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4.収益物件の価値は、家賃収入だけでは決まらない

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4.収益物件の価値は、家賃収入だけでは決まらない

収益物件の価値を考える際には、年間の収益と価格の関係を示す「利回り」という指標がよく使われます。

例えば、年間の家賃収入が600万円で、物件価格が1億円だった場合、単純な表面利回りは6%です。

計算式は次のとおりです。

表面利回り = 年間の家賃収入 ÷ 物件価格 × 100

この場合は、600万円 ÷ 1億円 × 100 = 6%となります。

しかし、表面利回りには、管理費や修繕費、固定資産税、保険料などの運営費用が反映されていません。

そこで、年間の家賃収入600万円から運営費用180万円を差し引くと、年間の純収益は420万円になります。この純収益を物件価格1億円で割ると、4.2%です。

このように、運営費用を差し引いた収益に着目することで、物件が実際にどの程度の収益を生み出しているかを把握しやすくなります。

ただし、収益物件の価値は、現在の利回りだけで決まるものではありません。将来の家賃収入、空室の発生、大規模修繕の費用、売却時の価格なども重要な要素です。

例えば、現在は安定した収益を得られていても、5年後に屋上防水や外壁の修繕に500万円が必要になるかもしれません。また、10年後には建物の築年数が進み、現在と同じ価格で売却できるとは限りません。

反対に、賃貸需要が強い地域であれば、修繕を行うことで収益を維持し、将来も一定の価格で売却できる可能性があります。

そのため、収益物件を評価する際には、現在の収益だけでなく、将来の収益や費用、売却価格まで含めて検討することが大切です。

5.今売却するべきか、それとも保有を続けるべきか

収益物件を所有している場合、売却と保有のどちらを選ぶべきでしょうか。

これは、すべての物件に共通する正解があるわけではありません。判断するためには、現在売却した場合に得られる金額と、保有を続けた場合に得られる収益や将来の売却代金を比較する必要があります。

ここでは、現在の物件価格を8,000万円、年間の家賃収入から運営費用を差し引いた純収益を420万円と仮定し、3つのシナリオを比較してみます。

ケース1:現在売却する場合

現在の売却価格が8,000万円であれば、売却によって将来の空室リスクや修繕費の負担を避け、売却代金を別の投資や生活資金に活用できます。

もちろん、実際に手元に残る金額は、仲介手数料などの売却費用、税金、借入金の残債などによって変わります。

ここでは比較を分かりやすくするため、売却費用や税金、借入金の残債を考慮する前の金額を8,000万円とします。

ケース2:5年後に500万円の修繕を行い、10年後に8,500万円で売却する場合

次に、今すぐ売却せず、10年間保有するケースを考えてみます。

前提条件は次のとおりです。

  • 現在の物件価格:8,000万円
  • 年間の純収益:420万円
  • 保有期間:10年間
  • 5年後の大規模修繕費:500万円
  • 10年後の売却価格:8,500万円

10年後の売却価格は、現在の想定価格8,000万円より500万円高い設定です。

このケースでは、保有期間中に家賃収入から運営費用を差し引いた純収益を得られる一方、5年後には500万円の修繕費が発生します。そして、10年後に8,500万円で売却する想定です。

ただし、将来のお金と現在のお金は同じ価値ではありません。将来受け取る家賃収入や売却代金を現在の価値に換算するには、「割引率」を用います。

ここでは、計算例として割引率を年4%と仮定します。年間の純収益420万円が10年間続き、各年末に受け取れるものとすると、家賃収入の現在価値は約3,407万円です。

また、5年後の修繕費500万円の現在価値は約411万円、10年後の売却代金8,500万円の現在価値は約5,746万円となります。

これらを合計すると、保有を続けた場合の収益と売却代金の現在価値は、約8,741万円です。

項目現在価値の試算
10年間の純収益約3,407万円
5年後の修繕費約▲411万円
10年後の売却代金約5,746万円
合計約8,741万円

この単純な試算では、現在売却する場合の8,000万円に対して、保有を続けた場合の現在価値は約741万円大きくなります。

ただし、これは「必ず保有したほうが有利」という意味ではありません。家賃収入が10年間一定で続き、修繕費が500万円に収まり、10年後に8,500万円で売却できるという前提に基づいた計算です。

実際には、空室の増加、賃料の下落、追加修繕、売却価格の下落などによって結果が変わります。

ケース3:家賃収入が減少し、10年後の売却価格も下がる場合

では、賃貸経営が想定どおりに進まなかった場合はどうでしょうか。

例えば、最初の5年間は年間純収益420万円を確保できても、6年目以降は空室の増加や賃料の下落によって、年間純収益が300万円に減少したとします。

さらに、5年後には500万円の修繕費が必要となり、10年後の売却価格も7,000万円に下がったと仮定します。

この場合、同じ割引率4%で計算すると、次のようになります。

項目現在価値の試算
最初の5年間の純収益約1,870万円
6年目から10年目の純収益約1,051万円
5年後の修繕費約▲411万円
10年後の売却代金約4,731万円
合計約7,241万円

このケースでは、保有を続けた場合の現在価値は約7,241万円となり、現在売却する場合の8,000万円を下回ります。

つまり、家賃収入の減少や将来の売却価格の下落が見込まれる場合には、今売却することが合理的な選択肢になる可能性があります。

なお、このケースでは、ケース2と比べて家賃収入と売却価格の前提を変更しています。将来の収益や価格をどのように想定するかによって、判断結果が大きく変わることが分かります。

3つのケースを比較すると

シナリオ保有を続けた場合の現在価値現在売却する場合の8,000万円との比較
ケース1—現在売却
ケース2:収益が安定約8,741万円保有継続の試算が約741万円上回る
ケース3:収益・売却価格が下落約7,241万円現在売却の試算が約759万円上回る

※ケース1の8,000万円は、現在売却する場合の比較基準です。上記の金額は説明用の試算であり、実際の鑑定評価額や売却後の手取り額を示すものではありません。

不動産鑑定士は、将来の収益と費用も考慮して価値を判断する

このように、収益物件の価値を判断する際には、現在の家賃収入や利回りだけを見るのでは不十分です。

保有を続けた場合に得られる収益、将来必要となる修繕費、売却時に見込まれる価格などを複数のシナリオに分けて分析し、それぞれの金額を現在価値に換算することで、売却と保有を比較することができます。

実際の不動産鑑定では、対象物件の賃料水準や空室率、経費、修繕計画、建物の状態、地域の賃貸需要、将来の市場動向などを踏まえて検討します。また、借入金の返済や税金、売却費用を考慮する場合には、物件そのものの収益価値と、所有者の手元に残る金額を分けて整理する必要があります。

「現在は収益が出ているから保有を続ける」「築年数が古くなったから売却する」といった単純な判断ではなく、将来の収益とリスクを具体的な数字に置き換えて比較することが、納得できる意思決定につながります。

収益物件の売却や保有について迷われている方は、現在の価値を把握するだけでなく、将来の収益や費用を踏まえた検討も大切です。

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