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建物のみの法人化で実現する「所得税・相続税・認知症」トリプル対策

コラム
建物のみの法人化で実現する「所得税・相続税・認知症」トリプル対策

高齢の親御様が個人名義でアパートやマンションなどの収益物件を保有し続けているケースは非常に多く見られます。しかし、そのまま放置していると「個人への富の集中による高い所得税」「将来の巨額な相続税」、そして近年特に深刻化している「認知症による賃賃経営の凍結リスク」という3つの壁にぶつかることになります。

本コラムでは、これらのリスクを一挙に解決する有効なアプローチである「合同会社を設立し、建物のみを法人へ移転するスキーム」について、具体的なシミュレーションや実務上の注意点を交えて解説します。

1. 個人保有の大家様が抱える「3つのリスク」

長年アパート経営を続けているお父様が、個人名義のまま経営を続けていると、以下のようなデメリットが生じます。

  • 所得税・住民税の負担増: 家賃収入がお父様個人に集中するため、総合課税による所得税の税率が跳ね上がります。
  • 相続税の原資の膨張: 高い税金を払った後に残った手元現金がお父様の口座に毎年積み上がるため、将来の相続税評価額(財産)をさらに押し上げてしまいます。
  • 認知症による「経営フリーズ」: お父様が認知症になり判断能力が低下すると、法律上、資産の譲渡や新規の賃貸借契約、大規模修繕の契約などができなくなります。成年後見人を立てれば運用は可能ですが、家庭裁判所の監督下に入るため、柔軟な不動産経営や親族のための資産活用は事実上ストップしてしまいます。

2. 解決策:合同会社を設立し「建物のみ」を移転する手法

これらの対策として極めて有効なのが、子供を主体とした「合同会社」を設立し、アパートの「建物のみ」をその法人に売却・移転する手法です。

なぜ「土地」ではなく「建物のみ」なのか?

土地まで法人に移転しようとすると、個人の譲渡所得税が非常に高額になる上、不動産取得税や登録免許税などの移転コストが膨大になります。 「建物のみ」の移転であれば、時価を低く抑えつつ、将来の家賃収入(所得)を丸ごと法人(=子供世代)へ移転させることが可能です。

実務の基本的なフロー

  1. 合同会社の設立: 設立費用は実費・手数料含め6万円程度から可能です(弊社にて設立を全面サポートいたします)。
  2. 銀行融資と売買の実行: 提携金融機関から法人名義で建物購入代金の融資を受け、売買契約と同日に融資代金を法人からお父様へ支払います。
  3. 適正な賃貸借関係の構築: 土地はお父様個人のままであるため、法人とお父様との間で「土地賃貸借契約書」を交わし、税務署へ「土地の無償返還に関する届出書」を提出します。これにより、借地権の贈与とみなされる税務リスクを完全に回避します。

3. 具体例で見るシミュレーションと効果

以下のようなアパートをモデルに、具体的な効果を見てみましょう。

【モデル物件の前提条件】

  • 年間家賃収入(賃貸収入): 600万円
  • 建物の固定資産税評価額: 400万円
  • 建物の帳簿価格(簿価): ほぼ0円(減価償却が進んでいる状態)
  • 建物の適正な譲渡価格(時価): 2,500万円 ※親族・同族間での売買となるため、税務署から「低額譲渡(贈与)」と指摘されないよう、当社鑑定部門による適正な不動産鑑定評価に基づいて譲渡価格を算定します。

① 所得税の分散・削減効果

日本の所得税は、所得が高くなればなるほど税率が上がる「過累進課税」を採用しています。

例えば、お父様の他の所得が高く、限界税率がすでに高い状態にある中で、年間200万円分の所得を、現在「課税所得330万円(税率20%ライン)」である息子様へ役員報酬などの形で移転・分散させたとします。

お父様の高い限界税率(例:所得税・住民税合わせて40%〜50%)が適用されていた200万円が、税率の低い子供世代の所得へとシフトするため、家族全体での所得税・住民税の総額を劇的に削減することができます。

② 相続税の抑制効果

建物が法人名義になるため、毎月入ってくる家賃収入は法人の口座、あるいは役員報酬を受け取る子供の口座に貯まります。お父様個人の財産(現金)がこれ以上増えなくなるため、将来の相続税の膨張に歯止めをかけることができます。

③ 早期の事業承継と認知症対策

副次的な、しかし非常に大きな効果として、子供への早期の事業承継が完了します。万が一、後にお父様が認知症になられたとしても、賃貸経営の主体は「法人(代表:子供)」に移っているため、アパートの管理、契約、将来の売却や修繕などが一切ストップすることなくスムーズに継続できます。 (※なお、物件の状況や家族構成によっては、もう一つの有力な選択肢である「家族信託」の活用を併用・検討することも可能です)

4. 実行における注意点とコスト

本スキームを実行するにあたっては、以下の点に注意し、事前に綿密な資金・事業計画を立てる必要があります。

  • 移転コストの発生: 売買代金のおおむね8%程度の初期コストを見込む必要があります。
    • 仲介手数料: 約3%(弊社宅建部門が対応)
    • 税金・登記費用: 不動産取得税、登録免許税、お父様側の譲渡所得税等で約3%
    • その他: 会社設立費用、不動産鑑定費用など
  • 金融機関との綿密な協力: 法人で建物の買受資金を調達するため、提携銀行との良好な関係と、一定の所得・属性に基づいた融資審査のクリアが必要不可欠です。
  • 使用貸借の回避と契約書の必須性: 親子間だからと「使用貸借(タダで土地を借りる)」の形にしてしまうと、税務上非常に不利な扱いを受けるリスクがあります。弊社宅建部門が主導し、税務署を納得させる適正な土地賃貸借契約書の作成と届出を確実に行います。

結び

建物のみの法人化は、税金対策と将来の安心(認知症対策)を同時に手に入れられる極めて合理的な一手です。ただし、税務署や金融機関とのトラブルを防ぐためには、「不動産鑑定による適正な価格算定」と「不備のない宅建実務・契約書作成」の双方が欠かせません。

本コラムでご紹介した事例やシミュレーションは、一般的な税制・仕組みを解説したものです。実際の税務申告や個別具体的な税効果の試算、および税務判断は、税理士法により税理士のみに行うことが認められています。

弊社(あおぎり不動産鑑定)では、お客様の個別具体的な税務相談やスキームの最終チェックにあたり、提携する経験豊富な税理士などの各専門家と緊密に連携してプロジェクトを推進いたします。

弊社では、【鑑定部門】によるエビデンス(鑑定評価書)の作成から、【宅建部門】による契約書作成・会社設立サポートまで、ワンストップで大家様の資産をお守りいたします。どうぞお気軽にご相談ください。

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