賑わい、飲食需要が好調で、平日にも外国人を中心とした人通りが多くなっているとされています。需要者についても、小売・飲食業を営む首都圏の法人・個人などが想定されています。

これは象徴的な変化です。

県庁所在地の中心駅前である長野駅前と、全国的なリゾート・観光商業地である旧軽井沢銀座では、土地需要の性質が全く異なります。

長野駅前は行政、業務、宿泊、飲食、商業等の都市機能を背景とした安定的な中心商業地であるのに対し、軽井沢は観光、富裕層、別荘、インバウンド、飲食・物販など、県外・国外からの需要を強く取り込む市場です。

「軽井沢が長野駅前を上回った」という数字だけではなく、長野県内でも土地価格を形成する需要者が地域によって大きく異なっていることに注目すべきでしょう。

7 野沢温泉も住宅地+21.8%、商業地+27.0%

野沢温泉村も非常に強い動きを示しています。

住宅地の野沢温泉(県)-1は30,700円/㎡、+21.8%。商業地の野沢温泉(県)5-1は50,800円/㎡、+27.0%となりました。

商業地の基準地は、店舗・旅館・民宿等が建ち並ぶ温泉街の一角にあります。鑑定評価書では、新店舗の増加や空き家活用が見られるほか、外国人を中心として観光施設・宿泊施設用地の需給が逼迫し、高値取引も見られるとされています。

白馬が大規模なホテル・コンドミニアム開発を含む国際的スノーリゾート型の市場であるのに対し、野沢温泉は既存温泉街、旅館、民宿、飲食店などのストックを活用しながら需要が強まっている点にも違いがあります。

8 工業地は11地点すべて上昇 ― 観光地とは別の強さ

今回、白馬や軽井沢に隠れてしまいがちですが、実務上注目したいのが工業地です。

工業地の平均変動率は+1.8%で5年連続上昇し、継続調査11地点がすべて上昇しました。住宅地や商業地では下落地点も相当数ありますから、これはかなり特徴的な結果です。

具体例を見ると、次のような地点があります。

基準地所在地・地域基準地価格前年比
長野(県)9-1長野市大豆島・大豆島東工業団地22,800円/㎡+2.7%
長野(県)9-2長野市北長池・工場、倉庫等の工業地域31,000円/㎡+3.3%
松本(県)9-1松本市今井・工業団地22,500円/㎡+2.3%
松本(県)9-2松本市笹賀・流通業務地域37,500円/㎡+1.4%
千曲(県)9-1千曲市屋代・屋代工業団地20,100円/㎡+3.1%

長野(県)9-1では、生産拠点の国内回帰、物流需要、半導体関連投資などを背景として工場用地不足が顕在化していることや、エムウェーブ南地区で産業団地・交通インフラ整備が進んでいることが指摘されています。

長野(県)9-2についても、幹線道路や高速インターチェンジへの接近性が良く、倉庫を備えた営業所や物流関連事業所の立地が増加しています。31,000円/㎡、+3.3%となりました。

松本(県)9-1は22,500円/㎡、+2.3%。工場用地の供給が限定的である一方、製造業や物流施設への設備投資は比較的堅調と分析されています。松本(県)9-2も37,500円/㎡、+1.4%で、インターチェンジ等への接近条件に優れた流通業務地域として物流事業者等の需要が支えています。

千曲(県)9-1も20,100円/㎡、+3.1%です。更埴ICに近く、さらに周辺ではスマートICの設置や産業ゾーンを含む開発計画が進められており、交通利便性の高い工業地への需要が底堅いとされています。

つまり工業地については、リゾート地とは全く別のメカニズムで、**「高速道路へのアクセス」「工業・物流用地の供給不足」「企業の設備投資」「物流拠点需要」**などが地価を支えています。

9 一方で、下落が続く地域もある

平均変動率だけを見ていると、この部分を見落としやすくなります。

住宅地の下落率上位を見ると、山ノ内(県)-2が14,800円/㎡・▲4.5%、長野(県)-27(信州新町)が11,400円/㎡・▲3.4%、上松(県)-1が11,700円/㎡・▲3.3%、木曽町(県)-6が5,880円/㎡・▲3.3%となっています。

商業地でも、長野(県)5-13(信州新町)が20,100円/㎡・▲3.4%、麻績(県)5-1が14,900円/㎡・▲3.2%、南木曽(県)5-1が12,400円/㎡・▲3.1%、木曽町(県)5-1が25,300円/㎡・▲3.1%となりました。

ここが今回の地価調査を見るうえで非常に重要です。

白馬の住宅地が+31.3%上昇する同じ県内で、▲4%を超えて下落する住宅地も存在しています。

したがって、「長野県の地価は上昇している」と一括りにするのではなく、人口動態、観光需要、雇用、生活利便性、外部資本の流入、宅地供給、物流需要など、地域ごとの市場構造を見る必要があります。

10 地価公示から半年間でどのくらい動いたのか

地価調査には、1月1日時点の地価公示と同一地点になっている「共通地点」があります。

これを見ると、令和8年1月1日から7月1日までの直近半年間の地価変動を確認することができます。

共通地点R8.1.1R8.7.1半年間の変動率
軽井沢(県)-1195,000円/㎡210,000円/㎡+7.7%
軽井沢(県)-6118,000円/㎡130,000円/㎡+10.2%
長野(県)5-9385,000円/㎡392,000円/㎡+1.8%
松本(県)5-5245,000円/㎡249,000円/㎡+1.6%
軽井沢(県)5-3228,000円/㎡250,000円/㎡+9.6%

この比較はかなり興味深いところです。

例えば軽井沢(県)-6は、1月から7月までの半年だけで+10.2%です。軽井沢(県)5-3も+9.6%となっています。

一方、長野駅前や松本駅前も上昇していますが、そのペースは+1~2%程度です。

この半年間の動きを見ても、軽井沢の市場が県内主要都市とは異なる速度で動いていることが分かります。

地価公示と地価調査を別々の統計として見るのではなく、同一地点について時系列で追うことで、その地域の現在の地価の勢いをより把握しやすくなります。

11 「基準地価格=その地域の土地価格」ではありません

地価調査を見る際には、もう一つ重要な注意点があります。

基準地価格は、その地域を代表する土地について、不動産鑑定士が正常価格を判定したものです。

なお、基準地番号については、「5」が商業地、「9」が工業地、数字の付かないものが原則として住宅地を示します。

例えば、近くの基準地が10万円/㎡だからといって、所有している土地もそのまま10万円/㎡になるわけではありません。

住宅地であれば、接道条件、間口・奥行、形状、規模、駅距離、生活利便性、用途地域、上下水道、傾斜、災害リスクなどが価格に影響します。

軽井沢や白馬などのリゾート地では、これに加えて、眺望、自然環境、除雪・冬季アクセス、別荘地としての品等、上下水道、建築規制、景観規制、管理状況などの影響も大きくなります。

工業地では、単価だけでなく、画地規模、大型車両の進入可能性、インターチェンジまでの距離、幹線道路との関係、用途地域、造成の必要性、電力・上下水道などのインフラ、周辺土地利用等が重要です。

特に現在のように地域による価格差が大きくなっている局面では、公示価格や基準地価格に単純な倍率を掛けるだけでは、市場価値を適切に把握できないケースが増えています。

12 令和8年地価調査から見る長野県の不動産市場

今回の令和8年地価調査からは、長野県の不動産市場を単純に「上昇」「下落」の二つに分けることが難しくなっていることが分かります。

白馬では、国際的なリゾート需要やホテル・宿泊施設開発が一般住宅地にまで波及しています。

軽井沢では、すでに県内最高水準にある土地がさらに上昇し、旧軽井沢銀座は長野駅前を抜いて県内商業地の最高価格地点となりました。

長野市・松本市などでは、県内の中心都市としての住宅・商業需要が地価を支えています。

さらに工業地では、観光とは関係なく、物流、製造業、インターチェンジへの接近性、工業用地の供給不足などを背景として、調査したすべての地点で地価が上昇しました。

その一方で、中山間地域や需要の弱い地域では、住宅地・商業地とも引き続き地価下落が見られます。

したがって令和8年地価調査のポイントは、単に**「長野県平均が上昇した」ことではなく、「地域ごと、用途ごとに不動産市場の動きが大きく異なってきている」こと**にあると考えます。

13 まとめ

令和8年地価調査では、長野県の住宅地が+0.7%、商業地が+0.9%となり、いずれも2年連続で上昇しました。工業地は+1.8%で5年連続の上昇となり、継続調査11地点すべてが上昇しました。

住宅地では白馬(県)-2が+31.3%、商業地では白馬(県)5-1が+35.6%となるなど、白馬村の上昇が全国的にも目立ちました。一方、価格水準では旧軽井沢の住宅地が210,000円/㎡、旧軽井沢銀座の商業地が435,000円/㎡となり、軽井沢の高価格化も一段と進んでいます。

また、工業地では長野市、松本市、千曲市などで物流・製造業需要を背景とした上昇が続いています。

しかし、林地を除く394の継続地点のうち190地点は依然として下落しています。

今回の結果から見えるのは「長野県全体の一律的な地価上昇」ではなく、需要が集まる地域・用途と、需要が弱い地域との差がさらに大きくなっている長野県の不動産市場です。

不動産の価格を判断するためには、公示価格や基準地価格だけでなく、実際の取引事例、地域の需要者、土地の規模・形状・接道条件、法令上の規制、造成費、収益性などを総合的に分析する必要があります。

あおぎり不動産鑑定では、長野県内の住宅地、商業地、工業地、別荘地、観光・宿泊施設用地、収益物件等について、不動産鑑定評価、価格調査、売却相談、物件調査等に対応しています。

令和8年地価調査の公表をきっかけに、ご所有不動産の現在の市場価値を確認したい方は、お気軽にご相談ください。

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