過去5年間の取引から見る中心価格帯と地区差
長野市中心市街地で住宅用地を探す場合、土地価格はどの程度を目安にすればよいのでしょうか。公開された不動産取引価格情報のうち、長野市中心市街地の住宅地102件を集計すると、取引の中心は1㎡当たり7万円から10万円程度にあり、平均・中央値はいずれも約8万円/㎡となりました。
| ● 中心価格帯は7万~10万円/㎡ ● 最多価格帯は8万円台 ● 10万円/㎡以上は栗田、鶴賀、若里などで目立つ ● 同じ中心部でも、接道・形状・面積によって価格差が大きい |
100㎡の土地なら約800万円、200㎡なら約1,600万円が単純換算の目安となります。ただし、実際の取引価格は、道路幅員、間口、土地の形状、用途地域、駅までの距離などによって大きく異なります。
この記事で分かること
本記事では、価格帯別の分布、10万円/㎡以上の取引が多い地区、地区別の中央値、最近の取引水準の変化を順に確認します。平均値だけでは捉えにくい中心市街地の価格差を、取引件数と中央値を併用して読み解きます。
中心価格帯は7万~10万円/㎡
価格帯別にみると、7万円以上10万円未満の取引は47件で、全体の約46%を占めます。特に8万円台が18件と最も多く、9万円台が15件、7万円台が14件でした。このため、長野市中心市街地の一般的な住宅地価格を把握する際は、まず7万~10万円/㎡を中心帯として考えるのが分かりやすいといえます。

図1 住宅地取引の価格帯別件数(対象102件)
平均と中央値はいずれも約8万円/㎡
対象取引の平均単価は約8.0万円/㎡、中央値は8.0万円/㎡でした。高額取引が平均を押し上げる可能性があるため、実感に近い代表値としては中央値も併せて確認することが重要です。
また、3万~4万円台や10万円/㎡以上にも一定数の取引があります。これは、中心市街地であっても土地の使いやすさや立地条件に差があり、一律の相場では説明できないことを示しています。
10万円/㎡を超える取引はどこで多いか
10万円/㎡以上の取引は、大字栗田が6件で最も多く、次いで大字鶴賀4件、若里3件、七瀬2件でした。中御所、大字中御所、大字南長野でも各1件が確認されています。

図2 10万円/㎡以上の取引件数
長野駅東口側の栗田で高価格取引が多い
大字栗田は長野駅東口に近く、戸建住宅だけでなく共同住宅用地としての需要も見込まれる地域です。対象10件のうち6件が10万円/㎡以上であり、地区の中央値も約10.5万円/㎡でした。中心市街地の中でも、高価格帯の取引が比較的継続して確認される地区といえます。
鶴賀・若里は利便性と個別条件の両方が影響
大字鶴賀は長野駅、市役所、権堂方面への接近性を備える一方、地区の範囲が広く、用途地域や街区、接道条件の違いも大きい地域です。そのため、取引価格の幅も広くなっています。若里も長野駅南側の利便性を有しますが、敷地規模や道路条件により単価差が生じています。
七瀬では高額取引が確認されていますが、対象は2件にとどまります。取引件数の少ない地区は、1件の高額事例によって平均が大きく動くため、地区全体が常に高いと断定せず、「高額取引が確認された」と表現するのが適切です。
地区別の中心価格と、同じ中心部でも差が出る理由

図3 地区別中央値(取引件数4件以上)
| 地区名 | 取引件数 | 中央値(万円/㎡) |
| 大字栗田 | 10 | 10.5 |
| 若里 | 16 | 8.2 |
| 大字鶴賀 | 25 | 8.0 |
| 大字中御所 | 4 | 7.5 |
| 中御所 | 11 | 7.4 |
| 大字南長野 | 13 | 6.7 |
| 大字長野 | 12 | 6.2 |
善光寺周辺が必ずしも高単価とは限らない
大字南長野や大字長野は、県庁や善光寺に近い中心部ですが、中央値は6万円台でした。既成市街地では、道路が狭い土地、間口が狭い土地、不整形地、規模の小さい土地なども含まれ、建物の配置や再建築のしやすさが価格に反映されやすくなります。
中心市街地の土地価格をみる際は、「駅から近いか」だけでなく、前面道路の幅員と種類、接道方向、間口、土地形状、面積、用途地域を確認することが重要です。利便性が高くても、利用しにくい土地は単価が抑えられる場合があります。
最近の取引水準と、相場を見る際の注意点

図4 年別の平均単価・中央値
年別では、2023年から2024年にかけて中央値が8万円台半ばとなり、比較的高い価格帯の取引が多く観測されました。一方、2025年は収録期間が限られ、件数も少ないため、通年の傾向として評価するには注意が必要です。
年ごとの平均は「地価上昇率」ではない
不動産取引価格情報は、毎年同じ土地を追跡した指数ではありません。各年に取引された土地の場所、面積、形状、接道条件が異なるため、平均や中央値の変化には、取引された物件構成の違いも含まれます。したがって、年次データは地価の上昇率を直接示すものではなく、その年にどの価格帯の成約が多かったかを把握する資料として用いるのが適切です。
まとめ
長野市中心市街地の住宅地取引は、7万~10万円/㎡に厚みがあり、中心的な水準は約8万円/㎡です。大字栗田、大字鶴賀、若里などでは10万円/㎡以上の取引が目立つ一方、善光寺周辺を含む既成市街地では、接道や土地形状などの個別条件によって6万円台の取引もみられます。
同じ「中心市街地」であっても、価格は駅距離だけでは決まりません。土地の使いやすさ、周辺環境、法令上の制約を含めて、個別に判断することが必要です。
注:本記事は、国土交通省の不動産取引価格情報を基に、提供データに収録された長野市中心市街地の住宅地取引102件を集計した市場概況である。個別の土地価格を示すものではなく、不動産鑑定評価又は価格査定を代替するものではない。
あおぎり不動産鑑定