住宅地は▲0.7%。商業地+0.8%、工業地+1.5%へ―高山市中心部の商業地上昇が鮮明に
令和8年9月公表資料をもとに解説
1 まずは全体像―住宅地は下落が続く一方、商業地・工業地は上昇
令和8年度岐阜県地価調査が公表されました。
地価調査は、都道府県が毎年7月1日時点の基準地について正常な価格を判定・公表する制度です。国が毎年1月1日時点で実施する地価公示とともに、一般の土地取引や不動産鑑定評価における重要な価格指標となっています。
令和8年の岐阜県では、住宅地248地点、商業地84地点、工業地25地点の計357地点について調査が行われています。このほか林地についても8地点が設定されています。
県全体の平均変動率は、
| 用途 | 令和8年平均変動率 |
|---|---|
| 住宅地 | ▲0.7% |
| 商業地 | +0.8% |
| 工業地 | +1.5% |
| 全用途 | ▲0.2% |
となりました。県全体ではなおわずかな下落ですが、その内訳を見ると、住宅地と事業用地では動きが大きく異なっています。
住宅地は前年の▲0.8%から▲0.7%へと下落幅が縮小しました。一方、商業地は前年+0.7%から+0.8%へ、工業地は+1.1%から+1.5%へと上昇幅を拡大しています。

したがって、今回の岐阜県地価調査は、単純に「岐阜県の地価は▲0.2%下落した」と見るよりも、住宅地の緩やかな下落と、商業・工業系土地の上昇が同時に進んでいると捉える方が実態に近いでしょう。
2 住宅地―県平均は▲0.7%だが、上昇地域もみられる
住宅地の県平均は**33,300円/㎡、前年比▲0.7%**でした。 514531
もっとも、市町村別にみると全地域が下落しているわけではありません。
特に、
- 瑞穂市 +1.2%
- 北方町 +1.3%
- 白川村 +1.0%
- 大垣市 +0.1%
- 富加町 +0.3%
などでは住宅地平均が上昇しています。 514531 514531 514531
一方、岐阜市は▲0.4%、高山市は▲1.2%、関市は▲1.4%、恵那市は▲1.7%、山県市は▲1.8%などとなっています。 514531 514531
つまり、住宅地については「岐阜県全体が一様に下落している」のではなく、交通利便性や宅地需要の強い都市近郊部と、人口減少等の影響を受けやすい郊外・山間部との差が拡大していると考える必要があります。
3 住宅地の上昇率トップは多治見市・音羽町
個別地点を見ると、住宅地で最も上昇率が大きかったのは、
多治見(県)-11 多治見市音羽町1丁目16番4
で、
95,100円/㎡ → 98,700円/㎡、+3.8%
となりました。
これに、
瑞穂(県)-5 瑞穂市別府
54,400円/㎡ → 55,800円/㎡、+2.6%
岐阜(県)-18 岐阜市今嶺2丁目
120,000円/㎡ → 123,000円/㎡、+2.5%
大垣(県)-16 大垣市東町2丁目
55,200円/㎡ → 56,500円/㎡、+2.4%
などが続きます。
瑞穂市では住宅地平均自体も+1.2%で、穂積地区など岐阜都市圏に近い住宅地の底堅さが数字に表れています。瑞穂市の住宅地平均価格は53,500円/㎡となっています。 514531
ここでも重要なのは、市町村平均と個別地点の変動率は分けて考えることです。同じ市内でも駅距離、住宅地としての熟成度、街路条件、周辺の宅地供給などによって地価の動きは異なります。
4 高山市の商業地―+14.8%、+14.0%、+11.3%と大幅上昇
今回の岐阜県地価調査で特に目を引くのが、高山市中心部の商業地です。
上昇率上位には、
高山(県)5-1 本町1丁目45番
203,000円/㎡ → 233,000円/㎡、+14.8%
高山(県)5-4 上三之町51番
493,000円/㎡ → 562,000円/㎡、+14.0%
高山(県)5-2 昭和町1丁目321番
231,000円/㎡ → 257,000円/㎡、+11.3%
が並びます。
市全体でも、高山市の商業地平均変動率は**+5.8%**、平均価格は170,800円/㎡となり、県内市町村の中でも際立った上昇を示しています。
特に上三之町は、高山の歴史的市街地・観光地を代表するエリアです。また、本町も中心商業地です。
添付資料自体には価格上昇の要因について詳細な解説までは記載されていませんが、これらの地点が一般的な郊外型商業地とは異なり、観光客を主な需要の背景に持つ中心商業地域である点には注意が必要です。
したがって「高山市の土地が一律に10%以上上昇した」と理解するのは適切ではありません。


実際、高山市の住宅地平均は▲1.2%です。
観光商業地では二桁上昇する地点がある一方、一般住宅地では下落が続いている。
この二極化こそが、高山市の地価を見るうえで重要なポイントです。
5 岐阜市中心部も上昇―玉宮町+3.1%、神田町+2.3%
県都・岐阜市の商業地にも上昇地点がみられます。
例えば、
岐阜(県)5-23 玉宮町2丁目
254,000円/㎡ → 262,000円/㎡、+3.1%
岐阜(県)5-9 長住町1丁目
167,000円/㎡ → 171,000円/㎡、+2.4%
岐阜(県)5-11 神田町7丁目
307,000円/㎡ → 314,000円/㎡、+2.3%
岐阜(県)5-2 加納栄町通3丁目
197,000円/㎡ → 201,000円/㎡、+2.0%
などとなっています。加納栄町通、長住町、神田町などでも上昇が確認できます。 514598
一方で、
柳ケ瀬通1丁目 ▲1.2%
徹明通2丁目 ▲1.9%
など下落地点も存在しています。 514598
つまり「岐阜市中心部だから上昇する」という単純な状況ではありません。
駅への接近性、人流、店舗・飲食需要、再開発、建物利用のしやすさなどによって、中心市街地の中でも地点ごとの差が出ていると見る必要があります。
6 県内商業地の最高価格―岐阜駅周辺は70万円/㎡台へ
岐阜市では、吉野町5丁目の基準地が、
701,000円/㎡ → 710,000円/㎡、+1.3%
となっています。
岐阜駅北口に近い県内でも最も価格水準の高い商業地域の一つです。
ここで、高山の上三之町と比較すると面白い特徴がみえます。
吉野町5丁目は**710,000円/㎡と絶対的な価格水準では高いものの、年間上昇率は+1.3%。一方、上三之町は562,000円/㎡**ですが、上昇率は+14.0%です。
つまり、
「現在の価格が高い場所」と「現在急速に価格が上がっている場所」は必ずしも同じではありません。
地価を分析するときには、価格水準と変動率を分けて見ることが重要です。
7 大垣市も商業地が強い―駅周辺を中心に上昇
大垣市も今回比較的強い動きとなりました。
市全体では、
- 住宅地 +0.1%
- 商業地 +2.3%
- 工業地 +2.1%
- 全用途 +0.9%
です。 514531
商業地では、
高屋町3丁目 127,000円/㎡ → 135,000円/㎡、+6.3%
林町5丁目 127,000円/㎡ → 133,000円/㎡、+4.7%
郭町3丁目 104,000円/㎡ → 108,000円/㎡、+3.8%
などの上昇がみられました。
特に高屋町・林町は大垣駅に近い地域であり、商業地であっても、単純な「店舗の売上」だけではなく、駅への接近性や土地利用の多様性などを含めて価格形成を考える必要があります。
8 工業地は+1.5%―住宅地とは異なる市場が動いている
工業地の県平均は**+1.5%**となり、前年の+1.1%からさらに上昇幅を拡大しました。 514532
これは今回の岐阜県地価調査のもう一つの大きな特徴です。
主な上昇地点を見ると、
本巣(県)9-2 +4.4%
本巣(県)9-1 +4.1%
可児(県)9-2 +2.4%
関(県)9-1 +2.3%
神戸(県)9-1 +2.2%
大垣(県)9-1 +2.1%
などとなっています。
市町村平均でも、本巣市の工業地は+4.3%、関市+2.3%、神戸町+2.2%、大垣市+2.1%、可児市+2.0%などとなっています。
工業地は、住宅地とは価格形成要因が大きく異なります。

ICや幹線道路へのアクセス、大型車両の進入可能性、画地規模、造成状態、工業団地としての集積、上下水道・電力等のインフラなどが重要になります。
そのため、「周辺の住宅地が下落しているから工業地も下がる」とは限りません。
今回の結果も、住宅地▲0.7%に対して工業地+1.5%という明確な違いを示しています。
9 長期推移―住宅地は下落継続、商業地・工業地はプラスが定着
長期推移を見ると、岐阜県の住宅地は平成5年以降、長期間にわたって下落が続いています。
ただし、
令和2年 ▲2.0%
令和3年 ▲1.6%
令和4年 ▲1.2%
令和5年 ▲0.9%
令和6年 ▲0.8%
令和7年 ▲0.8%
令和8年 ▲0.7%
と、近年は下落幅が縮小しています。 514532
これに対し商業地は、
令和5年 0.0%
令和6年 +0.6%
令和7年 +0.7%
令和8年 +0.8%
工業地は、
令和4年 +0.1%
令和5年 +0.6%
令和6年 +0.7%
令和7年 +1.1%
令和8年 +1.5%
となっています。

岐阜県では、住宅地はまだ下落局面から完全には抜けていない一方、商業地・工業地では上昇基調がかなり明確になってきたといえます。
10 地価公示から半年間でどのくらい動いたか
地価調査には、1月1日時点の地価公示と同じ地点を評価する「共通地点」が設定されています。
令和8年地価公示では、岐阜県内に地価調査との共通地点が27地点設定されています。 490358
この共通地点を比較すると、1月1日から7月1日までの半年間の地価変化を確認できます。
特に高山市上三之町は、
令和8年1月1日 531,000円/㎡
↓
令和8年7月1日 562,000円/㎡
となっており、半年間だけで約**+5.8%**上昇しました。
年間変動率+14.0%だけでも大きな数字ですが、地価公示と地価調査をつなげてみると、令和8年前半も上昇が継続していたことが分かります。
同様に、年間変動率だけでなく共通地点を時系列で追うことで、「昨年から上がったか」だけではなく、直近半年間の市場の勢いが強まっているのか、弱まっているのかを見ることができます。

11 一方で、住宅地では下落率3%を超える地点も
上昇地点ばかりを見ると岐阜県全体が上昇局面にあるように感じますが、住宅地には依然として下落の大きな地点があります。
主なものでは、
岐阜市大洞桜台6丁目 23,800円/㎡・▲3.6%
高山市荘川町新渕 4,730円/㎡・▲3.5%
岐阜市三田洞東3丁目 25,600円/㎡・▲3.4%
高山市上宝町本郷 5,230円/㎡・▲3.3%
などです。
岐阜市だけを見ても、茜部菱野4丁目は+1.8%、今嶺2丁目は+2.5%である一方、大洞桜台は▲3.6%です。
つまり「岐阜市だから」「高山市だから」と市町村単位だけで地価を判断することはできません。
同一市内でも、中心部か郊外か、駅に近いか、住宅需要があるか、既成住宅団地か、新規宅地供給があるかといった条件によって市場は大きく異なります。
12 林地は▲1.8%―宅地とは別の市場として見る必要があります
岐阜県では林地についても地価調査が行われています。
令和8年の林地平均変動率は**▲1.8%**で、前年の▲2.0%から下落幅が縮小しました。 514532
林地の基準地は、本巣市、恵那市、郡上市、高山市、美濃加茂市、土岐市、下呂市、関ケ原町の8地点です。
添付資料を見ると、林地では、樹種だけでなく、標高、傾斜、搬出方法、林道までの距離、最寄集落・駅への距離などが詳細に整理されています。例えば、傾斜15度程度から30~35度程度まで地点によって条件に大きな差があります。 514528
したがって林地の場合、「10アール当たりいくら」という価格だけを比較しても十分ではありません。
林木の状態、傾斜、林道への接近性、搬出可能性、都市近郊林地か林業本場林地かなどによって市場性は大きく変わります。
13 「基準地価格=所有している土地の価格」ではありません
地価調査で公表される基準地価格は、その地点について不動産鑑定評価を行って求められた正常価格です。
したがって、近くに基準地があるからといって、
「基準地が5万円/㎡だから、自分の土地も5万円/㎡」
とは限りません。
住宅地であれば、
地積、間口、奥行、形状、道路幅員、方位、駅距離、用途地域、上下水道、造成状態、災害リスクなどによって価格は異なります。
商業地では、さらに人通り、店舗集積、駅距離、容積率、建物利用の可能性などが重要です。
工業地では、画地規模、大型車の動線、IC・幹線道路への距離、造成費、インフラ容量などが大きな価格形成要因になります。
今回、高山市で+14%を超える地点がある一方、同じ高山市の住宅地平均は▲1.2%であることは、まさにその違いを示しています。
市町村名だけではなく、「誰がその土地を買うのか」「何に利用できるのか」まで見なければ、現在の市場価値は捉えられません。

14 まとめ―「岐阜県平均▲0.2%」だけでは見えない地価の二極化
令和8年度岐阜県地価調査では、
住宅地 ▲0.7%
商業地 +0.8%
工業地 +1.5%
全用途 ▲0.2%
となりました。 514531
県平均だけを見ると「ほぼ横ばいに近い緩やかな下落」です。
しかし、中身を見ると様相は大きく異なります。
住宅地では依然として下落地点が多い一方、瑞穂市など都市近郊部には上昇地点があります。
商業地では、高山市本町1丁目の+14.8%、上三之町の+14.0%、昭和町1丁目の+11.3%が目立ちます。一方、高山市全体の住宅地は▲1.2%です。
また、岐阜市や大垣市でも駅周辺・中心商業地には上昇地点がみられ、工業地については県平均で+1.5%まで上昇幅が拡大しました。
今回の結果から見えるのは、「岐阜県の地価が上がったか、下がったか」という単純な構図ではありません。
住宅需要、駅周辺の利便性、観光商業需要、物流・工業需要など、地域ごと、用途ごと、さらには同じ市内でも地点ごとに異なる需要が価格を動かしているということです。
地価公示や地価調査は、不動産価格を考えるうえで非常に重要な資料です。しかし、公示価格や基準地価格をそのまま所有不動産の価格とすることはできません。
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