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アパート経営の付加価値を考える

コラム
アパート経営の付加価値を考える

「全部入れる」より、「選ばれる理由」を一つずつ増やす

アパートの空室対策というと、最新設備を次々と導入することを考えがちです。しかし、投資用不動産では、設備を増やせば増やすほど収益性が高まるわけではありません。

大切なのは、現在の物件の弱点と、入居者が実際に評価するポイントを見極め、費用対効果の高いところから手を入れることです。

私自身も、所有物件についてインターネット無料設備への切替えを検討・実施したことがあります。その際に感じたのは、設備そのものの魅力だけでなく、月額費用、契約期間、解約条件、保守体制などまで含めて比較する必要があるということです。

人気設備を見ると、まず「インターネット」と「エアコン」

全国賃貸住宅新聞が2023年9月5日から19日にかけて全国の不動産会社を対象に実施した調査では、512社から回答がありました。

「周辺相場より家賃が高くても入居が決まりやすい付加価値設備」では、インターネット無料が単身者向け・ファミリー向けともに1位でした。単身者向けでは、オートロック、高速インターネット、宅配ボックス、浴室換気乾燥機が続き、ファミリー向けでは、オートロック、追い焚き機能、システムキッチン、宅配ボックスなどが上位となっています。ゼンチン

さらに2025年になると、単身者向けの1位は**「高速インターネット(1Gbps以上)無料」**となり、ファミリー向けでも2位に入っています。単なる「無料」だけでなく、通信速度を含めた品質まで評価されるようになってきています。ゼンチン


「2023年・入居者に人気の設備ランキング」
単身者向けとファミリー向けを左右2列にして掲載。
脚注:※2023年9月5~19日、全国の不動産会社を対象に調査、512社回答。

また、エアコンについては、2025年の「必須設備」ランキングで単身者向け・ファミリー向けとも1位となっています。近年の猛暑を考えると、以前は「付いていると有利」だった設備が、現在では「付いていないと不利」な設備へ変わりつつあると考えた方がよさそうです。ゼンチン

宅配ボックスは「置き配があるから不要」なのか

宅配ボックスについては、置き配が普及したことで、以前ほど圧倒的な差別化設備ではないのではないか、と考える方もいるでしょう。

ただ、2025年の調査では「今後需要が高まると考えられる設備」の1位に宅配ボックスが挙げられています。したがって、置き配の普及だけを理由に、付加価値が小さくなったと判断するのは早そうです。ゼンチン

オートロック付きマンション、共用廊下への置き配が難しい物件、防犯を重視する単身者向け物件などでは、今でも導入効果が期待できます。

結局のところ、ランキングそのものよりも、「自分の物件では誰に効く設備なのか」を見ることが重要です。

インターネット無料は、比較的わかりやすい付加価値

インターネット無料のメリットは、入居者にとって非常に分かりやすいところにあります。

自分で回線やプロバイダーを契約する必要がなく、入居後すぐに使える物件であれば、手間も通信費も減らせます。

集合住宅向けの代表的なサービスとしては、NTT東日本「フレッツ光 全戸加入プラン」、J:COM「In My Room」、**イーブロードコミュニケーションズ「e-Broad光マンション」**などがあります。

NTT東日本では、オーナーや管理会社が全部屋を一括契約することで特別な料金体系を利用する仕組みを提供しています。なお、初期費用やプロバイダー料金などが別途必要になる場合があります。法人のお客さま|NTT東日本

J:COMの「In My Room」は、オーナーが費用を負担している導入物件で、入居者がインターネットやCATV等を無料または特別料金で利用できる仕組みです。J:COM

e-Broadも、アパート・マンションオーナーと契約し、全戸一括で光インターネット設備を導入するサービスを展開しています。e-Broad


「入居者が各自で契約」→「オーナーが一棟一括契約」の簡単な模式図。
専門的な通信設備図ではなく、建物+Wi-Fi+各部屋程度で十分です。

1戸1,000円台で導入できることもある?

ここは少し注意が必要です。

全国賃貸住宅新聞の2025年の記事では、無料高速インターネットについて、安価なサービスでは月額1戸当たり1,000円程度のものもあるという不動産会社のコメントが紹介されています。導入費用を家賃へ転嫁しても入居者を獲得できるケースがあるとのことです。ゼンチン

ただし、

「NTTなら1,000円」「J:COMなら1,500円」

という意味ではありません。

料金は、戸数、既存配線、地域、回線方式、通信速度、工事内容、契約年数などで大きく変わります。

そのため、例えば10戸のアパートなら、

「10戸一括で契約した場合の1戸当たり総額はいくらですか」

と複数社に聞いてみるのがよいでしょう。

さらに、単純な月額料金だけでなく、初期工事費、空室中の料金、Wi-Fi機器、故障時の対応、契約年数などを同じ条件で比較すると判断しやすくなります。

CATV・一括インターネット契約では「出口」も確認

私が特に気を付けたいと思うのは、契約期間です。

CATVや集合住宅向けインターネットでは、サービスや契約内容によって、長期契約、最低利用期間、途中解約時の費用、撤去・原状回復などの条件が設定される場合があります。

月額1,500円だから安いと思って契約しても、長期間解約できなかったり、設備を入れ替える際に撤去費用がかかったりすると、結果的には使い勝手が悪くなる可能性があります。

ですから、一括契約を検討するときは、月額費用だけでなく「契約をやめるときにどうなるか」まで確認することをおすすめします。

見積りを取る際には、「戸数別の料金」「初期工事費」「空室住戸の扱い」「通信速度」「サポート内容」「契約期間」「途中解約」「撤去費」「将来の増速対応」あたりを同じ条件で聞くと比較しやすくなります。

古いアパートこそ「全部交換」ではなく、弱点を一つずつ直す

築年数が経ったアパートでは、最新設備を全部入れようとすると、多額の費用がかかります。

しかし、必ずしも全面リフォームが必要とは限りません。

今ある設備を利用しながら、入居者から見た弱点を一つずつ改善していく方法もあります。

押入れを「ウォークインクローゼット風」に

例えば、古いアパートによくある押入れ。

壁を壊して、本当のウォークインクローゼットを造れば費用は高くなります。

そこで、既存の押入れを利用して、

襖を外す、内部を明るく塗装する、床にクッションフロア(CF)を張る、ハンガーパイプを付ける、枕棚や可動棚を設ける、といった方法があります。

構造上必要な柱は残しながら、「中に入って使える収納」風に見せるだけでも、古い押入れの印象はかなり変わります。

全面改装に比べれば費用を抑えやすく、「収納が少ない」という古い間取りの弱点を補うことができます。

もちろん、柱や壁が構造上必要かどうか、湿気や結露がないか、棚の耐荷重などは事前に確認する必要があります。

各部屋のエアコンも検討したい

築古アパートでは、

「LDKにはエアコンが付いているが、もう一部屋にはない」

というケースも多くあります。

しかし近年の暑さを考えると、ファミリー物件などでは、各居室にエアコンがあること自体が物件選びの条件になる可能性があります。


注意したいのは、エアコンを取り付ければ終わりではないことです。

分電盤の容量、専用回路の有無、室外機の設置場所、ドレン排水、将来の交換費なども確認しておく必要があります。

「ゴミを出しやすい」も立派な付加価値

24時間利用可能なごみ置き場も、人気設備ランキングに入っています。

特に共働き世帯や勤務時間が不規則な単身者にとって、

「決められた曜日の朝しか出せない」

というのは意外に大きな負担になります。

大規模なゴミ庫を新設しなくても、既存のごみ置き場をきれいにする、蓋付き容器にする、照明を付ける、掲示を分かりやすくするといった工夫でも印象は変わります。

同じように、郵便受け、共用廊下、自転車置き場、掲示板、防犯灯なども、入居者が毎日見る場所です。

数百万円の設備を一つ入れるより、雑然とした共用部をきれいに整える方が効果的な物件もあります。

設備投資は「家賃をいくら上げられるか」だけではない

例えば10戸のアパートで、インターネット設備のオーナー負担が1戸月1,500円なら、

1,500円 × 10戸 × 12か月 = 年間18万円

です。

この18万円を家賃だけで回収しようとすると、

「1戸当たり1,500円家賃を上げられるか」

という話になります。

しかし実際には、設備投資の効果はそれだけではありません。

問い合わせが増える、空室期間が短くなる、更新率が上がる、入居者からのクレームが減る、将来売却するときの印象が良くなる、といった効果もあります。

逆に、周辺家賃が低く、入居者が設備差をあまり評価しない地域なら、100万円をかけても回収できない場合があります。

ですから、

「人気設備だから付ける」

ではなく、

「この物件の弱点は何か。その弱点をいくらで改善できるか」

という順番で考えることが大切です。

投資用不動産の維持管理・設備更新もご相談ください

株式会社あおぎり不動産鑑定では、不動産鑑定評価だけでなく、投資用不動産について、設備更新や維持管理、収益改善、将来の売却を見据えたご相談にも対応しています。

「インターネット無料にした方がよいか」

「エアコンを全室に付ける価値があるか」

「築古物件の収納をどう改善するか」

「どこまでリフォームすれば十分か」

といったことも、立地、築年数、現在の賃料、周辺競合物件、将来の売却可能性などを踏まえて検討することができます。

全部を新しくするのではなく、今ある物件の良さを残しながら、選ばれる理由を一つ増やす。

これも、長く安定した賃貸経営を考える一つの方法ではないでしょうか。

株式会社あおぎり不動産鑑定

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