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その自宅、本当に今売る必要がありますか? 70歳から考える不動産と老後のお金の話

コラム
その自宅、本当に今売る必要がありますか? 70歳から考える不動産と老後のお金の話

「自宅を売ろうかと考えているのですが、いくらくらいで売れるのでしょうか?」

不動産鑑定士として、お客様からこのようなご相談をいただくことがあります。

ご自宅の売却を考える理由は、人それぞれです。

子どもが独立して家が広すぎると感じるようになった方、老後の生活資金に不安を感じている方、相続のことを考えて不動産を整理しておきたい方。あるいは、長年住み慣れた家を離れ、便利なマンションや高齢者向け住宅への住み替えを考えている方もいらっしゃいます。

そうしたご相談を受けたとき、私たちが最初に考えるのは、単純に「この家はいくらで売れるか」ということだけではありません。

「そもそも、なぜ売りたいのか。本当に今、売る必要があるのか」

まずは、ここから一緒に考えていきます。

不動産の売却は、大きなお金が動く人生の重要な選択です。だからこそ、売却価格だけで判断するのではなく、お客様の資産全体や今後の生活まで見据えて考えることが大切だと思っています。

今回は、70歳の方から自宅の売却についてご相談を受けた場合を想定し、2つの事例をご紹介します。

※ 以下の金額や人物設定は、考え方を説明するための架空の事例です。実際の判断は、それぞれの資産状況や生活設計によって異なります。

事例1 70歳・自宅の価値は3,000万円。今のうちに住み替えを考えたいAさん

Aさんは70歳。長年住み続けてきた戸建て住宅で、現在は夫婦2人で暮らしています。

子どもたちは独立し、家の中には使っていない部屋も増えました。庭の手入れや建物の維持管理も、以前より負担に感じるようになっています。

そこでAさんは、「元気なうちに住み替えをしたほうがよいのではないか」と考え、自宅の売却について相談にいらっしゃいました。

まずは、Aさんの資産状況を整理してみます。

Aさんの資産状況

項目金額・状況
年齢70歳
預貯金・金融資産4,500万円
自宅の時価(想定)3,000万円
住宅ローンなし
年金収入月22万円
毎月の生活費月25万円
家族構成夫婦2人

Aさんの場合、預貯金などの金融資産が4,500万円あり、住宅ローンもありません。

一方で、年金収入だけでは毎月の生活費を賄いきれず、月3万円程度の不足が生じています。また、今後は建物の修繕費や医療・介護にかかる費用なども考えておきたいところです。

では、この場合、自宅を売却したほうがよいのでしょうか。

まず考えたいのは、売却後の暮らしです

仮に自宅を3,000万円で売却できたとしても、その金額がそのまま手元に残るわけではありません。

仲介手数料などの売却費用がかかりますし、住み替え先を購入するのであれば、その購入費用や諸費用も必要です。

例えば、売却後に2,000万円程度のマンションを購入するとしたらどうでしょうか。

売却代金から住み替え費用を差し引いた資金が残りますが、その一方で、マンションの管理費や修繕積立金など、新たな住居費も発生します。

戸建てを維持する負担が軽くなる可能性がある反面、毎月の固定費が増える可能性もあります。

また、現在の家に住み続ければ、住み替えに伴う費用や引っ越しの負担を避けられます。長年暮らしてきた地域で、安心して生活を続けられるというメリットもあります。

つまり、Aさんにとって大切なのは、単に3,000万円で売れるかどうかではなく、売った場合と売らなかった場合で、今後の生活がどう変わるのかを比較することです。

Aさんの場合、売却を具体的に検討する余地がありそうです

Aさんは、金融資産をある程度保有しており、住宅ローンもありません。さらに、家の維持管理に負担を感じていて、住み替えという具体的な希望もあります。

そのため、売却して暮らしやすい住まいに移ることは、十分に検討できる選択肢のひとつです。

ただし、必ずしも今すぐ売る必要があるとは限りません。

例えば、希望する住み替え先が見つかっていないのであれば、まずは購入費用や毎月の住居費を調べ、生活設計を立ててから売却を進める方法もあります。

反対に、希望する住み替え先が見つかり、売却後の資金計画にも無理がなければ、元気に動けるうちに住み替えを進めることが、将来の安心につながるかもしれません。

このように、Aさんの場合は、自宅の売却を前向きに検討しながら、資産と生活の両面から具体的な計画を立てていくことが考えられます。

大切なのは、「自宅が3,000万円で売れるから売る」という判断ではなく、「売ることで、これからの暮らしがよりよいものになるか」という視点です。


事例2 70歳・自宅の価値は3,500万円。老後資金が心配なBさん

次は、同じ70歳でも、少し事情の異なるBさんのケースです。

Bさんは長年働き、住宅ローンを完済しました。現在は持ち家で一人暮らしをしています。

年金を受け取りながら生活していますが、物価の上昇や将来の医療・介護費用が気になり始めました。

「自宅を売れば3,000万円以上になるかもしれない。それなら、売却して老後資金に充てたほうが安心なのではないか」

そう考え、相談にいらっしゃいました。

Bさんの資産状況

項目金額・状況
年齢70歳
預貯金・金融資産1,200万円
自宅の時価(想定)3,500万円
住宅ローンなし
年金収入月16万円
毎月の生活費月21万円
家族構成一人暮らし

Bさんの場合、金融資産は1,200万円、自宅の時価は3,500万円と想定しています。

年金収入は月16万円、生活費は月21万円ですから、単純計算では毎月5万円の不足が生じています。

年間では60万円です。仮に同じ収支が続けば、10年間で600万円の取り崩しになります。もちろん、実際には物価や医療費、修繕費などによって変動します。

この状況だけを見ると、自宅を売却して現金を確保したほうがよいようにも思えます。

しかし、ここで少し立ち止まって考えてみたいのです。

自宅を売れば、老後のお金の問題は解決するのでしょうか?

仮にBさんが自宅を3,500万円で売却できたとします。

売却費用などを差し引いた資金を確保できれば、金融資産と合わせて、今後の生活に使えるお金を増やせる可能性があります。

ただし、Bさんは自宅を売却した後、どこで暮らすのでしょうか。

賃貸住宅に住むのであれば、毎月の家賃が発生します。高齢になってからの住み替えでは、物件探しや入居条件、引っ越し費用なども考慮する必要があります。

また、別の住宅を購入する場合には、その購入費用や維持管理費が必要になります。

つまり、自宅を売却することでまとまった資金を確保できても、住まいにかかる費用が増えれば、期待したほど老後資金に余裕が生まれないこともあります。

一方、今の家に住み続ければ、少なくとも新たな家賃負担は避けられます。ただし、固定資産税や修繕費などは引き続き必要です。

Bさんの場合、売却するかどうかを考える前に、まずは毎月の収支を改善する方法がないか、住み続ける場合にどの程度の資金が必要かを確認することが大切です。

Bさんの場合、今すぐ売らないという選択肢もあります

Bさんが現在の家で不自由なく生活できており、建物の状態にも大きな問題がないのであれば、慌てて売却する必要はないかもしれません。

例えば、毎月の生活費を見直したり、将来必要になる修繕費を確認したりしながら、金融資産がどの程度の期間、生活を支えられるかを試算します。

そのうえで、将来の住み替えに備えて、自宅の価値を把握しておく方法もあります。

ただし、今の家が広すぎて管理が難しくなっている場合や、階段の上り下りが負担になっている場合には、早めに住み替えを検討したほうがよいこともあります。

また、建物の老朽化が進んでいる場合には、今後の修繕費と売却のタイミングを比較することも重要です。

「今は売らない」という判断も、「将来もずっと売らない」という意味ではありません。

今すぐ売却する必要があるのか、数年後に売却するのか、それとも住み続けるのか。複数の選択肢を比較しながら、ご自身に合った方法を考えていけばよいのです。

Bさんの場合は、売却によって得られる資金だけでなく、売却後の住居費や生活の変化まで具体的に検討したうえで、判断することが大切だと考えます。


■ 2つの事例からわかること。不動産の価値だけでは判断できません

今回の2つの事例では、どちらも70歳で、住宅ローンのない自宅を所有しています。

しかし、Aさんは住み替えを具体的に考えており、金融資産にも一定の余裕があります。一方、Bさんは老後資金への不安を感じていますが、売却後の住居費によっては、かえって生活が苦しくなる可能性もあります。

このように、同じような年齢で、売却できる金額がわかっていたとしても、最適な選択は人によって異なります。

自宅の時価が3,000万円だから売ったほうがよい、金融資産が1,000万円しかないから売ったほうがよい、と単純に判断することはできません。

不動産の売却を考える際には、少なくとも次のような点を整理しておきたいところです。

  • 現在の預貯金や金融資産はいくらあるのか
  • 年金収入と毎月の生活費はどの程度なのか
  • 住宅ローンやその他の借入れは残っているのか
  • 今後、修繕費や医療・介護費用がどの程度必要になりそうか
  • 売却した後は、どこで、どのように暮らすのか
  • 家族への相続や資産の引継ぎについて、どのように考えているのか

これらを整理することで、今売却したほうがよいのか、将来に備えて価値を把握しておけばよいのか、それとも当面は保有するのがよいのか、判断するための材料が見えてきます。

もちろん、将来のことを完全に予測することはできません。だからこそ、ひとつの選択肢に決めつけず、いくつかの可能性を比較しておくことが大切なのです。

■ まずは、ご自宅の価値を知ることから始めてみませんか?

では、自宅の売却を考え始めたとき、何から始めればよいのでしょうか。

ひとつの方法は、現在の不動産価値を把握しておくことです。

ただし、不動産の価値を知る目的も、お客様によって異なります。

「今すぐ売却したいので、売却価格の目安を知りたい」

「将来の住み替えに備えて、今の自宅の価値を知っておきたい」

「老後の生活設計を考えるために、自宅を含めた資産状況を整理したい」

「相続も視野に入れて、所有している不動産の価値を確認しておきたい」

このような目的に応じて、必要な調査や検討の内容も変わってきます。

売却を具体的に検討されている方には、売却価格の目安や売却にかかる費用、売却後の資金計画などを整理することが役立つでしょう。

一方、すぐに売却する予定がない方には、現在の不動産価値を把握し、将来の選択肢を考えるための材料を用意しておくことが役立つ場合があります。

弊社では、ご相談の目的を伺ったうえで、必要に応じて不動産鑑定評価をご提案しています。

不動産鑑定評価では、土地や建物の状況、立地、周辺の取引事例、市場動向などを分析し、不動産の経済価値を判断します。

正式な不動産鑑定評価書の作成は有料となりますが、評価の目的や必要な内容、費用については事前にご説明いたします。

大切なのは、最初から鑑定評価書を作成することを前提にするのではなく、まずは何を知りたいのか、どのような判断をしたいのかを明確にすることです。

■ 私たちは、売却をおすすめするためだけの不動産会社ではありません

私たちが目指しているのは、不動産の価格をお伝えして終わることでも、売却を成立させることだけでもありません。

お客様が所有する不動産を、これからの人生の中でどのように位置づけ、どう活用していくのがよいのか。

そのことを、お客様と一緒に考える不動産コンサルタントでありたいと考えています。

不動産は、大切な資産です。同時に、日々の暮らしを支える生活の基盤でもあります。

だからこそ、不動産の価値だけでなく、金融資産や収支、将来の生活設計なども含めて考えることが重要です。

ご相談の結果、今は売却せずに住み続けることがよいという結論になるかもしれません。将来のために不動産の価値を把握しておくだけで、十分な場合もあるでしょう。

もちろん、売却を進めることが、お客様にとってよりよい選択となる場合には、その実現に向けてお手伝いいたします。

売ることが目的なのではなく、お客様にとってよりよい選択を見つけること。それが、私たちの大切にしている姿勢です。

■ まだ売ると決めていなくても、お気軽にご相談ください

「自宅を売ったら、いくらくらいになるのだろう?」

「老後の生活資金は、このままで大丈夫だろうか?」

「今の家に住み続けるのと、住み替えるのでは、どちらがよいのだろう?」

そんな疑問をお持ちでしたら、まずはお気軽にご相談ください。

不動産のこと、お金のこと、将来の暮らしのこと。ひとつずつ整理していくことで、今まで見えていなかった選択肢が見つかることもあります。

不動産鑑定士としての専門知識を生かしながら、不動産と金融の両面から、お客様の状況に合った考え方をご一緒に探していきます。

売却を急ぐ必要はありません。まだ考えがまとまっていなくても大丈夫です。

大切なご自宅だからこそ、売るかどうかを決める前に、一度じっくり考えてみませんか。

あおぎり不動産鑑定は、お客様のこれからの暮らしを見据えた、不動産の相談相手でありたいと考えています。

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