土地の価格を調べるとき、多くの方は「近所の土地が1坪80万円で売れたから、自分の土地も同じくらいだろう」と考えるかもしれません。
しかし、同じ地域にあり、面積もほぼ同じ土地であっても、実際の価格には差が生じることがあります。
その理由の一つが、土地の形状や道路との接し方です。
例えば、道路に広く接した整形地と、細い通路の奥に宅地が広がる旗竿地。あるいは、道路に一面だけ接する土地と、二つの道路に接する角地。それぞれ、建物の配置、駐車場の確保、日当たり、使いやすさなどが異なります。
では、こうした違いを不動産鑑定士はどのように分析し、価格に反映するのでしょうか。
今回は、具体的な数値例を使いながら、土地の価値を判断する際の考え方を解説します。
1.旗竿地は、通路部分と奥の宅地部分を分けて考える
旗竿地とは、道路に接する細長い通路部分と、その奥に広がる宅地部分からなる土地です。道路から見ると、竿の先に旗が付いたような形をしていることから、この名前で呼ばれます。
旗竿地だからといって、必ず大幅に価格が下がるわけではありません。通路の幅、長さ、奥の宅地部分の形状、建築計画、周辺の需要などによって評価は変わります。
具体例:面積は同じでも、使い勝手が違う2つの土地
次の2つの土地を比較してみましょう。
- A土地:道路に間口10mで接する、面積200㎡の整形地
- B土地:幅2m・長さ15mの通路部分と、その奥に広がる宅地部分からなる、面積200㎡の旗竿地
B土地の通路部分は、幅2m×長さ15m=30㎡です。したがって、奥の宅地部分は概算で170㎡となります。
A土地は、道路に広く接しているため、建物や駐車場の配置を比較的自由に計画できます。
一方、B土地では、通路部分が道路から奥の宅地までの出入りに使われます。通路の幅や長さによっては、車の出入り、駐車場の設置、建築工事の際の搬入などに制約が生じることがあります。
この違いが、土地の価格に影響する可能性があります。
通路部分と宅地部分の価値を分けて検討する
不動産鑑定では、旗竿地全体を一律に評価するだけでなく、必要に応じて通路部分と奥の宅地部分に分け、それぞれの利用価値を検討する方法が考えられます。
例えば、周辺の標準的な整形地の価格を1㎡当たり20万円と仮定します。
以下は、評価の考え方を示すための仮定による計算例です。
| 区分 | 面積 | 仮定する単価 | 試算額 |
|---|---|---|---|
| 通路部分 | 30㎡ | 8万円/㎡ | 240万円 |
| 奥の宅地部分 | 170㎡ | 18万円/㎡ | 3,060万円 |
| 合計 | 200㎡ | — | 3,300万円 |
この例では、通路部分は標準的な整形地の単価の40%、奥の宅地部分は90%として計算しています。
ただし、この40%や90%は説明用に設定した仮定であり、実際の鑑定評価で一律に使う補正率ではありません。
通路部分は、単独で建物を建てるための土地として利用できるとは限らず、主として奥の宅地への出入りに使われます。そのため、通常の宅地と同じ単価で評価することが適切でない場合があります。
一方、奥の宅地部分についても、通路が長いことで建物の配置や採光、通風、駐車場の計画などに影響が生じることがあります。
そのため、単純に「通路部分は40%、奥の部分は90%」と決めるのではなく、土地全体としてどのような建物が建てられ、どの程度使いやすいかを検討することが重要です。
また、通路部分と宅地部分を分けて計算した結果を、そのまま最終的な鑑定評価額とするとは限りません。土地全体の一体的な利用価値や市場での取引傾向も確認する必要があります。
2.間口が狭い土地は、なぜ価格に影響するのか
土地の価格を左右するのは、面積だけではありません。道路に接している幅、すなわち「間口」も重要な要素です。
例えば、面積が150㎡の土地が2つあったとします。
- A土地:間口10m、奥行15m
- B土地:間口5m、奥行30m
どちらも面積は150㎡ですが、土地の形状は大きく異なります。
A土地は間口に余裕があるため、建物の配置や駐車スペースを計画しやすい可能性があります。
一方、B土地は間口が狭く奥行が長いため、建物の配置によっては採光や通風を確保しにくくなったり、駐車場の設置に制約が生じたりする可能性があります。
ただし、間口が狭い土地でも、奥行や周辺環境、建築可能な建物の種類によっては十分に利用できる場合があります。重要なのは、間口の数字だけで判断しないことです。
公的な評価基準では、間口や形状の違いをどう扱うのか
参考になるのが、固定資産税や相続税の土地評価における補正の考え方です。
国税庁の「宅地のその他の評価方法」では、間口が狭小な宅地について、奥行価格補正率に加えて間口狭小補正率などを用いて評価する方法が説明されています。また、不整形地についても、形状に応じた補正を行う仕組みがあります。
参考:国税庁「宅地のその他の評価方法」
https://www.keisan.nta.go.jp/r7yokuaru_sp/zoyozei/zaisanhyoka/takuchihyoka/scid2002.html
このような評価方法は、間口や形状によって土地の利用価値が変わることを、一定のルールに基づいて数値化する考え方です。
ただし、ここで注意したいのは、相続税評価や固定資産税評価の補正率を、そのまま市場での売買価格の減価率として使うことはできないという点です。
税務上の評価と、不動産鑑定における正常な市場価値の判断では、評価の目的や前提が異なります。
実際の売買価格を考える際には、周辺で取引された類似土地との比較や、建築計画上の制約、買主がどのように土地を利用するかなどを総合的に検討します。
3.埼玉県の公表資料から考える「不整形地の評価」
埼玉県の公表資料にも、土地評価の考え方を理解するうえで参考になる資料があります。
埼玉県越谷市が公表した公有財産の処分に関する資料では、「越谷市過小宅地等処分価格算定要領」の補正率を用いた計算例が示されています。
その例では、想定整形地の面積が約3,678.54㎡であるのに対して、対象となる不整形地の面積が19.88㎡であり、かげ地割合を約99%と算出しています。そのうえで、同要領の不整形地補正率表から補正率0.70を適用し、基本価格17,000円/㎡に補正率と面積を乗じて処分価格を試算しています。
計算式は次のとおりです。
17,000円/㎡ × 0.70 × 19.88㎡ = 236,572円
この例は、面積が小さく、形状上の制約が大きい土地について、補正率を用いて価格を算定した実例です。
ただし、これは越谷市の特定の公有財産処分に関する算定例であり、一般の住宅地や旗竿地すべてに補正率0.70を適用するという意味ではありません。
また、埼玉県が公表する固定資産税の評価方法の説明によれば、固定資産税の土地評価は、総務大臣が定める固定資産評価基準に基づき、市町村長が行うものです。評価の具体的な取り扱いは、適用される基準や対象となる土地によって異なります。
参考:埼玉県「埼玉県固定資産評価審議会」
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0107/zeisei/koteishin.html
このような公的資料を参考にすることで、土地の形状による利用上の制約を、感覚だけでなく、一定の基準に沿って考えることができます。
ただし、不動産鑑定士が実際の市場価値を判断する場合には、公的評価の補正率を機械的に当てはめるのではなく、対象地の個別性と市場の実態を確認することが重要です。
4.角地は中間画地より高いのか
角地とは、二つの道路が交差する部分に位置し、通常は二方向の道路に接している土地です。
一般的には、角地には次のような利点があります。
- 二方向から出入りできる場合がある
- 建物の配置や玄関の位置を選びやすい
- 日当たりや通風を確保しやすい場合がある
- 店舗や事務所などでは視認性が高まる場合がある
そのため、条件が同程度であれば、角地が中間画地より高く評価されることがあります。
しかし、角地だから必ず高いとは限りません。
例えば、交通量の多い道路に面していて騒音が大きい土地、歩行者や車両の通行が多く落ち着いた住環境を確保しにくい土地、隅切りなどによって利用できる部分が制限される土地では、角地の利点が十分に価格に反映されない場合もあります。
角地と中間画地を比較する具体例
次の2つの土地を考えてみます。
- A土地:面積150㎡、住宅街の中間画地
- B土地:面積150㎡、同じ住宅街の角地
両土地の周辺環境や駅からの距離、土地面積などが同程度であれば、角地の利点がどの程度価格に反映されているかを比較することができます。
例えば、中間画地の価格を3,000万円と仮定し、角地の価格が3,150万円であれば、差額は150万円、比率は5%です。
この場合、角地の価格は中間画地より5%高いことになります。
ただし、この5%は説明のために設定した仮定であり、角地に一律に適用できる補正率ではありません。
実際の鑑定評価では、近隣の角地と中間画地の取引事例を比較し、道路条件や周辺環境などの違いを調整して、角地の利点が市場でどの程度評価されているかを検討します。
5.不動産鑑定士は、収益性からも土地の価値を検証する
角地と中間画地の価値の違いを分析する際には、周辺の取引事例を比較する方法だけでなく、その土地にどのような建物を建て、どの程度の収益を得られるかという観点から検討することもあります。
例えば、店舗や賃貸住宅を建築できる地域では、土地の形状や道路条件によって、建物の配置、賃貸面積、駐車場の確保、入居者の動線などが変わる可能性があります。
そこで、土地ごとに合理的な建築計画を想定し、収益性の違いを比較します。
具体例:同じ150㎡の土地でも、建築計画が変わる
仮に、同じ地域にある150㎡の土地について、次のような計画を想定します。
A土地:中間画地
- 賃貸住宅を建築
- 想定年間賃料収入:480万円
- 空室損失や運営費用など:年間120万円
- 想定純収益:年間360万円
B土地:角地
- 道路条件を活用した賃貸住宅を建築
- 想定年間賃料収入:500万円
- 空室損失や運営費用など:年間125万円
- 想定純収益:年間375万円
この仮定では、角地の純収益は年間15万円多くなります。
仮に、両土地について同じ還元利回り4.5%を適用して単純に収益価格を試算すると、次のようになります。
- A土地の収益価格の参考値:360万円 ÷ 4.5% = 8,000万円
- B土地の収益価格の参考値:375万円 ÷ 4.5% ≒ 8,333万円
この単純計算では、収益価格の差は約333万円となります。
ただし、この計算は、土地の価格そのものを直接算定したものではありません。建物の建築費やその他の費用を考慮していないため、土地価格の比較にそのまま使うことはできません。
実際には、想定建物の建築費、設計費、資金調達費用、維持管理費、空室リスク、事業期間などを考慮する必要があります。また、土地と建物を一体とした収益価格を求めたうえで、建物に帰属する価値や必要な費用などを検討し、土地の価値を分析する方法もあります。
さらに、角地であっても、建物の配置が制限されたり、建築可能な床面積が増えなかったりする場合には、収益性が必ずしも高まるとは限りません。
つまり、角地の価値は、単に道路が二方向にあるという理由だけで決まるものではありません。その土地を使ってどのような事業や建築が可能であり、市場参加者がその利点をどの程度評価するかを検討することが重要です。
6.土地の価格は「面積×近隣の坪単価」だけでは決まらない
ここまで見てきたように、土地の価値にはさまざまな要素が関係します。
- 道路に接する間口の広さ
- 土地の形状や奥行
- 旗竿地における通路部分の長さや幅
- 建物や駐車場の配置のしやすさ
- 日当たり、通風、騒音などの周辺環境
- 建築できる建物の種類や規模
- その地域における買主の需要
- 賃貸住宅や店舗などとして利用した場合の収益性
これらの条件は、土地ごとに異なります。
例えば、旗竿地でも、通路が短く、奥の宅地部分が整った形状で、十分な駐車スペースを確保できる土地であれば、利用上の制約は比較的小さいかもしれません。
一方、面積が広くても、間口が極端に狭く、建物の配置が難しい土地では、面積に見合う利用価値を確保できないことがあります。
また、角地についても、道路条件や建築計画によって利点の程度が異なるため、単純な補正率だけでは価値を判断できません。
不動産鑑定士は、周辺の取引事例や公的な評価資料を参考にしながら、対象となる土地の個別的な条件を分析し、市場においてどの程度の価格が形成されるかを検討します。
7.所有している土地の価値を知りたい方へ
土地の売却や相続を考える際には、面積や近隣の坪単価だけで判断せず、土地の形状や道路との接し方まで含めて価値を把握することが大切です。
特に、旗竿地、間口の狭い土地、角地、変形地などは、一般的な整形地と同じ考え方だけでは評価が難しい場合があります。
「自分の土地は、近隣の整形地と比べてどのくらい価値が違うのだろうか」
「相続人の間で土地を分ける場合、形状による価値の差をどのように考えればよいのだろうか」
「売却する前に、土地の適正な価値を確認しておきたい」
こうした疑問がある場合には、土地の形状や利用状況を踏まえて、専門家に評価を相談することも一つの方法です。
あおぎり不動産鑑定では、土地の個別的な条件や市場の状況を踏まえ、不動産の価値を多角的に検討することを大切にしています。
土地の価格は、面積だけでは決まりません。その土地がどのように利用できるのか、そして市場でどのように評価されるのか。 その両面から考えることが、適切な価値判断につながります。
あおぎり不動産鑑定