県平均は31年連続下落も下落幅は縮小。妙高のリゾート開発、新潟駅周辺、工業地の強さが鮮明に
令和8年9月16日公表資料をもとに解説

図1 令和8年度 新潟県の用途別平均変動率
出典:新潟県「令和8年度新潟県地価調査のあらまし」今

1 まずは全体像- 県平均は▲0.6%、ただし下落幅は縮小
令和8年9月16日、令和8年度新潟県地価調査が公表されました。地価調査は、都道府県が毎年7月1日時点の基準地について正常な価格を判定・公表する制度で、国が1月1日時点で実施する地価公示とともに、一般の土地取引や不動産鑑定評価の重要な指標となります。
令和8年度は全国21,466地点、新潟県内では530地点を調査。県内の内訳は住宅地388地点、宅地見込地5地点、商業地106地点、工業地22地点、林地9地点です。県内530地点のうち527地点が前年からの継続地点でした。

全用途平均では平成8年から31年連続の下落です。住宅地は29年連続、商業地は34年連続で下落しています。ただし、住宅地は▲1.0%から▲0.8%へ、商業地は▲0.5%から▲0.3%へ下落幅が縮小し、工業地は+0.4%から+0.7%へ上昇幅が拡大しました。
価格が上昇した地点は108地点(前年92地点)、横ばいは70地点(前年64地点)に増えています。新潟県も、能登半島地震の被害が大きかった地域で回復基調がみられ、新潟市西区が前年の下落から上昇に転じたこと、妙高の一部地点で大幅な上昇が見られたことを特徴として挙げています。
2 住宅地- 上昇率1位・2位は妙高市
住宅地で最も特徴的だったのが妙高市です。県内の上昇率上位5地点のうち、1位と2位を妙高市が占めました。


妙高(県)-8は、妙高市大字関川字山柘谷内2275番87外。前年6,500円/㎡から7,700円/㎡へ上昇し、前年比+18.5%となりました。前年も+12.1%でしたから、2年続けて大きく上昇しています。
ここで重要なのは、この数字を「妙高市の住宅地が一律に18.5%上がった」と読まないことです。妙高市の住宅地平均は+1.2%で、同じ市内には下落地点もあります。地価調査上は住宅地であっても、関川・二俣周辺では別荘・リゾート利用、宿泊関連需要、県外・国外からの資本流入といった一般住宅地とは異なる市場参加者を意識する必要があります。
3 妙高の+18.5 %- 大規模リゾト開への期待が地に反映
新潟県は今回の調査結果で、妙高の一部地点の大幅上昇について「予定されている大規模開発への期待感」を明確に要因として挙げています。県では、ペイシャンスキャピタルグループ(PCG)が妙高エリア
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で進める大規模リゾート開発と連動した地域活性化を目的に「妙高杉ノ原マウンテンリゾート開発計画連携地域活性化協議会」を設置。令和8年6月にも第2回協議会が開かれ、開発の進捗や交通・観光、地域整備等の取組が共有されています。
不動産鑑定の視点では、こうした開発が進む地域では、従来の地元居住者だけでなく、ホテル・宿泊事業者、リゾート事業者、法人、別荘取得者など、需要者の範囲が広域化します。その結果、過去の地元取引だけを見ていると現在の市場価値を捉えにくくなる場合があります。

4 新潟市中央区- 妙高とは違う「都市居住」の強さ
妙高とは全く異なる理由で上昇しているのが新潟市中央区です。住宅地平均は+2.0%で県内の市区町村別では最も高く、江南区+1.5%、妙高市+1.2%、北区+1.1%、東区+0.9%と続きます。
中央区では、鐙1丁目が154,000円/㎡・+5.5%、鐙西2丁目が159,000円/㎡・+5.3%、上所上2丁目が130,000円/㎡・+4.8%。こちらはリゾート需要ではなく、新潟駅・中心市街地へのアクセス、生活利便性、住宅供給といった都市居住の需要が価格形成の中心です。
なお、住宅地の県内最高価格は水道町2丁目の172,000円/㎡ですが、前年比は0.0%。一方、鐙・鐙西は価格水準がそれより低くても5%を超えて上昇しています。「価格の高さ」と「上昇率の大きさ」は別に考える必要があります。
5 商業地- 新潟駅前・東大通が685,000円/㎡、+6.7%
商業地では新潟市中央区の強さがさらに鮮明です。上昇率上位5地点はすべて中央区となりました。

最も高かった中央(県)5-14・東大通1丁目は、642,000円/㎡から685,000円/㎡へ上昇し+6.7%。価格水準でも県内商業地1位です。国土交通省の鑑定評価書では、新潟駅周辺整備事業による利便性向上や、東大通沿いのオフィスビル建替え等により、発展的な推移と地価上昇の継続が予測されています。
同じ中央区でも、万代4丁目は550,000円/㎡・+1.5%、古町通6番町は403,000円/㎡・0.0%です。したがって「中央区の商業地」と一括りにせず、新潟駅周辺、万代、古町で人流、再開発、オフィス・店舗需要の違いを見る必要があります。
6 工業地は+0.7 %- 県平均が下落する中で上昇幅が拡大
工業地平均は+0.7%で、前年の+0.4%から上昇幅が拡大しました。主な上昇地点は、上越(県)9-1が13,300円/㎡・+3.9%、聖籠(県)9-1が18,700円/㎡・+2.7%、燕(県)9-1が18,500円/㎡・+2.2%、東(県)9-2が37,600円/㎡・+2.2%です。
工業地では住宅地や商業地とは異なり、インターチェンジ・幹線道路・港湾へのアクセス、大型車両の進入、画地規模、造成の要否、電力・上下水道等のインフラ、工業団地の供給余力などが価格形成に直結します。住宅地単価との単純比較ではなく、事業用地としての利用効率を分析することが重要です。
7 長期推移- 「全国は上昇、新潟県は下落縮小」という二つの流れ

全国の全用途平均は令和4年にプラスへ転じ、令和8年は+1.5%。これに対して新潟県は令和8年も▲0.6%ですが、令和2年の▲1.2%と比べると下落幅は縮小しています。新潟県は「全国と同じ方向に一斉に上昇している」のではなく、下落基調の中で強いエリアが点在し、その数が増えている局面と読む方が実態に近いでしょう。
8 地公示から半年間でどのくらい動いたか

地価調査には、1月1日時点の地価公示と同一地点を評価する「共通地点」があります。新潟県内では22地点(住宅地17、商業地5)が設定されており、1月1日から7月1日までの半年間の動きを確認できます。東大通1丁目は、令和8年1月1日の659,000円/㎡から7月1日の685,000円/㎡へ、半年で約+3.9%上昇しました。年間変動率だけでなく、共通地点を時系列で追うことで、足元の市場の勢いを把握しやすくなります。
9 一方で、下落が続く地域もある
上昇地点ばかりを見ると県全体が上昇局面に入ったように見えますが、実際には地域差が大きい状況です。住宅地の下落率上位では、柏崎(県)-7が16,900円/㎡・▲3.4%、妙高(県)-3が9,250円/㎡・▲3.3%、柏崎(県)-3が4,070円/㎡・▲3.3%、加茂(県)-1が14,800円/㎡・▲3.3%などとなっています。
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特に象徴的なのは、妙高市の中でも+18.5%の地点がある一方で▲3.3%の地点もあることです。「妙高だから上がる」のではなく、リゾート需要の影響を直接受ける地点か、一般住宅需要を中心とする地点かによって、市場構造そのものが違います。
10 「基準地価格=所有地の価格」ではありません
基準地の標準価格は、近隣地域における標準的な画地の正常価格です。同じ地域の土地でも、地積、形状、接道、道路幅員、駅距離、用途地域、上下水道、災害リスクなどの個別条件によって価格は変わります。新潟県の資料も、標準価格は近隣地域内のすべての土地の価格を画一的に示すものではないと明記しています。
妙高のリゾート地域であれば、スキー場・温泉・観光施設への距離、眺望、積雪・除雪、冬季アクセス、宿泊施設としての利用可能性、自然公園・景観・開発規制なども重要です。工業地であれば、画地規模、大型車の動線、IC・幹線道路への距離、造成費、インフラ容量などを見る必要があります。
少し個人的な話になりますが、私自身も妙高にはよく足を運びます。関川地区にある「MYOKO BASE CAMP(妙高市テレワーク研修交流施設)」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、会議スペースなどが整った施設です。建物もきれいで居心地がよく、仕事をすると不思議と集中できる場所だと感じています。
妙高の魅力は、大規模なリゾート投資やホテル開発といった「大きな動き」だけではありません。仕事をする場所があり、自然の中で過ごせて、少し足を伸ばせば温泉にも入れる。MYOKO BASE CAMPで仕事を片付けて、帰りに関温泉へ立ち寄る。そんな「働く・滞在する・休む」が近い距離でつながる環境そのものが、妙高という地域の価値の一つなのではないかと思います。
12.まとめ
令和8年度新潟県地価調査では、住宅地▲0.8%、商業地▲0.3%、全用途平均▲0.6%となり、県平均では地価下落が続きました。しかし下落幅は縮小し、工業地は+0.7%へ上昇幅を拡大しています。
住宅地では妙高(県)-8・関川が+18.5%、商業地では新潟駅前の東大通1丁目が685,000円/㎡・+6.7%。一方で同じ妙高市にも下落地点があり、県内各地でも下落が続く地域があります。
今回の結果から見えるのは「新潟県全体が上がった・下がった」という単純な構図ではなく、リゾート開発、都市居住、再開発、物流・工業需要など、地域ごと・用途ごとに異なる需要が地価を動かしている姿です。
あおぎり不動産鑑定では、住宅地、商業地、工業地、別荘地、観光・宿泊施設用地、収益物件等について、不動産鑑定評価、価格調査、売却相談、物件調査等に対応しています。公示価格や基準地価格と比べて、ご所有不動産の現在の市場価値がどの程度なのか確認したい方は、お気軽にご相談ください。
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